HIV感染予防対策の効果に関する研究

文献情報

文献番号
200500698A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染予防対策の効果に関する研究
課題番号
H15-エイズ-013
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
池上 千寿子(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
研究分担者(所属機関)
  • 東 優子(大阪府立大学)
  • 兵藤 智佳(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
  • 徐 淑子(新潟県立看護大学)
  • 生島 嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
  • 長谷川 博史(ジャンププラス)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染予防対策として有効な介入プログラムと教材パッケージの開発を目的とし、5の柱で研究を実施した。1.若者向け映像教材パッケージの開発、2.クリニックと連携した若者向けピア介入プログラムの実践と効果評価、3.HIV陽性者による予防介入の実践と周囲告知に関する実態調査、4.予防介入における行政とNGO連携を促進するための課題の検討、5.学校や地域で若者への予防介入を実践する人材育成、である。
研究方法
1.映像教材について、学習時間と学習目的(行動モデル、意識喚起、知識の提供、コミュニケーション等)にあわせて視聴とグループワーク、講義を組み合わせる「カフェテリア方式」を開発し、必要な副教材を作成。2.都内女性外来クリニックを毎月1回若者に開放し若者によるピアプログラムを実践し、参加者に対して質問紙調査を行う。3.HIV陽性者を対象に、web上で質問紙調査を実施すると共に、予防介入のためのスピーカー研修を実施。4.行政、エイズ予防財団の担当者、専門家を交えて6回の検討会を実施し現状分析と課題の整理を行った。5.教師、保健師、助産師等若者への予防介入を実践している専門家を対称に年4回の人材育成講座を開催し、講座の評価について質問紙調査を実施。
結果と考察
1.映像教材にあわせてテキストブック、実施者用ガイドブック、ワークブック、シナリオブックを作成した。このパッケージにより目的や時間にあわせて授業を組み立て、教材を活用することができる。2.クリニックでのプログラムには毎回10-30名の若者が参加した。クリニックが身近になる、性の健康について安心して相談できるなどの評価を得た。同時に専門家と若者が連携してプログラムを継続するには緻密な調整と明瞭な役割分担の必要性が確認された。3.陽性者スピーカー研修(1泊2日)は12名が修了した。web調査は155名の回答を得た。回答者はゲイの若者が中心であるが告知後1週間以内に半数が複数の他者に告知をしている。4.行政とNGOの連携を促進するための具体的提言を冊子にまとめた。5.人材育成講座(定員30名)は年間100名を超す参加がある。新教材やワークを駆使した実践によりスキルの向上につながり継続参加者も多く交流が深まった。
結論
若者への予防介入について映像教材パッケージを開発し実践する人材を育成した。地域資源間の連携、ピア介入、陽性者による告知等の手法について有効性を確認した。

公開日・更新日

公開日
2006-06-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200500698B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染予防対策の効果に関する研究
課題番号
H15-エイズ-013
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
池上 千寿子(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
研究分担者(所属機関)
  • 東 優子(大阪府立大学)
  • 兵藤 智佳(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
  • 徐 淑子(新潟県立看護大学)
  • 生島 嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京)
  • 長谷川 博史(ジャンププラス)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染予防対策の対象を若者とし、だれが、いかに介入するのが有効であるのかを科学的に研究し、有効な手法にまとめると共に、示唆された課題に対して具体的な提言を行い、行政の施策に資することを目的とする。「だれが」とは、ピア、HIV陽性者、専門家である。「いかに」とは、教材開発、ピアプログラム、陽性者による介入、行政とNGOの連携であり、それぞれの有効性を研究する。
研究方法
1.教材開発では先行研究によって制作した映像教材の効果を測定するための準実験研究プロトコルを作成し(初年度)、それに則り効果を測定し(2年度)、その結果を基に映像教材をだれもが有効に活用できるための教材パッケージを開発した(3年度)。2.ピア介入という手法について国内外の文献調査からその概念と有効性を整理し(初年度)、国内実態調査により企画運営上の課題を整理し(2年度)、クリニックとの連携によるピア介入プログラムを実践し、その効果について質問紙調査をした(3年度)。3.陽性者による介入について、陽性者による告知をうけた周囲の人の予防意識や行動への影響をweb調査し(2年度)、陽性者による告知の実態のweb調査及び陽性者による介入研修を実施した(3年度)。4.連携による介入について、行政による若者啓発事業の事例研究と課題の整理を行い(2年度)、行政とNGOの連携促進のための検討会をもち具体的かつ有効な方法を検討した(3年度)。5.専門家介入については教師、保健師、助産師を対象に年4回の人材育成講座を3年間継続して企画・運営した。
結果と考察
若者への予防介入にはピアによる行動モデル(同世代の若者による群像ドラマという映像教材)が有効であることが確認され、学習時間や目的にあわせて映像視聴と講義、グループワークをくみあわせて活用できる教材パッケージとして開発した。陽性者による周囲への告知は自分にも感染しうるという「身近感」を育て、受検・予防意識と相関することが示唆された。陽性者が安心して告知できる環境の整備は本人のみならず周囲の予防を促進するという効果をもつ。行政とNGO等の連携では、資源間の調整が課題である。
結論
有効な教材パッケージを開発し、陽性者による介入効果を確認した。行政とNGOの連携を促進するための具体的提案をした。予防介入の人材育成ができた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500698C

成果

専門的・学術的観点からの成果
若者の性の健康を促進するために製作された若者による群像ドラマ仕立ての映像教材の有効性を研究によって確認し、映像教材と4種類の冊子による教材パッケージを開発した。教材パッケージにより、教育現場で学習時間や目的に応じて映像視聴、講義、グループワーク等で授業を組み立てることができる。パッケージの活用方法や実践についての研修も実施し、学校や地域で若者への予防教育を実施している教師、保健師、助産師等からすでに反響を得ている。
臨床的観点からの成果
HIV陽性者による他者告知と告知をうけた周囲の予防意識や受検・予防行動との肯定的相関関係が示唆された。このことから陽性者が他者に安心して告知をできる環境の整備は社会全体の予防効果にもつながることが示唆される。ケアの充実と予防とが相乗効果を発揮することは国際的に指摘されているが、日本の陽性者においても確認されたといえる。陽性者を予防対策のパートナーとすることは陽性者のQOL向上になるだけでなく予防対策の重要な手法であることを示した社会的意義は大きい。
ガイドライン等の開発
行政による若者への啓発事業について、事業の計画立案における若者自身の参加及び事業の実施における資源連携という2つの観点から2つの指標を作成した。また、事業連携をする際に必要なNGOのプログラム評価についての検討会を開催しプログラム評価の指標と手法について整理した。以上の2点については「行政とNGOの連携を促進するための検討報告書」にまとめた。
その他行政的観点からの成果
若者への予防教育について有効な教材パッケージを開発できたことは、個別施錯綜の一つである若者への予防対策の重要な材料を提供できたことになる。陽性者による手記を使った予防介入についてはすでに多くの自治体や保険所から実施の要望がきている。日本では保健所と学校の連携による性教育の実施が困難になりつつあるが、教材パッケージは教師が学校現場の状況や自分の力に応じてすぐに活用できるものである。
その他のインパクト
陽性者による手記を使った介入イベントについてはNHKで報道され(3/8/06)反響をよんだ。教材パッケージの効果的な普及の方法について関係諸機関と検討している。研究成果について毎年研究成果発表会を実施してきたが、今後はHIV臨床カンファレンス、エイズ予防財団や保健行動科学院の研修会・講演会等でも発表する。独自の啓発イベントは毎年実施しているが、そこでは最新の研究成果をわかりやすい小冊子などにして提供している。

発表件数

原著論文(和文)
23件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
45件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
池上千寿子
行政とNGOの連携を促進するための検討報告書
ー , 1-28  (2006)
原著論文2
東 優子
福祉とセクシュアリティ―医療と福祉の谷間に埋没してきた『からだ・性』
人間福祉学への招待 未来をひらく福祉入門 , 130-167  (2005)
原著論文3
徐 淑子
安全な性行動とは
性と保健行動 , 1-6  (2003)
原著論文4
徐 淑子
「予防的保健行動」としてのコンドーム使用
性と保健行動 , 7-14  (2003)
原著論文5
野坂祐子
保健行動とメンタルヘルス
性と保健行動 , 15-18  (2003)
原著論文6
池上千寿子
禁欲・純潔の強調でなぜHIV/STDは防げないか
アメリカの禁欲主義教育と日本の性問題 , 34-51  (2003)
原著論文7
池上千寿子
HIV/AIDSの予防とケアに関するNGOの活動と役割
医学のあゆみ , 213 (10) , 951-955  (2005)
原著論文8
池上千寿子
AIDS予防戦略としてのLiving Together計画
最新医療情報誌アニムス , 25-32  (2005)
原著論文9
池上千寿子
HIVポジティブ、共に暮らす社会
健康教育 , 35 (16) , 12-16  (2004)
原著論文10
池上千寿子
保健に関する予防介入と倫理的課題
日本エイズ学会誌 , 6 (8) , 138-140  (2004)
原著論文11
池上千寿子
「愛」にせかされる子どもたちへのケアを具体的に
体育科教育 , 52 (2) , 15-16  (2004)
原著論文12
池上千寿子
世界のHIV/AIDSへの取り組み
季刊セクシュアリティ , 16 , 24-30  (2004)
原著論文13
池上千寿子
セクシュアルヘルスのすすめ
日本衛生学雑誌 , 59 (2) , 126-126  (2004)
原著論文14
池上千寿子
米の禁欲主義教育政策とブッシュの戦略
季刊「女も男も」 , 16-17  (2003)
原著論文15
池上千寿子
若者の性と保健行動および予防介入についての考察
日本エイズ学会誌 , 5 (1) , 48-54  (2003)
原著論文16
東 優子
当事者に対する社会的支援-誰の,何を支援していくのか
モダンフィジシャン , 25 (4) , 435-438  (2005)
原著論文17
生島 嗣、若林チヒロ
HIV感染症をめぐる社会福祉分野の課題-就労を中心に
日本エイズ学会誌 , 7 (3) , 189-192  (2005)
原著論文18
徐 淑子
パートナーとの関係性の認知
日本性科学会雑誌 , 22 (1) , 141-141  (2004)
原著論文19
東 優子、徐 淑子、兵藤智佳
若者のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスに対するピア教育の理論と実践
日本エイズ学会誌 , 6 (3) , 129-132  (2004)
原著論文20
東 優子
テレビドラマに描写される性の保健行動メッセージの分析
現代性教育研究月報 , 4 , 1-6  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-07-02
更新日
-