若年婦人におけるHIV感染状況およびHIV感染と生殖医療との関連性に関する研究

文献情報

文献番号
200500693A
報告書区分
総括
研究課題名
若年婦人におけるHIV感染状況およびHIV感染と生殖医療との関連性に関する研究
課題番号
H15-エイズ-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田中 憲一(新潟大学教育研究院医歯学系 産婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 牛島 廣治(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学)
  • 名取 道也(国立成育医療センター 産婦人科)
  • 岩下 光利(杏林大学医学部 産婦人科)
  • 花房 秀次(荻窪病院 血液科)
  • 高桑 好一(新潟大学教育研究院医歯学系 産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第1の研究:HIV感染男性非感染女性夫婦がより安全に妊娠しうる妊娠補助技術を開発すること,第2の研究:HIV母子感染の際のHIVのサブタイプを明らかにすること、HIVの感染機序を明らかにすること,第3の研究:母乳中のHIVを低コストで減少・除去可能な装置を開発,母乳によるHIV母子感染リスクを回避・減少させること。
研究方法
第1の研究:対象となる夫婦の夫から得られた精液をPercoll-Swim up法により調整,超高感度PCRによりHIVが1コピー/ml以下であることを確認し,体外受精・胚移植を実施した。第2の研究:(1)ベトナムでHIV陽性妊婦から生まれた児の血液のPCRによるサブタイピングを行った。(2)CaCo-2から、RNA抽出キットを用いてtotal RNAの抽出を行った。DNase処理を行った後、RT-PCRにより、目的とする遺伝子の増幅反応を行った。第3の研究:光+酸化チタンによる母乳中HIV不活性化の可能性を報告しているが、母乳中に含まれる細胞(HIV感染のリスクあり)をトラップする上で最適なフィルターのサイズを決定するため、4種の細胞(H9、M8166、THP-1、PBMC)を8、10、11 mmのフィルターを通過させ、通過液を遠心し、通過細胞数をトリパンブルー染色ならびにFACSにて測定、通過阻止率を計算した。
結果と考察
第1の研究:HIV感染男性非感染女性夫婦に対するIVF-ETは,これまでに50名の患者に対し体外受精・胚移植を実施し,35名で妊娠が成立し,このうち26名で妊娠が継続するという結果を得ている。母児ともに二次感染は認めず極めて有用な治療と判断される。第2の研究:(1)28サンプルがv3領域のシークエンスよりCRF01_AEであると決定された。(2)18種類のGプロテインレセプターのうち、C5a receptor、CCR1、CCR7、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、RDC1の8種類のmRNAがCaCo-2において発現されていることが確認された。第3の研究:母乳中の細胞をトラップするために最適な孔径を検討した結果、8μmで全ての細胞をトラップすることが可能であった。
結論
妊娠,授乳など生殖に関連したHIV二次感染の予防が可能となりつつあり,今後も研究を進めて行くことが重要であると判断された。

公開日・更新日

公開日
2006-06-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200500693B
報告書区分
総合
研究課題名
若年婦人におけるHIV感染状況およびHIV感染と生殖医療との関連性に関する研究
課題番号
H15-エイズ-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田中 憲一(新潟大学教育研究院医歯学系 産婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 牛島 廣治(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学)
  • 名取 道也(国立成育医療センター 産婦人科)
  • 岩下 光利(杏林大学医学部 産婦人科 )
  • 花房 秀次(荻窪病院 血液科)
  • 高桑 好一(新潟大学教育研究院医歯学系 産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第1の研究:HIV感染男性非感染女性夫婦がより安全に妊娠しうる妊娠補助技術を開発すること,第2の研究:HIV母子感染の際のHIVのサブタイプを明らかにし、HIVの感染機序を明らかにすること,第3の研究:母乳によるHIV母子感染リスクを回避・減少させること。
研究方法
第1の研究:対象となる夫婦の夫から得られた精液をPercoll-Swim up法により調整,超高感度PCRによりHIVが1コピー/ml以下であることを確認し,体外受精・胚移植を実施した。第2の研究:(1)ベトナムでHIV陽性妊婦から生まれた児の血液のPCRによるサブタイピングを行った。(2)絨毛癌細胞のGタンパク受容体の発現を調べた。(3) CaCo-2からRT-PCRにより、目的とする遺伝子の増幅反応を行った。第3の研究:(1)母乳、人工乳にHIV-1IIIBを混和し、紫外線、TiO2によるウイルス破壊を評価した。 (2) 母乳中に含まれる細胞をトラップする上で最適なフィルターのサイズを決定するため、4種の細胞を8、10、11 mmのフィルターを通過させ、通過阻止率を計算した。
結果と考察
第1の研究:HIV感染男性非感染女性夫婦に対する体外受精・胚移植は,50名の患者に対し実施,35名で妊娠が成立し,このうち26名で妊娠が継続するという結果を得、母児ともに二次感染は認めていない。第2の研究:(1)28サンプルがv3領域のシークエンスよりCRF01_AEであると決定された。(2) 絨毛癌細胞にGタンパク受容体としてC5a receptor, CCR7,CC9/CCR10, RDC1が発現していた。(3)CaCo-2にGタンパク受容体としてC5a receptor、CCR1、CCR7、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、RDC1が発現していた。第3の研究(1)「ひなた」の紫外線量に相当する3mW/cm2の紫外線を60分間照射した場合に、ウィルスが100%不活性化することを示した。また人工乳中のHIVは酸化チタン+紫外線照射によりp24で2%に減少した。(2)母乳中の細胞をトラップするために最適な孔径を検討した結果、8μmで全ての細胞をトラップすることが可能であった。
結論
妊娠,授乳など生殖に関連したHIV二次感染の予防が可能となりつつあり,今後も研究を進めて行くことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500693C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIV感染男性非感染女性夫婦がより安全に妊娠しうる妊娠補助技術を開発する研究に関しては、超高感度PCR法の開発、精液からのHIV除去法の開発など新たな手技を開発した。HIV母子感染における感染機序を明らかにする研究については絨毛癌細胞、直腸癌細胞などを用い分子生物学的手法により感染機序を解明しつつある、母乳によるHIV母子感染リスクを回避・減少させる研究については酸化チタン、紫外線を用いた母乳中のHIV減少の装置を開発しつつある。いずれも専門的・学術的観点から重要と判断している。
臨床的観点からの成果
HIV感染男性非感染女性夫婦がより安全に妊娠しうる妊娠補助技術を開発する研究については、事前のカウンセリングを重視し、十分な説明と同意のもと、臨床応用を実施している。この結果、HIV感染男性非感染女性夫婦において多くの女性が、二次感染することなく子供に恵まれるという結果を得ている。また、出生した児にもHIV感染は認められておらず、これは臨床的にみて大きな成果と判断される。
ガイドライン等の開発
HIV感染男性非感染女性夫婦がより安全に妊娠しうる妊娠補助技術を開発する研究に関して、事前のカウンセリング、十分な説明と同意、実際の応用において超高感度PCR法により精液調整液、受精卵培養液の2段階でHIVの除去を確認すること、など臨床応用のガイドラインを作成しつつある。これを普及させることによって、HIV感染男性非感染女性夫婦が安心して妊娠しうるような体制が整うことに資するものと判断される。
その他行政的観点からの成果
HIV母子感染における感染機序を明らかにするための研究、母乳によるHIV母子感染リスクを回避・減少させることに関する研究については、本班研究においてベトナムとの共同研究を実施したが、今後母児間の垂直感染を防止するという観点において、国内のみならず国際的貢献ができる可能性がある。母乳中のHI Vを除去する研究に関しては、特に発展途上国において重要な技術であると考えられる。
その他のインパクト
HIV感染男性非感染女性夫婦がより安全に妊娠しうる妊娠補助技術を開発する研究については、社会的にも大きな関心を呼び、今回の班研究の開始年度である平成15年度以前に研究を開始するにあたり公開シンポジウムを開催し各界の専門家からの意見を聴取した。その後も本研究に関する成績等については、マスコミ等から評価を得ている。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
27件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
27件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kato S, Saito R, Hiraishi Y, et al.
Differential prevalence of HIV type 1 subtype B and CRF01_AE among different sexual transmission groups in Tokyo, Japan, as revealed by subtype-specific PCR.
AIDS Res. Hum. Retroviruses , 19 , 1057-1063  (2003)
原著論文2
Miyake A, Enose Y, Ohkura S, et al.
The quantity and diversity of infectious viruses in various tissues of SHIV-induced monkeys at the early and AIDS stages
Arch Virol , 149 , 943-955  (2004)
原著論文3
Phan TG, Nishimura S, Okame M, et al.
Virus diversity and an outbreak of group C rotavirus among infants and children with diarrhea in Maizuru city, Japan during 2002-2003
J Med Virol , 74 , 173-179  (2004)
原著論文4
Hansman GS, Doan LTP, Kguyen TA, et al.
Detection of norovirus and sapovirus infection among children with gastroenteritis in Ho Chi Minh City, Vietnam
Arch Virol , 149 , 1673-1688  (2004)
原著論文5
Phan TG, Okame M, Nguyen TA, et al.
Pakistani children with diarrhea
Human astrovirus, norovirus (GI, GII), and sapovirus infections in J Med Virol , 73 , 256-261  (2004)
原著論文6
Munkanta M, Terunuma H, Takahashi M, et al.
HLA-B polymorphism in Japanese HIV-1-infected long-term surviving hemophiliacs
Viral Immunol , 18 , 500-505  (2005)
原著論文7
Yagyu F, Okitsu S, Tanamoto K, et al.
Determination of HIV-1 subtypes (A-D, F, G, CRF01_AE) by PCR in the transmembrane region (gp41) with novel primers
J Med Virol , 76 , 16-23  (2005)
原著論文8
Phan TG, Nguyen TA, Shimizu H, et al.
Related Identification of enteroviral infection among infants and children admitted to hospital with acute gastroentritis in Ho Chi Minh City, Vietnam
J Med Virol , 77 , 257-264  (2005)
原著論文9
Akihara S, Phan TG, Nguyen TA, et al.
Existence of multiple outbreaks of viral gastroenteritis among infants in a day care center in Japan
Arch Virol , 150 , 2061-2075  (2005)
原著論文10
Phan TG, Nguyen TA, Kuroiwa T, et al.
Viral diarrhea in Japanese children: results from a one-year epidemiologic study
Clin Lab , 51 , 183-191  (2005)
原著論文11
Phan TG, Nguyen TA, Nishimura S, et al.
Etiologic agents of acute gastroenteritis among Japanese infants and children: virus diversity and genetic analysis of sapovirus
Arch Virol , 150 , 1415-1424  (2005)
原著論文12
Li L, Phan TG, Nguyen TA, et al.
Molecular epidemiology of adenovirus infection among pediatric population with diarrhea in Asia
Microbiol Immunol , 49 , 121-128  (2005)
原著論文13
Yan H, Abe T, Phan TG, et al.
Outbreak of acute gastroenteritis associated with group A rotavirus and genogroup I sapovirus among adults in a mental health care facility in Japan
J Med Virol , 75 , 475-481  (2005)
原著論文14
Phan TG, Nguyen TA, Yan H, et al.
A novel RT-multiplex PCR for enteroviruses, hepatitis A and E viruses and influenza A virus among infants and children with diarrhea in Vietnam
Arch Virol , 150 , 1175-1185  (2005)
原著論文15
Phan TG, Okame M, Nguyen TA, et al.
Genetic diversity of sapovirus in fecal specimens from infants and children with acute gastroenteritis in Pakistan
Arch Virol , 150 , 371-377  (2005)
原著論文16
Takakuwa K, Mitsui T, Iwashita M, et al.
Studies on the prevalence of human papillomavirus in pregnant women in Japan
J Perinat Med , 34 , 77-79  (2006)
原著論文17
Akihara S, Phan TG, Nguyen TA, et al.
Identification of sapovirus infection among Japanese infants in a day care center
J Med Virol , 77 , 595-601  (2005)
原著論文18
Kato S, Hanabusa H, Kaneko S, et al.
Complete removal of HIV-1 RNA and proviral DNA from semen by the swim-up method: Assisted reproduction technique using spermatozoa free from HIV-1
AIDS  (2006)
原著論文19
Yoshinaga M, Phan TG, Nguyen TA, et al.
Changing distribution of group A rotavirus G-types and genetic analysis of G9 circulating in Japan
Arch Virol , 151 , 183-192  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-07-02
更新日
-