HIVの潜伏感染・再活性化のエピジェネティック制御機構を標的とした根治療法開発の基礎研究

文献情報

文献番号
200500697A
報告書区分
総括
研究課題名
HIVの潜伏感染・再活性化のエピジェネティック制御機構を標的とした根治療法開発の基礎研究
課題番号
H15-エイズ-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 俊樹(国立大学法人東京大学大学院新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石田 尚臣(国立大学法人東京大学大学院新領域創成科学研究科 )
  • 堀江 良一(北里大学医学部第4内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HAARTによるAIDS発症の抑制に成功したが、潜伏感染HIVに対する有効な治療戦略が存在しない現在、感染個体からのHIVの排除、再発を防止することは未だに困難である。すなわち、HIV感染症の根治はHAARTによっても不可能である。我々はHIV潜伏感染と再活性化の制御機構の理解を基盤とした根治療法の戦略を可能にする基礎的知見を得ることにより、潜伏感染HIVの制御を目指した根治療法開発の基礎を形成することを研究の目的とする。今年度は、in vivoのヒストン化学修飾状態の解析に重点を置き、潜伏化におけるエピジェネティック制御の関与をin vivoにおいて明らかにすることを目的とした。
研究方法
HIVの潜伏化に関わるエピジェネティックス制御による転写制御という観点から、in vivoにおけるプロウイルスLTRのメチル化の有無、ヒストンの化学修飾によるクロマチン構造制御、エピジェネティック制御機構による治療戦略の基礎の3点について、分子生物学的手法を主に、細胞生物学、免疫学等の手法を取り入れ解析を進めた。
結果と考察
シドニーコホートにおけるHIV感染患者末梢血PBMCを用いたプロウイルスLTRのメチル化解析ならびに、SHIV感染モデルサル生検検体を用いたプロウイルスLTR周辺のヒストン化学修飾状態解析を通じ、in vivoにおいての転写抑制には、メチル化よりむしろ抑制型ヒストン化学修飾が深く関与することが強く示唆された。また、再活性化シグナル伝達系の解析から、NF-kB核移行阻害剤が、HIVの複製を阻害することが明らかとなり、今後より詳細な研究を継続する事により、新規抗HIV剤となることが示唆された。
結論
1. レンチウイルスの潜伏化にはプロウイルスLTRのメチル化による制御よりむしろ抑制型ヒストン化学修飾が深く関与している。
2. NF-kB核移行阻害剤は、HIV-1の複製を阻害する。

公開日・更新日

公開日
2009-04-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200500697B
報告書区分
総合
研究課題名
HIVの潜伏感染・再活性化のエピジェネティック制御機構を標的とした根治療法開発の基礎研究
課題番号
H15-エイズ-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 俊樹(国立大学法人東京大学大学院新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石田 尚臣(国立大学法人東京大学大学院新領域創成科学研究科 )
  • 堀江 良一(北里大学医学部第四内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HAARTの導入によりAIDS発症の抑制には成功した。しかし、HIV感染者の最も集中する発展途上にある国々では、高価な抗HIV剤を治療に投入できず、多くのAIDS発症者を抱えたままであると同時に、副作用による中断や多剤耐性ウイルスの出現など、HAARTは決定的な抗HIV療法ではない。もっとも憂慮すべき問題は、潜伏感染細胞を主体とするウイルスリザーバーの除去は、HAARTでは不可能であるという事である。我々の研究は、HIV潜伏感染と再活性化の制御機構の理解を基盤とした根治療法の戦略を可能にする基礎的知見を得ることにより、潜伏感染HIVの制御を目指した根治療法開発の基礎を形成することを研究の目的とする。
研究方法
我々研究班は、HIVの潜伏化は、プロウイルスの完全な転写抑制状態とみなし、その分子機構は、エピジェネティックス制御による転写制御が主体であるとの作業仮説を立案し、次のような研究方法により仮説を立証し、根治療法確立のための基礎形成を行なった。すなわち、1)プロウイルスLTRのDNAメチル化状態解析、2)プロウイルスLTR近傍のヒストンの化学修飾、3)これらの分子機構に立脚した潜伏・再活性化阻害機構の検索である。慢性感染細胞株、SHIV感染サルモデル検体、シドニーコホート検体等の材料を用い、分子生物学的/細胞生物学的/ウイルス学的手法を駆使して研究を遂行した。
結果と考察
HIV感染細胞株を用いた解析から、LTRのメチル化、抑制型ヒストンの化学修飾系は、潜伏化に深く関与することが示唆された。In vivo解析では、強いLTRのDNAメチル化は検出できず、むしろLTR周辺の抑制型ヒストン化学修飾が認められた。これらのことはin vivoにおいての転写抑制には、抑制型ヒストン化学修飾が深く関与することが強く示唆する。以上より、エピジェネティック制御を応用した、より強固で安定な発現抑制状態の誘導、もしくは生体に安全な再活性化誘導による対リザーバー戦略を提案したい。
結論
1. HIVの潜伏感染には、エピジェネティックな遺伝子発現制御機構が深く関与する。
2. In vivoにおいては、LTRのDNAメチル化よりも、LTR周辺の抑制型ヒストン化学修飾に依存する転写抑制が、潜伏化には重要である
3. NF-kB核移行阻害薬は、HIVの複製を阻害し、新たな作用点をもつ抗HIV剤としての効果が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500697C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIVの潜伏化にはエピジェネティクス制御が深く関わっている事を明らかにした。In vivoにおいては、抑制型ヒストン修飾系の重要性が示唆された。このことは、in vivoのプロウイルスは容易に再活性化されうる事を示しており、エピジェネティクス制御を応用する事により、in vivoにおいて、より安定で強固な発現抑制状態の誘導や、安全な再活性化誘導を介した対リザーバ戦略の可能性を提供することができた。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-07-02
更新日
-