HIV感染予防に関する研究

文献情報

文献番号
200500695A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染予防に関する研究
課題番号
H15-エイズ-010
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
佐多 徹太郎(国立感染症研究所感染病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 俣野 哲朗(東京大学大学院医学系研究科微生物学講座)
  • 三浦 智行(京都大学ウイルス研究所感染症モデル研究センター)
  • 本多 三男(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 森 一泰(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 庄司 省三(熊本大学大学院医学薬学研究部薬学生化学分野)
  • 石川 晃一(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 神奈木 真理(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 横幕 能行(国立病院機構名古屋医療センター)
  • 中島 典子(国立感染症研究所感染病理部)
  • 高橋 秀実(日本医科大学医学部微生物学免疫学)
  • 保富 康宏(三重大学医学部生体防御医学講座)
  • 牧野 正彦(国立感染症研究所ハンセン病研究センター)
  • 横田 恭子(国立感染症研究所免疫部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
88,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズ克服にはHIV感染の予防に優るものはなく、なかでもワクチン開発が最重要課題である。本研究班では、サルを用いた有効かつ安全なワクチン開発研究、ワクチン免疫による防御機構の解明、そしていまだあきらかとなっていないHIV感染病態の解析を3本柱として研究を行う。
研究方法
分担研究者の詳細な研究方法は分担研究者の報告書に譲る。
結果と考察
サルを用いた有効かつ安全なワクチン開発研究では、組換えBCGとDIsブーストワクチン候補の研究では組換えBCGワクチンのコドン至適化とDIsワクチンのブーストワクチンの基礎的なコンセプトを確立することができ、実用化に向けた研究が期待される。DNAプライム・SeVブーストワクチン接種サルにSIVmac239チャレンジ後、3頭ではウイルス複製制御が維持されており、セットポイント期以降1年までの濃縮血漿を用いた解析でもウイルスは検出されなかった。感染制御におけるCTLの役割が明らかにされ、長期のSIV複製制御維持・エイズ発症阻止につながることが示唆された。今後さらに長期のウイルス複製制御維持に必要な機序を解析し、ウイルス多様性に対する効果を検討する必要がある。強毒SHIVと弱毒株の違いとしてgp41の変異が感染力価を40倍上昇させた。SHIV感染によるCD4陽性T細胞の増殖分化障害および小腸でのCD4T細胞の減少枯渇が明らかとなり、また、ウイルス量が少ない状態では新たな感染を防御することができた。エイズの病原性解明に向けて極めて重要な知見が得られた。d-5G感染ザルにおけるd-5Genv遺伝子に新たな変異は検出されなかった。自己抗体型ワクチンとして新たに作成したM細胞を標的とする化合物が経口投与で小腸粘膜内にとりこまれ、粘膜免疫ワクチン開発が可能となった。経鼻免疫では低分子のキトサンおよびHVJ envベクターがアジュバントとして有望と考えられた。ワクチン免疫による防御機構の解明では、α抗原蛋白はHIVenv gp120蛋白に対し非常に強い抗体の誘導とTh1タイプのサイトカインの産生を誘導した。自然免疫系の解析を目的とした実験系でNef発現がNK細胞のINFγ産生を著しく低下させた。いまだあきらかとなっていないHIV感染病態の解析では、確実にHGVが産生されることが明らかとなりHIV増殖との関連が近々明らかにされよう。エイズ脳症のin vitro系が完成し、ウイルスやケモカイン等の影響が分子レベルで明らかにされる基礎が完成した。
結論
ワクチン開発研究、感染防御機構や病態解明に役立つ成果が得られ、ワクチン開発の基盤が形成されつつあり、今後のさらなる発展が期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-06-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200500695B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染予防に関する研究
課題番号
H15-エイズ-010
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
佐多 徹太郎(国立感染症研究所感染病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 俣野 哲朗(東京大学大学院医学系研究科微生物学)
  • 三浦 智行(京都大学ウイルス研究所感染症モデル研究センター)
  • 本多 三男(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 森 一泰(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 庄司 省三(熊本大学大学院医学薬学研究部薬学生化学分野)
  • 石川 晃一(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 保富 康宏(三重大学医学部生体防御医学)
  • 神奈木 真理(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科免疫治療学)
  • 牧野 正彦(国立感染症研究所ハンセン病研究センター)
  • 横田 恭子(国立感染症研究所免疫部)
  • 横幕 能行(国立病院機構名古屋医療センター)
  • 中島 典子(国立感染症研究所感染病理部)
  • 高橋 秀実(日本医科大学医学部微生物免疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国のサルを用いたエイズワクチン研究者やHIV感染防御免疫機構やHIV感染病態研究者によるHIV感染予防を目的とした研究を推進することにより、ヒトでの実用化に耐えるワクチンの基礎研究を行うことを目的とした。
研究方法
詳細は分担研究者報告に譲る。
結果と考察
HIV-1 CRF01_AE Gag遺伝子を組込んだ組換えBCGワクチンと組換えDIsワクチンはヒトへの投与可能量で抗原特異的γインターフェロン産生T細胞数が有意に検出された。DIsウイルスベクターの安全性を明らかにし、またコドン至適化により、基礎的なコンセプトを確立することができた。エピトープ特異的CTLがwild-type SIVの迅速な排除に中心的役割を果たすことが明らかとなった。SHIV半生DNAワクチンは強毒SHIV攻撃接種に対してある程度の感染防御効果があることを示した。5本の糖鎖を欠く∆5Gの糖鎖欠失変異がウイルスの細胞指向性、中和抗体感受性に変化を与えることを明らかにした。∆5G感染ザルで∆5Genv遺伝子の新たな変異は検出されなかった。cDDR5-MAP抗原は細胞表面のnative CCR5を認識する特殊抗体を誘導し、さらにnon-clade B HIV-1 R5ウイルス対しても感染防止効果を示した。経鼻免疫では低分子のキトサンおよびHVJ envベクターがアジュバントとして有望と考えられた。α抗原のアジュバント効果を明らかにし、酵母菌でのリコンビナントα抗原蛋白を作成した。HIV-1抑制シグナルを伝えるCD4陽性T細胞上の表面分子のうちCD28ファミリー分子がウイルス産生を有意に抑制した。DC-SIGNの機能を解析した。抗原特異的反応を幅広く解析できるIFN-γ活性検出レンチウイルスベクターを構築した。臨床検体由来gag-polを効率よく感染性クローンにクローン化する方法を確立した。感染性HGVクローンを作製しHIVの増殖との関連について検討した。HIV脳症の動物モデルであるSIV脳症の病態を解析できるin vitroの培養系をサル胎児脳由来の神経幹細胞を用いて確立した。粘膜内の特異的CTL細胞はCD8ααとCD8αα型双方からなるγδTCR T 細胞であった。初乳中の細胞の主体はDC-SIGN発現細胞でR5型 HIV-1を捕捉・保持することにより感染伝播の主役を演ずることを見出した。
結論
ワクチン開発の基礎的データが得られた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-12-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500695C

成果

専門的・学術的観点からの成果
組換えBCG・組換えDIsワクチンについては効果および安全性に関わるデータが発表され、人への応用直前の段階にほぼ到達しえた。感染防御に関わる抗原特異的細胞障害性T細胞の解析から血漿中のウイルスが検出されない程度に抑制維持が可能であれば、長期のウイルス複製制御およびエイズ発症阻止につながることが示唆された。ほか、候補ワクチンおよび感染制御機構や感染病態に関わるデータが得られ、今後の研究の発展が期待される。
臨床的観点からの成果
SIV感染サルにおける腸管およびリンパ系組織内CD 4陽性T細胞およびCD8αα陽性CD4陽性T細胞の感染動態が明かとなり、HIV感染防御機構や感染病態の理解に役立つと考えられた。
ガイドライン等の開発
なし。
その他行政的観点からの成果
なし。
その他のインパクト
当該研究班の研究事業による英文論文は34編が影響力のある国際誌に発表された。また関連する和文発表および国内・国際学会にも相当数が発表された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
56件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
96件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kinomoto M, Yokoyama M, Tokunaga K et al.
Amino acid 36 in HIV-1 gp41 ectodomain controls fusogenic activity: Implications for the molecular mechanism of viral escape from a fusion inhibitor.
J Virol , 79 , 5996-6004  (2005)
原著論文2
Kobayashi M, Igarashi H, Matano T et al.
Reversion in vivo after inoculation of a molecular proviral DNA clone of simian immunodeficiency virus with a cytotoxic-T-lymphocyte escape mutation.
J Virol , 79 , 11529-11532  (2005)
原著論文3
Kato M, Igarashi H, Matano T et al.
Induction of Gag-specific T-cell responses by therapeutic immunization with a Gag-expressing Sendai virus vector in macaques chronically infected with simian-human immunodeficiency virus.
Vaccine , 23 , 3166-3173  (2005)
原著論文4
Kanekiyo M, Matsuo K,Honda M et al.
Mycobacterial codon optimization enhances antigen expression and virus-specific immune responses in recombinant bacille Calmette-Guérin expressing the human immunodeficiency virus type 1Gag.
J Virol , 79 , 8716-8723  (2005)
原著論文5
Ami Y, Izumi Y, Honda M et al.
Vaccination with Recombinant Mycobacterium bovis Bacillus Calmette-Guérin and a Non-replicating Vaccinia Virus Recombinant Leads to Long-lasting and Effective Immunity.
J Virol , 79 , 12871-12879  (2005)
原著論文6
Mori K, Sugimoto C,Y, Nagai Y et al.
Influence of glycosylation on the efficacy of an Env-based vaccine against SIVmac239 in a macaque AIDS model.
J Virol , 79 , 10386-10396  (2005)
原著論文7
Nakayama D, Misumi S, Shoji S et al.
Suppression of Multiclade R5 and X4 Human Immunodeficiency Virus Type-1 Infections by a Coreceptor-Based Anti-HIV Strategy.
J Biochem , 138 , 571-582  (2005)
原著論文8
Takamura S, Matsuo K, Yasutomi Y
Ag85B of mycobacteria elicits effective CTL responses through activation of robust Th1 immunity as a novel adjuvant in DNA vaccine.
J Immunol , 175 , 2541-2547  (2005)
原著論文9
Matano T, Kobayashi M,Nagai Y et al.
Cytotoxic T lymphocyte-based control of simian immunodeficiency virus replication in a preclinical AIDS vaccine trial.
J Exp Med , 199 , 1709-1718  (2004)
原著論文10
Lun W-H, Takeda A, Matano T et al.
Loss of virus-specific CD4+ T cells with increases in viral loads in the chronic phase after vaccine-based partial control of primary simian immunodeficiency virus replication in macaques.
J Gen Virol , 85 , 1955-1963  (2004)
原著論文11
Enose Y, Miura T, Hayami H et al.
Protective effects of nef-deleted SHIV or that having IFN-gamma against disease induced with a pathogenic virus early after vaccination.
Arch Virol , 149 , 1705-1720  (2004)
原著論文12
Zhou X, Kubo M, Kannagi M et al.
Inducible co-stimulator (ICOS)-mediated suppression of human immunodeficiency virus type 1-replication in CD4+ T lymphocytes.
Virology , 325 , 252-263  (2004)
原著論文13
Emori Y, Ikeda T, Kannagi M et al.
Inhibition of human immunodeficiency virus type 1 replication by Z-100, an immunomodulator extracted from human type tubercle bacilli, in macrophages.
J Gen Virol , 85 , 2603-2613  (2004)
原著論文14
Iijima S,Tsunetsugu- Yokota Y, Aida Y et al.
Nuclear localization of Vpr is crucial for the efficient replication of HIV-1 in primary CD4+ T cells.
Virology , 327 , 249-261  (2004)
原著論文15
Yokomaku Y, Miura H, Ariyoshi K et al.
Impaired processing and presentation of cytotoxic-T-lymphocyte (CTL) epitopes are major escape mechanisms from CTL immune pressure in human immunodeficiency virus type 1.
J Virol , 78 , 1324-1332  (2004)
原著論文16
Shinya E, Owaki A, Takahashi H et al.
Endogenously expressed HIV-1 nef down-regulates antigen-presenting molecules, not only class I MHC but also CD1a, in immature dendritic cells.
Virology , 326 , 79-89  (2004)
原著論文17
Fujimoto C, Nakagawa Y, Takahashi H et al.
Polyriboinosinic polyribocytidylic acid [poly(I:C)]/TLR3 signaling allows class I processing of exogenous protein and induction of HIV-specific CD8+ cytotoxic T lymphocytes.
Int Immunol , 16 , 55-63  (2004)
原著論文18
Hidaka C, Norose Y, Takahashi H et al.
Dermal dendritic cells sensitized with plasmid DNA encoding immunostimulatory sequence by gene gun efficiently prime murine HIV-1-specific CD8+ cytotoxic T lymphocytes.
Biomed Res , 25 , 83-91  (2004)
原著論文19
Kuribayashi H, Wakabayashi A, Takahashi H et al.
Resistance to viral infection by intraepithelial lymphocytes in HIV-1 P18-I10-specific T-cell receptor transgenic mice.
Biochem Biophys Res Commun , 316 , 356-363  (2004)
原著論文20
Satomi M, Shimizu M, Takahashi H et al.
Transmission of macrophage-tropic HIV-1 by breast milk macrophages via DC-SIGN.
J Infect Dis , 191 , 174-181  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-07-02
更新日
-