小児アレルギー性鼻炎の成人への移行を阻止するための治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200500745A
報告書区分
総括
研究課題名
小児アレルギー性鼻炎の成人への移行を阻止するための治療法の確立に関する研究
課題番号
H16-免疫-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 美孝(千葉大学 大学院医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学)
研究分担者(所属機関)
  • 花澤 豊行(千葉大学 大学院医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学)
  • 堀口 茂俊(千葉大学 大学院医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学)
  • 河野 陽一(千葉大学 大学院医学研究院 小児病態学)
  • 増山 敬祐(山梨大学 大学院医学工学総合研究部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)
  • 大久保 公裕(日本医科大学 医学部 耳鼻咽喉科学)
  • 石川 和夫(秋田大学 医学部 感覚器学講座耳鼻咽喉科学)
  • 中山 俊憲(千葉大学 大学院医学研究院 免疫発生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
増加する小児アレルギー性鼻炎の成人への移行を阻止する治療法の確立
研究方法
小児アレルギー性鼻炎の現状ならびに長期経過に関する疫学調査,喘息など他の小児アレルギー疾患との相互関連の耳鼻科・小児科の合同調査,小児期に罹患頻度が高い上気道感染や小児期に活発に増殖する扁桃のアレルギー性鼻炎に及ぼす影響のretrospective な検討,一旦形成されたTh2細胞のメモリー機能の維持機構の解明,小児への負担が少ない舌下減感作療法,プロバイオテクスを用いた治療の有効性,安全性,その作用機序を明らかにするための臨床試験の実施
結果と考察
1) 2005年6月に学童を対象としたアレルギー性鼻炎の検診を行ったところ、各種アレルゲンに対して高い感作率がみられ、特にスギ花粉に対して高く、首都圏の学童の感作率は約60%に達し、発症率も40%を越えていた。2)1970?1995年に小児アレルギー性鼻炎で治療を受けた患者の本年度の再受診調査から、自然寛解はみられず自然改善も少なかった。一方、減感作療法を受けた小児の改善効果は長期に持続していた。皮内テスト,血清抗原特異的IgE値の改善,減少は少なく、臨床症状の推移とに関連は認めなかった。3)小児喘息のみならず、喘息を合併していないアトピー性皮膚炎,食物アレルギーの患児でもアレルギー性鼻炎の合併は高く、乳幼児期での発症が少なくない。4)扁桃摘出を受けたアレルギー性鼻炎患児では、鼻症状の改善が30?40%程度にみられ、5年以上その効果の持続がみられた。5)加齢マウスを用いた検討から、高齢ではT細胞のERK/MAPK系のシグナル伝達が選択的に抑制を受けること,Th2細胞の分化のみが選択的に障害されていることが明らかであった。6)小児アレルギー性鼻炎に対して、早期に実施対応が可能な治療法として舌下減感作療法、ならびに乳酸菌を代表とするプロバイオテクスがあるが、いずれも小児に対して高い安全性が期待される。有効性,作用機序,バイオマーカーを明らかにするための臨床試験が進んでいる。
結論
各種アレルゲンに対する小児の感作,発症の増加がみられ、特に首都圏ではスギ花粉に対して著しい花粉数の増加に加え、小児の体質変化の関与が大きく、他のアレルギー疾患との総合的な取り組みが必要である。舌下減感作療法の有効性,安全性が期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
-