3Dサウンドを利用した視覚障害者のための聴覚空間認知訓練システム

文献情報

文献番号
200500620A
報告書区分
総括
研究課題名
3Dサウンドを利用した視覚障害者のための聴覚空間認知訓練システム
課題番号
H15-感覚器-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
関 喜一(独立行政法人産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 哲司(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本応募テーマでは、視覚障害教育・リハビリテーションにおける、聴覚空間認知、即ち、光ではなく音を手がかりに自動車や建造物などの物体の存在を知る技能を獲得させるための訓練システムを3Dサウンド技術を用いて開発することを目的とする。
研究方法
研究分担として、主任研究者 関喜一 は音響システムの技術面の構築を担当する。研究分担者 佐藤哲司 は聴覚空間認知訓練のカリキュラムの作成を担当する。研究期間は3年とし、2003年度は、音響システムのハードウェアの構築とカリキュラムの原案の作成、次年度はカリキュラムのソフトウェア化と被験者試験、最終年度は被験者試験結果に基づいた実用化のための改良を行う。
結果と考察
H17年度は、3Dサウンドシステムと頭部位置センサを装備した訓練システム(H16年度成果)に、足踏み動作を検出する膝位置センサを追加し、仮想空間内でのウォークスルーを可能にした。またシステムソフトウェアは、歩行訓練士が使い易いような実用に近いユーザインタフェースを実装した。これらの成果を基に、H17年度の第1四半期にシステムVer 1.0が完成し、現在複数移動音源に対する音源定位訓練環境や壁に対する障害物知覚訓練環境、及びこれらを組合せた総合的な訓練環境が再現可能である。また、H16年度に実施した視覚障害教育・リハ関係の現場に対する音響訓練に関する実態調査の結果集計を行い、聴覚を利用した訓練状況の実体を明らかにし、訓練プログラム作成にあたって貴重な資料を得た。またSPRによるストレス評価実験によって、本訓練システムのストレス軽減効果を確認した。またDGPSを用いた歩行軌跡計測実験でも、本訓練システムの訓練効果を検証した。
結論
計画通り、聴覚空間認知訓練システムVer 1.0を完成させ、複数移動音源に対する音源定位訓練環境や壁に対する障害物知覚訓練環境、及びこれらを組合せた総合的な訓練環境が再現可能とした。また被験者実験によりシステムの有効性を示した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200500620B
報告書区分
総合
研究課題名
3Dサウンドを利用した視覚障害者のための聴覚空間認知訓練システム
課題番号
H15-感覚器-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
関 喜一(独立行政法人産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 哲司(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本応募テーマでは、視覚障害教育・リハビリテーションにおける、聴覚空間認知、即ち、光ではなく音を手がかりに自動車や建造物などの物体の存在を知る技能を獲得させるための訓練システムを3Dサウンド技術を用いて開発することを目的とする。
研究方法
研究分担として、主任研究者 関喜一 は音響システムの技術面の構築を担当する。研究分担者 佐藤哲司 は聴覚空間認知訓練のカリキュラムの作成を担当する。研究期間は3年とし、初年度(H15)は、音響システムのハードウェアの構築とカリキュラムの原案の作成、次年度(H16)はカリキュラムのソフトウェア化と被験者試験、最終年度(H17)は被験者試験結果に基づいた実用化のための改良を行う。
結果と考察
開発した聴覚空間認知訓練システムは以下の5つの特徴を持つものとした:(i)頭部伝達関数を応用した「3Dサウンド技術」の採用、(ii)頭部位置計測による仮想空間制御、(iii)膝位置計測によって足踏み動作を検出しウォークスルーが可能、(iv)壁による反射・遮音などの障害物知覚要因の再現、(v)独自のXMLによる仮想環境表現(これらの技術は特許出願中)。これにより、従来の研究では実現しなかったような現実の歩行訓練環境にかなり近い仮想音響訓練環境を再現できるようになった。また訓練環境のXML表現により訓練士が訓練環境を容易に「編集」できるようになった。またストレス評価実験によって、本訓練システムのストレス軽減効果を確認した。
結論
計画通り、3Dサウンド技術による視覚障害者の聴覚空間認知訓練システムを開発した。現在稼働中のVer 1.0は、複数移動音源に対する音源定位訓練環境や壁に対する障害物知覚訓練環境、及びこれらを組合せた総合的な訓練環境を再現可能とした。また被験者実験によりシステムの有効性、特にストレス軽減効果を確認した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500620C

成果

専門的・学術的観点からの成果
3Dサウンド技術を用いた視覚障害者用訓練システムとしては初めて、反射と遮音による障害物知覚の再現を可能にした。訓練生に膝センサを装着させることにより、仮想環境でのウォークスルーを実現した。また、訓練環境を独自のXMLで記述することにより、歩行訓練士が簡単に訓練環境を編集できるようにした(この技術は特許出願中)。SPRによるストレス評価実験によって、本訓練システムのストレス軽減効果を確認した。
臨床的観点からの成果
本研究により開発されたシステムにより、従来は経験的実地訓練に頼らざるを得なかった訓練が、今度は3Dサウンド技術を用いた仮想音響環境で体系的に行えるようになり、訓練の効率化が見込まれ、視覚障害者の社会復帰への短期間化が期待できる。また、訓練の安全性が向上することにより、視覚障害者の歩行訓練中の事故の危険性の減少、被訓練者の心的ストレスや恐怖感の減少も同時に期待できる。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
傷病等により失明した視覚障害児・者の社会復帰のための教育・リハビリテーションにおいて、視覚障害により失われた空間認知機能を代替するために、聴覚空間認知を獲得する訓練を行うことは、視覚障害者の歩行能力・生活能力の獲得のために必要不可欠なものであり、視覚を失ったことによる機能障害の軽減・視覚障害者の社会参加の促進及びQOLの向上のために不可欠である。聴覚空間認知訓練の方法論の確立は、障害の軽減・視覚障害者の社会参加の促進及びQOLの向上を目指す厚生労働省の政策に正に合致した成果である。
その他のインパクト
”視覚障害者向けシステム 聴覚で空間認知”、日刊工業新聞、2004-11-29取材、2005-1-17 第29面掲載

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
関喜一、佐藤哲司、視覚障害者のための歩行訓練環境生成システム、出願中、特願2004-357036 (2004-12-09)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshikazu SEKI, Kiyohide ITO
Coloration perception depending on sound direction
IEEE Transactions on Speech and Audio Processing , 11 (6) , 817-825  (2003)
原著論文2
Yoshikazu SEKI, Kiyohide ITO
Obstacle Perception Training System and CD for the Blind
RESNA 2004  (2004)
原著論文3
Yoshikazu SEKI, Kiyohide ITO
Auditory Obstacle Perception Training System and CD for the Blind
CVHI 2004  (2004)
原著論文4
佐藤哲司、関喜一
視覚障害者のための3Dサウンドによる聴覚空間認知訓練システム及び訓練プログラムの開発
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究紀要(印刷中)  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-