文献情報
文献番号
200500744A
報告書区分
総括
研究課題名
上気道及び下気道アレルギーの臓器過敏性における臓器特異的免疫基盤の解明と早期治療法の開発
課題番号
H16-免疫-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 逸夫(国保旭中央病院アレルギー・リウマチセンター)
研究分担者(所属機関)
- 福田 健(獨協医科大学)
- 岡本 美孝(千葉大学大学院医学研究院)
- 田村 弦(東北大学医学部)
- 谷口 正実(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,074,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班は、気管支喘息の気道過敏性の発症機構の解明と早期診断法の開発を主な目的とした。
研究方法
この目的達成のため、
1)気管支喘息の気道過敏性におけるアレルギー性気道炎症の役割、
2)アスピリン喘息の気道過敏性、アスピリン感受性に及ぼす上気道アレルギーの影響、
3)上気道アレルギーの下気道過敏性への影響、
4)3次元CTによる気道病理形態学的評価法の開発と気道リモデリングによる過敏性発症機構、
5)アレルギー性気道炎症の制御機構
を解析した。
1)気管支喘息の気道過敏性におけるアレルギー性気道炎症の役割、
2)アスピリン喘息の気道過敏性、アスピリン感受性に及ぼす上気道アレルギーの影響、
3)上気道アレルギーの下気道過敏性への影響、
4)3次元CTによる気道病理形態学的評価法の開発と気道リモデリングによる過敏性発症機構、
5)アレルギー性気道炎症の制御機構
を解析した。
結果と考察
1)気管支喘息の早期病態と考えられる咳喘息(CVA)では、ロイコトリエン拮抗薬は呼気NO濃度を低下させず、吸入ステロイドにより呼気NO濃度が低下した。CVAの気道過敏性の発症にはアレルギー性気道炎症が深く関与し、呼気NO濃度の測定は早期診断と治療法選択にきわめて有用である。
2)アスピリン喘息の気道過敏性、アスピリン感受性には、鼻茸好酸球性副鼻腔炎(NPES)によるCys-LTs過剰産生が大きく関与していることを明らかにした。さらにNPES手術後に、多くの症例でアスピリン感受性が改善し、気道過敏性と喘息症状が改善することから、上気道におけるCys-LTs過剰産生が下気道過敏性に影響していることが示された。
3)上気道の粘膜リンパ組織である扁桃は、アレルゲン特異的Th2細胞の活性化に重要で、扁桃摘出後に喘息症状が改善し、気管支喘息の下気道過敏性の発症にも重要な役割を演じていると考えられる。
4)気道リモデリングによる過敏性発症機構を明らかにするため、3次元CT装置を用い、ヒトの同一気道を連続的かつ自動的に評価する方法を確立した。これにより、肺局所における気道系の形態や機能、とくに末梢気道の力学的状態を解析する技術の開発に繋がると考える。
5)IL-25はアレルギー性気道炎症の局所で産生され、その発現はTh2細胞依存的にアレルギー性気道炎症を増強していることが明らかにされた。これらの結果は、IL-25シグナルの制御によるアレルギー性気道疾患治療の可能性を示唆する。
2)アスピリン喘息の気道過敏性、アスピリン感受性には、鼻茸好酸球性副鼻腔炎(NPES)によるCys-LTs過剰産生が大きく関与していることを明らかにした。さらにNPES手術後に、多くの症例でアスピリン感受性が改善し、気道過敏性と喘息症状が改善することから、上気道におけるCys-LTs過剰産生が下気道過敏性に影響していることが示された。
3)上気道の粘膜リンパ組織である扁桃は、アレルゲン特異的Th2細胞の活性化に重要で、扁桃摘出後に喘息症状が改善し、気管支喘息の下気道過敏性の発症にも重要な役割を演じていると考えられる。
4)気道リモデリングによる過敏性発症機構を明らかにするため、3次元CT装置を用い、ヒトの同一気道を連続的かつ自動的に評価する方法を確立した。これにより、肺局所における気道系の形態や機能、とくに末梢気道の力学的状態を解析する技術の開発に繋がると考える。
5)IL-25はアレルギー性気道炎症の局所で産生され、その発現はTh2細胞依存的にアレルギー性気道炎症を増強していることが明らかにされた。これらの結果は、IL-25シグナルの制御によるアレルギー性気道疾患治療の可能性を示唆する。
結論
これらの成果から、気管支喘息のアレルギー性気道炎症及び気道リモデリンを感度良く、早期に検出することが可能となり、気道過敏性の早期診断に有用である。さらに、それらアレルギー性気道炎症及び気道リモデリングの発症維持に関与する分子群、細胞群をターゲットとする新しい治療薬開発の可能性が示唆される。
公開日・更新日
公開日
2006-07-20
更新日
-