新規癌胎児性抗原を利用した肝細胞癌の診断と治療

文献情報

文献番号
200500728A
報告書区分
総括
研究課題名
新規癌胎児性抗原を利用した肝細胞癌の診断と治療
課題番号
H17-肝炎-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
西村 泰治(熊本大学 大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 中面 哲也(国立がんセンター 東病院)
  • 佐々木 裕(熊本大学 大学院医学薬学研究部)
  • 木下 平(国立がんセンター 東病院)
  • 古瀬 純司(国立がんセンター 東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 申請者らがcDNAマイクロアレイ解析により同定した、肝細胞癌に高発現する新規癌胎児性抗原Glypican-3 (GPC3) を、肝細胞癌の診断と免疫療法に利用することを目的とする。

研究方法
 肝細胞癌の従来の治療法の成績を評価して、免疫療法の必要性および適応患者について検討する。また肝細胞癌の腫瘍マーカーとしてのGPC3の有用性を検討するために、多数の肝細胞癌患者より検体を収集する。さらにマウスにおけるGPC3を標的とした肝細胞癌の免疫療法の効果を検討し、臨床応用に必要な基礎データを蓄積する。またマウスおよびサルES細胞より分化誘導した樹状細胞 (ES-DC) を利用して、腫瘍免疫を誘導する細胞ワクチンを開発する。さらにGPC3を認識して、肝細胞癌を破壊するヒトT細胞のin vitro免疫応答について解析し、臨床試験への応用を計画する。
結果と考察
 肝細胞癌の外科的治療としての肝切除と、内科的治療としての局所壊死療法の有効性が確認され、さらに切除を含めた包括的な補助療法に関する臨床試験実施の必要性が示された。新たにGPC3とSPARCが早期メラノーマの優れた血清腫瘍マーカーとなることを示すとともに、血清GPC3測定の肝細胞癌の診断における意義を検証すべく検体を収集した。また、GPC3由来のマウスキラーT細胞エピトープペプチドを同定して、免疫療法に関するマウスin vivoモデルを構築し、GPC3を標的とした養子免疫療法および樹状細胞ワクチンの有効性と安全性を証明した。さらに肝細胞癌の免疫療法に臨床応用可能な、肝細胞癌を破壊するヒトキラーT細胞を誘導できるGPC3ペプチドを2種類同定し、これらのGPC3ペプチドを用いた臨床第I/II相試験のプロトコールを作成した。また、モデル腫瘍抗原を発現させたマウスES細胞より分化誘導した樹状細胞(ES-DC)を用いて、有効な腫瘍免疫を誘導することに成功した。
結論
 肝細胞癌の従来の治療成績の分析により、免疫療法に関する臨床試験実施の妥当性を確認した。さらに、マウスおよびヒト・キラーT細胞が認識するGPC3ペプチドを利用した免疫療法の有効性と安全性を動物実験により証明し、ヒト免疫療法の臨床第I/II相試験計画を作成した。またES-DCを用いた抗腫瘍細胞ワクチンの開発に関する基礎研究成果を得、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしての有用性を検討するために患者検体を収集した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-05
更新日
-