ポリオ及び麻疹の現状とその予防接種の効果に関する研究

文献情報

文献番号
200500663A
報告書区分
総括
研究課題名
ポリオ及び麻疹の現状とその予防接種の効果に関する研究
課題番号
H15-新興-021
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 達夫(聖マリアンナ医科大学小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 宮村 達男(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 高山 直秀(都立駒込病院小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.ポリオ
 本研究では適切なワクチン戦略を提言、実施することにより我が国でのポリオコントロールを確立し、世界のポリオ根絶に寄与することを目的とする。

2.麻疹
 15年度・16年度に行った麻疹ワクチン累積接種率調査の研究結果を踏まえ、MRワクチン二回目接種の有効性と安全性を確認する。
研究方法
1.ポリオ
 (1)満3歳の定期検診に訪れた小児のポリオワクチン歴を調べ、正確なワクチン接種率を算定し、社会レベルの免疫状態を調査した。
 (2)健康人における年齢別抗ポリオ抗体保有率を調べることにより、社会レベルの免疫状態を調査した。

2.麻疹
(1)6歳または12歳児に麻疹ワクチンを追加接種し、その追加免疫効果を調べる。
(2)6歳または12歳の麻疹ワクチン定期接種済児を対象とし、血中HI抗体、NT抗体およびPA抗体を測定した。
結果と考察
1.ポリオ
 (1)ポリオワクチンの実際の接種率は極めて高く、その傾向はここ3年間変わらなかった。
 (2)健康人や環境中から分離されるポリオウイルスは全てワクチン由来株であった。

2.麻疹
 (1)MR混合ワクチンの副反応調査を数十例行ったが、特別な副反応はみられなかった。
 (2)(2)麻疹ワクチン的接種済6歳児149人及び12歳児101人について抗体測定を実施した。両群間に大きな違いはみられず、抗体陽性率・平均値にも有意差は認められなかった。追加接種対象者としたHI抗体8以下の児は両群ともに全体の約50%を占めていた。これら抗体価の低い層の児に追加接種をしたところ、両群においてHI抗体、PA抗体、NT抗体全てが平均で約8倍上昇し、追加接種の効果が認められた。
結論
1.ポリオ
 世界レベルでは2003・2004・2005年のポリオ患者数はそれぞれ784・1255・1670人とむしろ増加し、さらに一旦ポリオフリーとなったインドネシア等でアフリカ由来野生株の大きな流行が見られている。今後は生ワクチンから不活性ワクチンへの移行が高い摂取率を保ったままスムーズに行われるようなエビデンスを集積し、移行を急ぐ必要がある。

2.麻疹
 麻疹ワクチンは風疹ワクチンとともに1歳に到達した時点で直ちに接種すべきであり、そのことにより麻疹は我が国から排除されよう。これをより有効に行う為に風疹ワクチンを含むMR2種混合ワクチン2回接種法が今後期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200500663B
報告書区分
総合
研究課題名
ポリオ及び麻疹の現状とその予防接種の効果に関する研究
課題番号
H15-新興-021
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 達夫(聖マリアンナ医科大学小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 宮村 達男(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 高山 直秀(都立駒込病院小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.ポリオ
 世界のポリオ根絶計画を見据え、ワクチンによる我が国のポリオコントロール体制を確立する。予防接種の効果を判断するために社会の免疫状態を知ると共にポリオウイルスの動態を知る。
2.麻疹
麻疹・風疹ワクチン2種混合(MRワクチン)の効果的接種方法の確立及びMRワクチン二回目接種の有効性と安全性の確認をする。更に総まとめとして麻疹ワクチンの摂取率を調査する。
研究方法
1.ポリオ
 (1)2003年5月~12月までの間に健常人200人を目安として検体を採取し、血清中のポリオウイルス型中和抗体価を年齢別に測定して免疫状態を調査した。
 (2)ポリオ疑似例患者及び偶発的にヒト、環境中から分離されたウイルスの性状や遺伝子を解析し、ポリオウイルスの動態を調べた。
2.麻疹
(1)1歳時に麻疹ワクチンと風疹ワクチンの接種を受けた6歳児を対象にMRワクチンの接種を行い、有効性と安全性について検討した。
(2)6歳及び12歳の麻疹ワクチン定期接種済児を対象とし、血中HI抗体、NT抗体およびPA抗体を測定した。
結果と考察
1.ポリオ
 (1)1型および2型に対する中和抗体保有率は、OPV接種直後の年齢層で98%以上と高く、高いワクチン接種率を反映していると考えられた。
 (2)平成14年~15年にはポリオウイルスが非ポリオ患者、健康人から分離された。分離されたウイルスはいずれもワクチン株であったが、ウイルスの由来は必ずしも明らかではない。
2.麻疹
 (1)MR混合ワクチンの副反応調査を数十例行ったが、特別な副反応はみられなかった。
 (2)麻疹ワクチン的接種済6歳児及び12歳児約250人の抗体測定を実施した。両群間に大きな違いはみられず、抗体陽性率・平均値にも有意差は認められなかった。追加接種対象者としたHI抗体8以下の児は両群ともに全体の約50%を占めていた。これら抗体価の低い層の児に追加接種をしたところ、両群においてHI抗体、PA抗体、NT抗体全てが平均で約8倍上昇した。
結論
1.ポリオ
 現在のポリオ生ワクチンの高い摂取率を保ちつつ、かつポリオ根絶を図るためには我が国においても早急に不活性ポリオワクチンが採用されるべきである。
2.麻疹
 報告される麻疹患者数は減少しているが、ワクチン未接種者に接種を勧奨するだけではなく、接種証明書の提出を求める方法は接種率向上に有用であり、今後広く採用する価値があると考えられる。
 また、早い時期(6歳)での追加接種はprimary vaccine failureを救い、麻疹根絶への大きな力になると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500663C

成果

専門的・学術的観点からの成果
<1.ポリオ>
 ポリオの抗体価が高値に維持されているところから、現行のポリオ予防接種法は妥当な行政手段である。

<2.麻疹>
 現行の麻疹抗体測定法はどの方法を選択するのが妥当であるかの検討が加えられた。
臨床的観点からの成果
<1.ポリオ>
 現在日本には野外ポリオウイルスは存在せず、全てワクチン型のポリオであることが判明した。この現状をみてポリオワクチンの存続は必要であるが、ワクチン由来の麻痺もみられることから不活性ワクチンの出現が期待される。

<2.麻疹>
麻疹患者、麻疹ワクチン摂取率及び接種後の抗体価の上昇を考慮すれば、現行の麻疹ワクチン行政は変更する必要があると考えられる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本研究の成果により麻疹ワクチンは2006年度より2回接種法と改訂され、日本からの麻疹根絶が期待される。
 また、不活性ポリオワクチンの治験が開始されるに至った。この際接種時期を勘案して、DPT3混ワクチンと混合した4種混合ワクチンとして開発が進められる。
その他のインパクト
厚生省における予防接種に関する検討会での議論に本研究の成果を組み入れた結果、新聞各紙及びテレビ等で数回麻疹ワクチン行政に関して話題に取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
高山直秀、崎山弘、宮村達男 他
麻疹ワクチン及びポリオ生ワクチン累積接種率全国調査結果
感染症学雑誌 , 79 (1) , 7-12  (2005)
原著論文2
清水博之、吉田弘、宮村達男
野生株ポリオウイルスの実験室封じ込めに関するWHO世界的行動計画(第2版)
ウイルス , 55 (1) , 161-178  (2005)
原著論文3
高山直秀、崎山弘
各市区町村における麻疹ワクチン累積接種率調査結果
小児科臨床 , 58 (2) , 215-220  (2005)
原著論文4
高山直秀、松永貞一、三輪操子 他
受診者における麻疹ワクチン累積接種率調査の有用性
日本小児科学会雑誌 , 108 (12) , 1458-1460  (2004)
原著論文5
崎山弘、梅本哲、高山直秀
全国調査によって求めたわが国の麻疹ワクチン累積接種率
日本醫亊新報 ,  (4150) , 26-29  (2003)
原著論文6
高山直秀
当院における22年間の麻疹入院患者年齢分布の変遷
感染症学雑誌 , 77 (7) , 488-492  (2003)
原著論文7
高山直秀、菅沼明彦
成人麻疹入院患者の臨床的検討 小児麻疹入院患者と比較して
感染症学雑誌 , 77 (10) , 815-821  (2003)
原著論文8
Huang QS, Greening G, Baker MG et al.
Persistence of oral polio vaccine virus after its removal from the immunisation schedule in New Zealand.
Lancet , 366 (9483) , 394-396  (2005)
原著論文9
Arita M, Shimizu H, Nagata N et al.
Temperature-sensitive mutants of enterovirus 71 show attenuation in cynomolgus monkeys.
The Journal of general virology , 86 (5) , 1391-1401  (2005)
原著論文10
Yang CF, Chen HY, Jorba J et al.
Intratypic recombination among lineages of type 1 vaccine-derived poliovirus emerging during chronic infection of an immunodeficient patient.
Journal of Virology , 79 (20) , 12623-12634  (2005)
原著論文11
Shimizu H, Thorley B, Paladin FJ et al.
Circulation of type 1 vaccine-derived poliovirus in the Philippines in 2001.
Journal of Virology , 78 (24) , 13512-13521  (2004)
原著論文12
Arita M, Shimizu H, Miyamura T.
Characterization of in vitro and in vivo phenotypes of poliovirus type 1 mutants with reduced viral protein synthesis activity.
The Journal of general virology , 85 (7) , 1933-1944  (2004)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-