先進諸国におけるエイズ発生動向、調査体制、対策の分析に関する研究

文献情報

文献番号
200500686A
報告書区分
総括
研究課題名
先進諸国におけるエイズ発生動向、調査体制、対策の分析に関する研究
課題番号
H16-エイズ-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
鎌倉 光宏(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池上 清子(国連人口基金東京事務所)
  • 木村 和子(金沢大学大学院自然科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,529,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、先進諸国のHIV/AIDS発生動向とその調査体制について比較検討し、他国におけるエイズ対策成功事例を分析し、その特徴や教訓を明らかにすること、さらに実施された対策とその後の発生動向との関連を探り、わが国の今後の施策に資することを目的とする。
研究方法
(1)先進諸国におけるHIV/AIDSの発生動向の研究を国際機関および各国の発生動向報告書、websiteの情報等を活用し、とくに1980年代中期以降のHIV/AIDSの発生動向を比較検討することによって発生動向の変遷に注目した分析を行った。
(2)先進諸国における感染経路別の対策と評価の研究に関して、各種施策集団ごとの対策とその評価を行った。
(3)同意を得た上で、実施団体の内部文書、担当者へのインタビューを行った。
結果と考察
先進諸国間においてもHIV/AIDSサーベイランスには質的相違があるが、わが国のサーベイランスのシステム上の大きな問題は病変とくにAIDS死亡に関するデータが不足しており、薬剤の客観的な治療効果判定を行うことが不可能である点である。サンフランシスコシの事例研究では、対象の細かな層別化と利用者による経時的な評価とその財政支援への還元の重要性が示され、わが国のシステムに欠けている部分であると考えられた。香港はHIVの流行様式が比較的わが国に似た様相であると判断されて来たが、行動疫学調査の実施状況はわが国と異なり、電話による調査が実施されている点、一般住民対象の大規模調査の中でMSMとそれ以外の男性の比較研究がされている点が異なる。予防対策が一定の効果を上げたと認知されているタイでは、一方で幾つかの個別施策層でのHIV/AIDS感染拡大の懸念が見られ、これまでの大規模公共啓発・教育を中心とした予防対策では対応することが難しい状況が認められ始めている。
結論
主要先進国においてもHIV感染者の届出システムについては十分に機能しているとは言い難い。継続的な血清疫学及び行動サーベイランスデータの蓄積が必要である。カリフォルニア州・香港・タイにおける若者・MSM・薬物使用者・移住者に対するエイズ対策の事例研究の結果、わが国へも応用可能な対策法を抽出した。各分野に共通する提言として、それぞれの対象集団に特化したサービスの提供、当事者参加と専門家の登用、コミュニティや非政府組織の能力構築支援、ヴァルナブル・グループにも行き届くサービスを挙げた。日本における対象集団の特徴、非政府組織の成熟度や政府による資金援助の差異などに留意し、従前よりもきめ細かい経時的評価を伴う日本独自のエイズ対策を立てる必要性がある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
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