内耳性難聴に対する細胞移植システムの構築

文献情報

文献番号
200501367A
報告書区分
総括
研究課題名
内耳性難聴に対する細胞移植システムの構築
課題番号
H16-感覚器-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小川 郁(慶應義塾大学 医学部耳鼻咽喉科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 梅澤明弘(国立成育医療センター)
  • 神崎晶(慶應義塾大学 医学部耳鼻咽喉科学教室 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
23,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内耳性難聴は難治性であり人口の5%以上が内耳性難聴のためのコミュニケーション障害に悩んでいる。内耳機能の再生、維持は国民の健康、医療、福祉の向上、政策医療の観点からも急務であり、欠くことの出来ない問題となっている。
実験動物において、間葉系幹細胞から分化させた内耳幹細胞を投与し、細胞の着床を含めたnetworkの形成と内耳の機能再生について検討する。
研究方法
1)内耳のドラッグデリバリーシステムの開発
2)内耳性難聴モデルマウスに対する細胞治療の供給源としてのヒト骨髄間葉系細胞の調整とプロファイリングを行う。
3)内耳への間葉系幹細胞移植 
動物難聴モデルに対する骨髄幹(KUSA-A1細胞)の内耳蝸牛へ直接投与を行う。
結果と考察
1)急性音響障害モデル動物においてNF-kB(転写因子)と下流にあるサイトカインの発現を認めた。特にIL-6は細胞移植や内耳再生を阻害する可能性があり、移植細胞をとりまく環境への対応を検討する必要がある。
2)内耳有毛細胞増殖に関する検討 p27ノックアウトマウスでは有毛細胞や支持細胞が増殖しているにも関わらず、難聴であることが判明した。
3)内耳内リンパ腔に投与では聴覚機能が低下するが、外リンパ腔経由した投与は聴力の変化は少なかった。内耳機能保持の課題を残している。また外リンパ腔経由で内視鏡を用いた投与法を開発中である。
4)急性音響障害モデルや薬剤性難聴モデルに対して、間葉系細胞から神経幹細胞に分化させた細胞を移植した。1週間では移植細胞塊を認めたものの、3ヶ月では間葉系細胞から神経幹細胞に分化しているはずの細胞が骨細胞に変化しているものもあった。
結論
1)間葉系幹細胞を適切な内耳細胞に分化させるために、内耳環境の重要性を示した。内耳再生を阻害因子の同定ならびに阻害因子を抑制させて細胞環境の整備に関して検討を行う必要がある。
2)内耳有毛細胞再生において細胞増殖の誘導は重要であるが、増殖だけでは機能回復が可能にならない。
3)実験動物の内耳有毛細胞が存在する内リンパ腔に細胞を投与するアプローチを我々は開発している。内耳に対するアプローチの検討から、機能面から外リンパ腔経由が好ましいが、標的細胞によっては機能をある程度犠牲にして内リンパ腔に投与せざるを得ないことが考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
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