施設内感染に係る赤痢アメーバ症等の原虫疾患の感染経路及び予防法の開発に関する疫学研究

文献情報

文献番号
200500667A
報告書区分
総括
研究課題名
施設内感染に係る赤痢アメーバ症等の原虫疾患の感染経路及び予防法の開発に関する疫学研究
課題番号
H17-新興-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 勤(慶応義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 野崎 智義(群馬大学大学院医学系研究科 )
  • 牧岡 朝夫(東京慈恵会医科大学)
  • 橘 裕司(東海大学 医学部)
  • 所 正治(金沢大学大学院医学系研究科 )
  • 鈴木 淳(東京都健康安全研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各種施設での腸管寄生原虫の感染経路を明らかにし、感染予防法を確立する。






研究方法
原虫感染調査は糞便検査、特異抗原検出等によった。公衆衛生的介入は衛生教育等によった。感染経路解明は感染者のマッピングと特異抗原検出等によった。非定型E. histolyticaの培養は、E. dispar用のYIGADHA-S培地を改変して行った。持続感染モデルは、CBAマウスとBacteroides fragilisを用いて作成した。150-kDa表面レクチン(Igl)の遺伝子多型を複数株で検討した。蛋白と遺伝子の網羅的解析はそれぞれProteinChip質量分析とDNAマイクロアレイによった。
結果と考察
東京都の新規4施設で調査を行い、大腸アメーバ、ランブル鞭毛虫の感染者等を見い出した。ディロキサニド併用を行った施設では、アメーバ新感染が無い事が確認された。メトロニダゾール単独では感染抑圧できず、ごく少数でも持続感染が残っていれば、短期のうちに感染が同室居住者より再拡大した。独立した遺伝子型の非定型赤痢アメーバのmonoxenic cultureはYIGADHA-S mediumを改変した培地で増殖させる事ができた。CBAマウスにE. histolyticaとB. fragilisを併合投与し、その後もこの細菌を投与する事で1年もの長期間の持続感染モデルが出来た。Igl1、Igl2遺伝子を検索し、HM-1と比較した結果、地理的背景の異なる2グループが存在した。組み替えIgl1をアジュバントを変えて免疫原とし、高度な肝膿瘍形成防御能を得た。ProteinChipによる解析では、HM-1を標準とし、供試株全てで異なるパターンを得た。DNAマイクロアレイによる解析でHM-1培養株と感染株で遺伝子発現に差異を見い出した。
E. histolyticaを含む腸管原虫感染は施設間に差異があるが、糞便から経口感染のルートはできているので、ごく少数でも感染源が残っていれば同室居住者を通して拡大する。この点、ジロキサニドは有用である。非定型性と思われたE. histolyticaの培養や、1年に渡る持続感染モデルは、今後検討が行われるが、有意義であろう。Igl遺伝子の多型性は、他の高感度法とは異なる応用の可能性を示している。ProteinChipとDNAマイクロアレイによる解析法も確立できたので、次年度以降疫学研究に応用されよう。
結論
施設では、常に糞便からの経口感染のルートが存在している事に注意が必要である。持続感染の機構解明を可能とするマウスモデルや新しい多型性解析法等が確立された事は重要と思われる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-06
更新日
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