輸入真菌症等真菌症の診断・治療法の開発と発生動向調査に関する研究

文献情報

文献番号
200500636A
報告書区分
総括
研究課題名
輸入真菌症等真菌症の診断・治療法の開発と発生動向調査に関する研究
課題番号
H16-新興-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
上原 至雅(国立感染症研究所生物活性物質部)
研究分担者(所属機関)
  • 亀井 克彦(千葉大学真菌医学研究センター)
  • 菊池 賢(順天堂大学医学部感染制御科学講座)
  • 槇村 浩一(帝京大学医真菌研究センター)
  • 渋谷和俊(東邦大学医学部病院病理学講座)
  • 上 昌広(東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門)
  • 杉田 隆(明治薬科大学微生物学教室)
  • 鈴木 和男(国立感染症研究所生物活性物質部)
  • 新見 昌一(国立感染症研究所生物活性物質部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸入真菌症並びに深在性真菌症の国内発生状況を調査し、輸入真菌症起因菌の迅速遺伝子診断法の開発を行うことを目的とした。また真菌の病原性の解明と新規抗真菌薬の開発をめざした基礎研究を行った。
研究方法
輸入真菌症の国内発生状況は報告症例の検索および主治医への問い合わせにより調査した。深在性真菌症は都内3病院における720人の病歴・剖検記録を調査し、国内17施設で分離した真菌血症由来酵母353株の生化学的、遺伝子学的同定を行った。輸入真菌症遺伝子診断法については、コクシジオイデス症病原体検出用プライマーを用いたPCR検出系を、Histoplasma capsulatumについてはTaqMan probeを用いたreal time PCR検出系をそれぞれ開発した。
結果と考察
輸入真菌症の中で、コクシジオイデス症およびヒストプラスマ症が増加を続けている。特にコクシジオイデス症の増加が著しく実態調査を開始して以来最多の患者数を示した。またヒストプラスマ症の国内発生の有無を調査するため、結核菌陰性でありながら臨床的に結核と診断された患者の血清を調べた所、ヒストプラスマ抗体陽性が検出された。従って今後も調査を継続する必要がある。悪性腫瘍患者剖検例の35%が深在性真菌症の病理像を呈し、なかでもアスペルギルス症が増加していた。真菌血症由来酵母分離株の大半はCandida属菌であった。迅速遺伝子診断法に関しては、特異性の高いコクシジオイデス症病原体検出系を開発し、C. immitisとC. posadasiiを容易に区別することができた。H. capsulatumについてはreal time PCRで定量限界10 copyの検出系を開発し、実際の臨床材料を用いた検出が期待できる。病理・細胞診検体中に真菌遺伝子の存在を証明するためにFISH法を用いた基礎的検討を行い、応用の可能性が示唆された。真菌由来糖たんぱく質による血管炎には、サイトカインと連動した活性化好中球の活性酸素が血管傷害を起こすことが示唆され、C. glabrataの薬剤排出ポンプのアミノ酸変異と輸送能の関連を明らかにした。
結論
輸入真菌症並びに深在性真菌症の発生状況を今後さらに注意深く調査する必要がある。コクシジオイデス症およびヒストプラスマ症の迅速遺伝子診断法の実用化が期待できる。また真菌の病原性の解明と新規抗真菌薬の開発をめざした基礎研究も進展した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-28
更新日
-