SARSコロナウイルスに対するワクチン開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500639A
報告書区分
総括
研究課題名
SARSコロナウイルスに対するワクチン開発に関する研究
課題番号
H16-新興-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田口 文広(国立感染症研究所ウイルス第3部)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 恭子(国立感染症研究所免疫部)
  • 岡田 全司(国立療養所近畿中央病院臨床研究センター)
  • 石井 孝司(国立感染症研究所ウイルス第2部)
  • 黒澤 良和(藤田保健衛生大学総合医科学研究所)
  • 山本 典生(東京医科歯科大ウイルス制御学)
  • 山田 靖子(国立感染症研究所動物管理室)
  • 宝達 勉(北里大学獣医畜産学部)
  • 池田 秀利(動物衛生研究所感染病研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、コロナウイルス(SARS-CoV)による致死率の極めて高い新興感染症であるが、予防治療法は確立されていない。本研究の目的は、 SARSの病態を把握し、SARSに対する有効で安全なワクチン及び抗ウイルス剤の開発のための基礎的研究である。
研究方法
SARS-CoVとしてHKU39849とFrankfurt-1株を用い、増殖、力価測定はVeroE6細胞で行った。SARS-CoV各遺伝子をクローニングし、各種発現ベクターに挿入した。また、SARS-CoV遺伝子を含む組み換えワクシニアウイルスDIsを作成した。免疫及び感染実験にはBALB/c、C57Bl又はSCID-PBL/huマウスを用いた。また、SARS-CoV受容体ACE2遺伝子分離にはフェレットを用いた。動物コロナウイルスとして、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)と豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)を用いた。
結果と考察
SARS-CoVの増殖は弱病原性細菌との混合感染によりマウス体内で著しく上昇した。マウスを用いた不活化ワクチン、DNAワクチン、組み換えワクチン研究では、SARS-CoVに対する細胞性及び液性免疫が惹起され、マウス体内のウイルス増殖を抑える抵抗性を賦与できたワクチンもあった。また、マウス体内での抗SARS活性を示す抗SARS剤も発見された。フェレットのACE2がヒトACE2と同様の高い受容体活性を示すことが明らかとなった。SARSの病態研究のモデルとして、FIPV感染によるリンパ球減少症とアポトーシスの関連、TGEVとその受容体の相互作用に関する研究等が展開された。本年度は、 SARSワクチン開発に向けて期待できる結果が得られ、重症化肺炎の動物モデルも立ち上がりつつあり、安全で有効なワクチン、抗ウイルス剤の開発に貢献できたと考えられる。
結論
本研究ではマウスを用いたSARS重症化の解析が進み、この系を用いて、これまで開発された不活化ワクチン、DNAワクチン、組み換えワクチン及び抗SARS薬の有効性と安全性が検討できる段階に到達しつつあると考えられる。また、フェレットの動物モデルとしての有用性、動物コロナウイルスの基礎的な研究からSARS病態発生に関する貴重な情報が得られている。今後、これらの総合的な研究により、SARSの予防、治療薬開発の進展が期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-26
更新日
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