クリプトスポリジウム等による水系感染症に係わる健康リスク評価及び管理に関する研究(クリプトスポリジウム症等感染リスクの評価手法の確立に関する研究)

文献情報

文献番号
200500659A
報告書区分
総括
研究課題名
クリプトスポリジウム等による水系感染症に係わる健康リスク評価及び管理に関する研究(クリプトスポリジウム症等感染リスクの評価手法の確立に関する研究)
課題番号
H15-新興-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
国包 章一(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 井関 基弘(金沢大学大学院 医学研究科)
  • 遠藤 卓郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 大村 達夫(東北大学大学院 工学研究科)
  • 片山 浩之(東京大学大学院 工学系研究科)
  • 金子 光美(立命館大学 理工学部)
  • 黒木 俊郎(神奈川県立衛生研究所 微生物部)
  • 平田 強(麻布大学 環境保健学部)
  • 眞柄 泰基(北海道大学 創成科学研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 水道水のクリプトスポリジウム(以下クリプト)、ジアルジアによる汚染の感染リスク評価に関して、汚染源からヒトの感染に至るまでの全ルートを、本研究で設定したフィールドを対象として総合的な観点から実証的に検討する。
研究方法
 ヒト等から分離したクリプトのsubgenotypeの解析を行った。また、水道水源周辺環境等に生息するヘビ類のクリプトの保有状況につき調査した。一方、相模川水系における本川、支川、雨水排水吐き口等及び高城川底泥のクリプト汚染状況につき調査した。また、利根川並びにその支川である小山川のクリプト、ジアルジアの日内の濃度変動を評価した。小山川については、河川水中のクリプト、ジアルジア濃度を予測するため、その流域の降水量のデータを用いて土地利用にもとづいた濁度解析モデルの構築を行い、検討した。クリプト症の集団感染における前兆現象を把握するため、原水中の病原体の存在とその濃度を推定した。さらに、昨年度に実測で得られたクリプトの濃度から濃度分布を推定し、それを元にリスク評価を行った。
結果と考察
 クリプトの遺伝子型及びsubgenotypeは、国内で分離された患者由来のC.hominis3株がIa、Ib、Ie、C.parvum bovine genotype(ヒト由来2株、ウシ由来3株)がすべてⅡaに分類された。水道水源周辺で生息するヤマカガシ、シマヘビ、アオダイショウ等ヘビ類のうち、ヤマカガシのみがクリプトを保有していた。相模川水系においては、支川の小鮎川、中津川のクリプト汚染レベルが高かった。高城川の底泥には、クリプトが高濃度で存在することが明らかとなった。利根川及び小山川の日内のクリプト、ジアルジア濃度は、小山川の濃度変動が大きかった。小山川の濁度解析モデルを開発し、高橋地点の濁度の実測値をおおむね再現することができた。3つの大規模な集団感染事例より算出した前兆期のクリプト濃度は、飲用水を1Lと仮定した場合、浄水において0.01ないし0.02個/L程度であった。昨年度に実測して得られた河川水中のクリプトの濃度から、リスク評価に必要な濃度分布を推定することができた。
結論
 クリプト、ジアルジア分離株について、subgenotypeのレベルまで解析すれば、感染源・汚染源の特定及びヒトへの感染性についてより有益な情報が得られることがわかった。また、河川の底泥にもクリプトが高濃度で存在することが明らかとなった。さらに、水道におけるクリプトの大規模な集団感染を回避するためには、集団感染に先行する持続的な汚染、あるいはそれに伴う散発的な患者を如何に捉えるかが重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-19
更新日
-

文献情報

文献番号
200500659B
報告書区分
総合
研究課題名
クリプトスポリジウム等による水系感染症に係わる健康リスク評価及び管理に関する研究(クリプトスポリジウム症等感染リスクの評価手法の確立に関する研究)
課題番号
H15-新興-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
国包 章一(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 井関 基弘(金沢大学大学院 医学研究科)
  • 遠藤 卓郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 大村 達夫(東北大学大学院 工学研究科)
  • 片山 浩之(東京大学大学院 工学系研究科)
  • 金子 光美(立命館大学 理工学部)
  • 黒木 俊郎(神奈川県立衛生研究所 微生物部 )
  • 平田 強(麻布大学 環境保健学部)
  • 眞柄 泰基(北海道大学 創成科学研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 水道水のクリプトスポリジウム(以下クリプト)、ジアルジアによる汚染の感染リスク評価に関して、汚染源からヒトの感染に至るまでの全ルートを、本研究で設定したフィールドを対象として総合的な観点から実証的に検討する。
研究方法
 ヒトにおけるクリプト、ジアルジアの感染実態及び分離株の遺伝子解析を行った。また、各種動物の保有状況について調査した。ヒトの分離株については一部subgenotypeの解析を行った。一方、クリプトの種および遺伝子型を簡便に特定する手法を検討した。また、利根川並びにその支流である小山川のクリプト、ジアルジアの日内の濃度変動を評価した。クリプト症の集団感染における前兆現象を把握するため、原水中の病原体の存在とその濃度を推定した。さらに、河川水の実測で得られたクリプトの濃度から濃度分布を推定し、それを元にリスク評価を行った。
結果と考察
 金沢市内の小児下痢患者を中心に下痢便153検体の糞便検査を実施し、1例からクリプトが検出された。クリプトの遺伝子型及びsubgenotypeは、国内で分離された患者由来のC.hominis3株がIa、Ib、Ie、C.parvum bovine genotype(ヒト由来2株、ウシ由来3株)がすべてⅡaに分類された。クリプトの種および遺伝子型を簡便に特定するDGGE法、RTPCR-ダイレクトシーケンス法を開発した。水道水源周辺等で生息する哺乳類(27種511頭)、鳥類(15種33科85種444検体)、爬虫類(19種538検体)のクリプトの保有状況は、哺乳類のみならず、爬虫類や鳥類からクリプトが検出され、この中には人獣共通感染症の原因となる種が含まれていた。利根川並びにその支川である小山川のクリプト、ジアルジアの日内濃度は最大で10倍以上バラツキを持ち、小山川の変動が大きかった。3つの大規模な集団感染事例より算出した前兆期のクリプト濃度は、飲用水を1Lと仮定した場合、浄水において0.01ないし0.02個/L程度であった。昨年度に実測して得られた河川水中のクリプトの濃度から、リスク評価に必要な濃度分布を推定することができた。
結論
 クリプトスポリジウムの汚染源として、ヒトや身近な動物が極めて重要であることがわかった。また、水道水源河川におけるクリプトスポリジウム、ジアルジアの濃度レベルは、降雨の他、畜舎や生活排水からの負荷により大きく変動することが示された。さらに、クリプトスポリジウムの感染リスクを評価するにあたっては、種や遺伝子型を考慮して評価することが重要であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500659C

成果

専門的・学術的観点からの成果
クリプトスポリジウムの汚染源として、ヒトや身近な動物が極めて重要であることがわかった。また、水道水源河川におけるクリプトスポリジウム、ジアルジアの濃度レベルは、降雨の他、畜舎や下水処理場等生活排水処理施設からの負荷により大きく変動することが示された。さらに、クリプトスポリジウムの感染リスクを評価するにあたっては、種や遺伝子型を考慮して評価することが重要であることが明らかとなった。
臨床的観点からの成果
 2004年長野県内スポーツ施設の集団感染で発症した患者から分離した原虫は、Cryptosporidium parvum ヒト型であった。この集団感染事例も含め、国内における集団感染及び散発事例は、すべてC. parvum ヒト型であることが明らかとなった。また、ヒトから分離したジアルジア17株は、14株が人畜共通感染性のAssemblage A-I、2株がヒトのみに感染するとされるAssemblage A-II であり、4株が人畜共通感染性の Assemblage B であった。
ガイドライン等の開発
 厚生労働省では、平成8年に策定されてその後一部見直しが行われた「水道水中のクリプトスポリジウム暫定対策指針」の全面的な見直しを行って、新たに「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」(案)を策定しており、近日中に開かれる厚生科学審議会生活環境水道部会において新指針(案)が審議される予定である。この見直しと新指針(案)の策定にあたって、本研究の成果が重要な参考資料として活用されている。
その他行政的観点からの成果
(1) 厚生科学審議会生活環境水道部会の参考資料として活用された。
(2)水道水に起因するクリプトスポリジウム症の発生に関して、より正確なリスク評価が可能となった。
(3) クリプトスポリジウムの集団感染対策、汚染防止等に向けた監視体制の確立・整備に貢献することができた。
(4) クリプトスポリジウム種や遺伝子型を特定する簡便な試験法を提案した。
その他のインパクト
 クリプトポリジウムの種および遺伝子型を簡便に特定するDGGE法、RTPCR-ダイレクトシーケンス法を開発した。水道水源河川水、下水のクリプトポリジウム種や遺伝子型を弁別したのは我が国では初めてであり、クリプトポリジウム種や遺伝子型を考慮した感染リスク評価が可能となった。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
23件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-