ハエ以外の衛生害虫とO157伝播に関する基礎研究

文献情報

文献番号
199700063A
報告書区分
総括
研究課題名
ハエ以外の衛生害虫とO157伝播に関する基礎研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
安居院 宣昭(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当該研究事業は3年計画で、ハエ類と同様に、ヒト生活圏の汚染環境に生息する代表的な衛生昆虫であるゴキブリに関して、O157保菌・伝播能力に対する実験的確認および現地捕集したゴキブリ類のO157保有実態調査等を実施し、O157感染症とゴキブリとの関係を明らかにし、O157の感染源・感染経路の解明の一助とすることを目的とする。
研究方法
研究計画実施の第1年次は、ゴキブリ類の病原体保有・伝播に関する情報について、文献検索を実施し、データーベースを作成した。作成したデーターベースをもとに、ゴキブリ種別に分離・確認された病原体一覧表を作成した。さらに、O157分離・ 検出方法等についても検討した。また、日本における主要なゴキブリについての特徴とその駆除対策に関して、簡潔にまとめた。
結果と考察
ゴキブリから分離された病原体:調査した関連文献の延べ数は54報におよんだ。主要なゴキブリ5種からの分離が記録された微生物の種類は、細菌類:34属83種、真菌類:13属10種の多きに及んだ。病院施設、一般住宅、給食施設、大学施設等の都市環境にある施設内で捕獲したゴキブリから,赤痢菌、チフス菌、MRSA,サルモネラ菌、多剤耐性緑濃菌等の多くの問題とすべき病原体の分離が報告されていた。これは、ゴキブリが薬剤耐性菌のばらまき役として、院内感染の原因の一端を担う可能性を示唆している。また,サルモネラ菌やビブリオ菌を保有するゴキブリの報告は、ゴキブリが食材細菌汚染への関与を端的に示すこととして,注目が必要である。
ゴキブリからの病原体の分離法・接種法:ゴキブリからの菌の分離は,虫体全体の磨砕物,体表、脚、消化管、排泄物等,いろいろの検体を対象としている。そこで、今後の研究実施に際しては、ゴキブリの虫体サイズがハエより大きいことを考慮すると、チャバネゴキブリ等からのO157検出に際しては,脚等の体の一部分からの分離法の検討が必要であろう。ゴキブリに対する病原体感染実験情報では,経口摂食,体腔内注射等が一般的方法であり,これらの方法によって様々な病原体を実験的に接種し,ゴキブリの菌保有・伝播能力を確認している。今後,実施が予定される,O157等のゴキブリへの基礎感染実験に際しては,これら豊富な情報は非常に有効である。
駆除対策:ヒトの生活圏で最も身近に生息するゴキブリは,薬剤抵抗性の発達や,殺虫剤利用率の減少等で,難防除となっている。日本における主要なゴキブリ種の特徴および駆除対策の資料添付により、当該研究推進の一助とした。
結論
文献情報等による調査・解析研究から,ゴキブリは問題となる多種の病原体に汚染されており、それら病原体の伝播媒体として機能しうる可能性があることがうかがわれた。したがって、ゴキブリがヒトの居住空間においては、ハエ以上に緊密であり、防除が困難な衛生昆虫であることから、O157の伝播に対するゴキブリの役割に関して明確にする調査研究は,O157感染症全体の実態解明のためにも重要である。

公開日・更新日

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更新日
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研究報告書(紙媒体)