輸入動物に由来する新興感染症侵入防止対策に対する研究

文献情報

文献番号
200500655A
報告書区分
総括
研究課題名
輸入動物に由来する新興感染症侵入防止対策に対する研究
課題番号
H15-新興-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 泰弘(国立大学法人東京大学 大学院農学生命科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 本藤 良(日本獣医畜産大学 獣医公衆衛生学)
  • 太田 周司(厚生労働省 東京検疫所川崎支所)
  • 内田 幸憲(厚生労働省 神戸検疫所)
  • 宇根 ユミ(麻布大学 獣医学部)
  • 森川 茂(国立感染症研究所 外来ウイルス室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各国とも感染症防疫体制の確立に努力しているがSARSの世界的流行、高病原性鳥インフルエンザのアジア、欧州、アフリカでの流行が報告され動物由来感染症の防疫対応の難しさが明らかにされた。日本は感染症法見直しにより、動物由来感染症への対応は法的に大きく改善された。本研究班では輸入動物由来感染症のリスク評価、国内のトレーサビリティ制、危機管理対応などについて専門研究者間で基礎研究と行政研究を進め総括的提言を行うことを目的とする。
研究方法
感染症法見直しにあたり輸入動物由来感染症のリスク評価、輸入届出制度に関し輸入業者の協力を得て届出制以前の健康証明書等の分析を進めた。また輸入野生齧歯類について病原体汚染状況を調査、港湾労働者に関する疫学調査を行った。危機管理対応としてウイルス出血熱の組換え抗原を用い診断系を確立し、霊長類、翼手目の感染症に関する研究を進めた。
結果と考察
輸入齧歯類では寄生虫とレプトスピラ汚染が高頻度にみられた。輸入業者のレプトスピラ感染と原因動物の同定、動物園における結核事例についての情報提供を行った。関西、関東の港湾労働者に関する疫学調査を行い、約4,000名の血清調査の結果11名がHFRS抗体陽性であることを確認した。ウイルス出血熱の組換え抗原を用いエボラ出血熱、マールブルグ病、クリミアコンゴ出血熱、ラッサ熱について診断系を確立。フィリピン、タイと共同研究により100頭以上のオオコウモリ、小型コウモリの血清・組織を採取し、コウモリ抗血清を用いたELISA法による抗体検出方法を確立。抗体によるHSVとBウイルスの鑑別診断法を確立し、集団飼育チンパンジーの抗体分析を進めた。
結論
輸入動物の汚染状況を把握し科学的根拠に基づく動物由来感染症対策に貢献した。特に輸入野生齧歯類の研究成果から、高頻度にレプトスピラ等を保有していることを報告したが、輸入動物業者への感染事例と病原体の同定を行い、輸入動物の危険性と届出制の必要性を提示した。これまでのトレーサビリティ研究で収集したデータと届出後のデ―タを比較し輸入届出制の有効性を評価することが可能となった。ハイリスク者としての港湾労働者に関する疫学調査を行いHFRS等のリスクが比較的少ないことを明らかに出来た。霊長目、翼手目に関する疫学調査、診断系の確立、およびウイルス出血熱研究では動物由来輸入感染症に対するサーベイランスと危機管理対応への基盤技術が開発された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200500655B
報告書区分
総合
研究課題名
輸入動物に由来する新興感染症侵入防止対策に対する研究
課題番号
H15-新興-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 泰弘(国立大学法人東京大学 大学院農学生命科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 本藤 良(日本獣医畜産大学 獣医公衆衛生)
  • 太田 周司(厚生労働省 東京検疫所川崎支所)
  • 内田 幸憲(厚生労働省 神戸検疫所)
  • 宇根 ユミ(麻布大学 獣医学部)
  • 森川 茂(国立感染症研究所 外来ウイルス室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸入動物由来感染症の侵入防止のための研究を推進し、成果を①リスク管理機関に提言。②リスク管理機関が措置をとるための科学的エビデンスを収集し公開。③情報を公開することでリスクコミュニケーションを果たすことを目的とした。
研究方法
行政的研究では輸入動物の実態と健康証明書の分析、国内のトレーサビリティ方法の検討を進め、ハイリスク者の疫学調査をした。基盤研究では高リスク動物の研究を進め、危機管理対応としてウイルス出血熱の診断法を確立した。
結果と考察
行政的貢献:感染症法見直しに当たり輸入動物感染症のリスク評価法を確立。輸入届出制度に関し実績に基づく動物の学名、英名、和名リスト作成。3年間継続し輸入野生齧歯類の病原体汚染状況を調査。寄生虫とレプトスピラ汚染が高頻度。
危機管理と危害情報の報告:輸入動物のトレーサビリティー法を開発し、販売路を調査。輸入業者のレプトスピラ感染と原因動物の同定、動物園での結核感染事例等の情報提供。関西・関東の港湾労働者約4,000名の疫学調査の結果11名がHFRS抗体陽性。
基盤研究:霊長類、齧歯類、翼手類の研究を継続。霊長類ではBウイルスの潜伏動態、血清抗体を用いたBウイルスとHSVの鑑別診断法を確立しチンパンジーを対象に分析。輸入野生齧歯類の寄生虫、細菌、ウイルスの汚染状況を調査。翼手類では海外と共同研究を進め、分布、生理特性、免疫機能、抗体測定法の開発。ウイルス性出血熱研究ではエボラ、マールブルグ、ラッサ、クリミアコンゴ、LCM、HFRSウイルスの血清診断法を開発。
リスクコミュニケーション:厚生省研修会、市民講座、NHK等で動物由来感染症について解説。獣医学会、獣医師会、公衆衛生学会、感染症学会、国際学会等で講演。
結論
輸入動物・侵入動物由来の感染症調査を進めると共に、危機管理対応のためトレーサビリティについて研究した。届出制に必要な動物区分コード作成、衛生証明書の評価を進めた。齧歯類由来感染症については港湾労働者などの疫学調査を完結した。輸入齧歯類について汚染病原体の解析を進め、ウイルス性出血熱については危機管理対応のための診断技術開発を進めた。サル類のBウイルス、エルシニア感染、爬虫類の感染についても調査した。輸入禁止の翼手類は動物園由来個体の繁殖を試みるとともに、フィリピン、タイ国との共同研究を始めた。これらの研究を通じ輸入動物に由来する感染症の防御対策を検討した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500655C