変形性関節症の治療・予防の標的分子の同定とその臨床応用

文献情報

文献番号
200500734A
報告書区分
総括
研究課題名
変形性関節症の治療・予防の標的分子の同定とその臨床応用
課題番号
H17-免疫-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中村 耕三(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
研究分担者(所属機関)
  • 守屋 秀繁(千葉大学医学部 整形外科)
  • 越智 光夫(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 運動器機能再生)
  • 山田 治基(藤田保健衛生大学 整形外科)
  • 片岡 一則(東京大学大学院工学系研究科・医学系研究科併任)
  • 川口 浩(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科 )
  • 福井 尚志(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター 病態総合研究部)
  • 吉村 典子(東京大学大学院医学系研究科 関節疾患総合研究講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
変形性関節症(OA)に対する系統的・包括的な研究は皆無に近いのが現状である。我々は、OAの細胞・分子レベルでのメカニズムの解明と、画期的な治療・予防法の開発を目指して、その系統的・統合的研究体制(OASIS プロジェクト)を樹立し、本年度から本研究費補助金事業を軸として活動を開始した。
研究方法
まず、他の疾患に比べて明らかに遅れている「大規模OA臨床統合データベースの確立」を行。同時に、マウスゲノミクスおよびヒトOA手術標本での解析を駆使して、治療・予防の「標的分子の解明」を目指す。また、OA病変部に遺伝子導入するためのベクターとしてのナノミセル人工ウイルスの開発、上記標的分子関連シグナルの軟骨再生医療の応用を進めることによって、画期的な「治療・予防法の開発」を行う。更にその診断が従来単純X線だけに依存した曖昧なものであったことを鑑みて、OAの正確な「診断法の開発」を目指す。
結果と考察
東大内に開設された臨床研究の拠点である「22世紀医療センター」内に2つの臨床研究講座が開設され、OAゲノム疫学研究の拠点が出来上がった。既に世界でも有数の規模の複数の骨関節疾患研究のための地域コホートを確立しているが、これに加えて本年度は都市型コホートを確立した。今後はOA患者のゲノムと臨床情報をともに含む統合データベースの作成を行い、これらを駆使したOAゲノム疫学解析へと展開させる予定である。標的分子の検討としては、転写因子Runx2、シグナル分子carminerin、およびIII型コラーゲンなどの基質蛋白がOAの発症・進展に関与していることが示された。また、PEG-DET/DNAからなる高分子ナノミセルが効率的かつ低侵襲の遺伝子導入システムとして大きな可能性を持つことが明らかとなり、また外磁場とBMC-ML複合体を用いた新しいcell delivery systemが今後の軟骨再生医療における新機軸となりうることが示された。OAの診断に関しても、OAの早期診断や進行度を数値化するためのMRIによる画期的な方法が提唱され、また関節液中のアグリカン由来フラグメントがOAの進行を予測するのに有用であることが示された。
結論
OAに対する公的な研究支援規模は余りにも小さい。厚労省の中でも本研究課題は唯一の包括的OAプロジェクトであり、この規模で病態解明、診断、治療を検討することを目指せば、当面の研究内容が散発的になるのは不可避である。初年度は個々の分担研究を展開させることに重点をおいたが、今後は個々の研究の横の繋がりを重視し、出来るだけ研究全体としての方向性を具体化・明確化することに留意する予定である。

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
-