文献情報
文献番号
200500702A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア・大平洋地域におけるHIV感染症の疫学に関する研究
課題番号
H15-エイズ-019
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
武部 豊(国立感染症研究所エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 草川 茂(国立感染症研究所エイズ研究センター)
- 椎野 禎一郎(国立感染症研究所エイズ研究センター)
- 駒野 淳(国立感染症研究所エイズ研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
39,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
中国において感染者数の急速な増加が予測されるなど、アジアにおいて今後さらに深刻なエイズ危機の到来が危惧される。本年度は、近年急速に流行が拡大しているマレーシアと日本の分子疫学的研究、当地域の流行株の感染性分子クローンの樹立とウイルス学的研究、さらにエイズ発症に関わる宿主側因子の探索を主要な柱として研究を推進した。
研究方法
1)マレーシア2)東京都において収集した検体の塩基配列を決定し、サブタイプ帰属とサブタイプ間組換構造を解析した。3)アジア型サブタイプB(B')の感染性分子クローンを樹立しそのウイルス学的性状を検討した。4)逆転写酵素遺伝子のフィンガーとパーム領域の組換によって多剤耐性を獲得した症例の組換直前の遺伝子型を持つ感染性クローンの共感染の系で組換を解析した。5)envを発現するリコンビナントhPIV2を構築し免疫誘導能について検討した。6)長期未発症に分類される患者のウイルス複製関連遺伝子の発現をRNAレベルで解析した。
結果と考察
1)マレーシアの感染者の約20%に、CRF01_AEとB'からなる組換ウイルスを見出した。そのうち疫学的に関係のない4検体で同じ組換構造が検出され、CRF33_01Bとして承認された。2)日本人男性同性愛者ではすべてサブタイプB(57/57)であったのに対し、日本人異性間性感染者ではB(14/34)とCRF01_AE(14/34)がほぼ同規模で流布していた。3)当地域の注射薬物乱用者や中国河南省の供血者で流行しているB'分離株からウイルス学的性質の異なる複数のクローンを樹立した。4)培養細胞への共感染により交叉点が明確な組換ウイルスを作らせることに成功し、in vivoで組換機構を解析する系を確立した。5)リコンビナントhPIV2のマウスへの経鼻投与により全身・粘膜で特異的細胞性・液性免疫が誘導され、hPIV2が粘膜免疫誘導可能な新規ワクチンベクターとして有効であることが示された。6)複製関連遺伝子の一つに関して転写産物から特定のエクソンが欠失する現象が見い出され、長期未発症群でこの欠失が有意に多く見出されることを明らかにした。
結論
これらの成果は、アジアと日本におけるHIV感染症の最新動向の把握に加え、アジアの流行の成立ち、流行拡大の背景にある宿主側・ウイルス側の要因の解明、ワクチン等新規の感染阻害・発症防止技術の開発に重要な意義があると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2006-06-14
更新日
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