新作用機序の抗HIV-1薬剤の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500684A
報告書区分
総括
研究課題名
新作用機序の抗HIV-1薬剤の開発に関する研究
課題番号
H16-エイズ-003
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 誠治(熊本大学エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴 伸也(熊本大学エイズ学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、薬剤耐性HIV-1の克服のために重要な病原性因子の一つであるNef蛋白によってエイズ発症に至る分子機序を解明し、その作用点特異的な新たな作用機序を持つ抗HIV-1薬の開発を目指す事を目的としている。
研究方法
1)単球系細胞株TF-1とTF-1-fmsにエストロジェン受容体と融合させたNef蛋白質を発現させた安定細胞株を合成エストロジェン4-HTで活性化を誘導して単球・マクロファージの生物活性へとM-CSF及びGM-CSFを介したシグナル伝達に及ぼす影響をMTT法、フローサイトメトリー、免疫沈降法等を用いて解析した。2)免疫不全マウスにヒト臍帯血由来の単核球または造血幹細胞の移植を行った。構築の有無は、フローサイトメトリーにより解析した。更に作製したマウスにHIV-1の感染実験を行った。
結果と考察
1)Nefの活性化によりマクロファージのM-CSF受容体を介したシグナル伝達系の抑制が認められた。その分子機序としてNefがHckと会合することによりM-CSF受容体の活性化を強く抑制することを証明した。一方、Nefの活性化によりGM-CSF受容体を介した系は増強された。これらの結果を基に、Nefの機能阻害作用を有する物質のスクリーニングを行い、低分子物質ライブラリー等から数種類の候補物質を同定した。2)臍帯血単核球を移植したNOD/Scid/b2micro欠損マウスにおいて、ヒトT細胞の増殖とHIV-1の記憶T細胞への感染が認められた。また、NOD/Scidマウスに臍帯血単核球と腎癌細胞株GHINK-1を同時移植することでヒトNK細胞が特異的に増殖する系を開発した。NOD/Scid/Jak-3欠損マウスにヒト造血幹細胞を移植したところ、T細胞を含めたヒト免疫系細胞の構築が
認められ、更にこのマウスへのHIV-1の感染成立を確認した。
結論
HIV-1 Nef蛋白が、マクロファージの機能を攪乱することによりエイズの病態に関与することを証明した。この結果を基にNef蛋白を標的とした新たなスクリーニング系を開発し、低分子物質ライブラリーから数種類の候補物質を得た。また、ヒトの免疫系を構築しHIV-1が感染するマウスモデルを開発した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-