国内の患者症例報告に基づく動物由来感染症の実態把握及び今後の患者症例報告収集と検索システムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500638A
報告書区分
総括
研究課題名
国内の患者症例報告に基づく動物由来感染症の実態把握及び今後の患者症例報告収集と検索システムの開発に関する研究
課題番号
H16-新興-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
高山 直秀(東京都立駒込病院小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 丸山総一(日本大学生物資源科学部)
  • 福士秀人(岐阜大学応用生物科学部)
  • 赤尾信明(東京医科歯科大学大学院国際寄生虫病学分野)
  • 川島龍一(神戸市医師会)
  • 唐澤祥人(東京都医師会)
  • 内田幸憲(厚生労働省神戸検疫所)
  • 大西健児(東京都立墨東病院感染症科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では動物由来感染症の実態把握が不十分で,検査体制の確立も後れているため,わが国においてこれまで発表された動物由来感染症の症例を可能な限り多数例収集して動物由来感染症の実態を明らかにし,そのデータを診療現場の医師や獣医師に提供して動物由来感染症の診断に利用可能とし,動物由来感染症を疑う場合には必要な検査を容易に実施できる体制の確立を目指す。
研究方法
1)文献データベースを利用して,1995年から2004年の間に公表された動物由来感染症の症例報告を39疾患をキーワードとして検索し,検出された症例報告について,患者年齢,性別,主訴,検査法,治療,予後,発生地などを調査した。2)昨年度の調査・研究から動物由来感染症関連の検査は依頼困難であることが診療上の問題点と指摘されたため,また濾紙に採取した血液による抗体検査が可能と判明したため,医師会会員有志の協力を得て,臨床現場で濾紙採血検査法の有用性を検討した。
結果と考察
1)上記期間に1件以上の症例報告が掲載された疾患は24疾患であり,疾患別では猫ひっかき病が64件,症例数95例で最も多く,つつが虫病が41件,57症例,エルシニア症が38件,58例,糞線虫症が35件,38症例と続いた。猫ひっかき病,パスツレラ症,トキソプラズマ症では女性患者が多く,E型肝炎,レプトスピラ症では男性患者が多かった。猫ひっかき病の発生は寒冷地で少なかった。先天性トキソプラズマ症患者の中に妊娠中の獣肉生食が原因と考えられる例があった。2)濾紙採血検体を用いた抗体検査では,トキソカラ症に関しては医療現場から29検体が送付され,うち1例が陽性であった。トキソプラズマ症では送付された30検体中1例が陽性,猫ひっかき病では41検体中11例が陽性,オウム病では14検体中5例が陽性であった。
結論
文献検索により抽出した症例報告から動物由来感染症の発生動向を知るという手法には,症例の一部しか把握できないという欠陥はあるが,通常の発生動向調査では得られない感染経路,診断法などに関する情報も入手でき,得られた情報を診療現場に還元すれば動物由来感染症診療上の助けとなる。また,濾紙採血検体による抗体検査はまだ十分な検体数が集まっていないため評価はできないが,本検査法の普及によって動物由来感染症の診断が容易になり,早期診断・治療が可能になるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-28
更新日
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