HIVの増殖・変異の制御に関する研究

文献情報

文献番号
200500685A
報告書区分
総括
研究課題名
HIVの増殖・変異の制御に関する研究
課題番号
H16-エイズ-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 裕徳(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 増田 貴夫(東京医科歯科大学大学院  医歯学総合研究科免疫治療学分野)
  • 間 陽子(理化学研究所 分子ウイルス学研究ユニット)
  • 森川 裕子(北里大学北里生命科学研究所 ウイルス感染制御学研究室)
  • 岡本  尚(名古屋市立大学 医学研究科)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 高橋 秀宗(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 村上 努(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 駒野 淳(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 櫻木 淳一(大阪大学微生物病研究所 免疫・生体防御研究部門)
  • 久保 嘉直(長崎大学熱帯医学研究所 エイズ感染防御分野)
  • 生田 和良(大阪大学微生物病研究所 ウイルス免疫分野)
  • 西澤 雅子(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 原田 信志(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 服部 俊夫(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 小島 朝人(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 明里 宏文((独)医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 増田 道明(獨協医科大学 微生物学講座)
  • 三隅 将吾(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
後天性免疫不全症候群(エイズ)の原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染は世界中に広がり、日本への感染拡大が危惧される。感染の予防と治療にはワクチンと抗HIV薬を必要とする。しかし、HIVは自然界で容易に変異するため決定的なものは無い。そこで本研究では、HIVの増殖と変異に関する基礎研究を行い、HIV感染の理解と薬剤・ワクチン開発に役立てる。HIVの生活環を系統的に研究する国内唯一の研究班として、HIV感染の基礎研究の充実を目指す。
研究方法
分子遺伝学、細胞生物学、構造生物学の解析手法を用いてHIVの増殖と変異に関与するウイルス因子と宿主因子の構造・機能情報を蓄積する。HIVの複製を(i)吸着・侵入、(ii)脱殻・逆転写・プロウイルス核内輸送と組み込み、(iii)転写、(iv)Gag細胞質輸送・ゲノム二量体化・集合・出芽に分け、各素過程を解析する。変異研究では、(i)逆転写酵素と(ii)ゲノムRNAの構造と機能調節機構を解析する。予防治療法の開発に繋がる情報を収集し、学術論文と学会発表により公開する。調節因子の構造機能情報をもとに、薬剤候補化合物のスクリーニングを行う。
結果と考察
主な研究成果に(a)HIVインテグラーゼの新規機能(HIV逆転写反応の進行)の発見とこれに関わる細胞因子Gemin2の同定(増田貴),(b)HIV Vpr蛋白質の機能発現に関わる細胞因子importin α と14-3-3βの同定(間、増田道)、(c) HIVゲノム転写の阻害因子RNF125の同定(生田)、(d) HIV Gag蛋白質の細胞内輸送・集合・出芽に関わる細胞因子Syntaxinの同定(森川)、(e) 粒子内Gag蛋白質の修飾の発見(三隅)、(f)HIVゲノム二量体化シグナルの同定とゲノム組換えにおける役割の発見(櫻木)、(g)逆転写酵素のアロステリック調節因子ATPの発見(佐藤)、などが挙げられる。また、(h)siRNAライブラリーを用いてHIVの複製を昂進、あるいは抑制する細胞遺伝子を同定し(生田、RNAi社と共同)、(i)薬剤スクリーニングを行うための計算科学環境を整備し(佐藤、岡本)、(j)結晶構造解析(理化学研究所との共同)と (f)サルおよびヒト細胞指向性HIVクローンの構築(足立)を進めた。これらの成果により、HIVの増殖と変異の未知の制御機構の幾つかが明らかになり、新規薬剤開発とその評価系開発を進める科学的基盤が強化された。
結論
HIVの複製・変異調節因子候補を複数特定し、その生理的意義と構造の情報を蓄積することで、薬剤候補化合物のスクリーニングを行なう基礎を作った。

公開日・更新日

公開日
2006-07-03
更新日
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