分子生物学的知識に基づいた感音難聴の新しい治療法の確立

文献情報

文献番号
200500619A
報告書区分
総括
研究課題名
分子生物学的知識に基づいた感音難聴の新しい治療法の確立
課題番号
H15-感覚器-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
山岨 達也(東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 雄一(国立精神・神経センター・微細形態学)
  • 岡 芳知(東北大学医学部内分泌代謝内科)
  • 石本 晋一(社会保険中央病院耳鼻咽喉科)
  • 浅野 知一郎(東京大学医学部分子細胞生物学)
  • 鈴木 光也(東京警察病院耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
音響外傷などの急性感音難聴、老人性難聴など慢性感音難聴の治療・予防法の開発

研究方法
①Wolfram症候群モデルマウス、ミトコンドリア脳筋症モデルマウスを作成し、病態を解析した。②音響外傷に対して種々の薬剤の治療効果を検討した。③アポトーシスを予防・細胞内のミトコンドリア内に導入できるようにした蛋白が蝸牛有毛細胞障害を予防するか検討した。④老人性難聴モデル動物の蝸牛において発現の変動する遺伝子を解析し、またカロリー制限の老人性難聴予防効果も検討した。⑤p27siRNA組み込みアデノウイルスベクター投与により蝸牛有毛細胞のが再生できるか検討した。聴覚はABRで、組織は免疫染色、透過・走査電顕で、遺伝子の解析はOligonucleotide array解析とreal time RT-PCRで評価した。⑥突発性難聴におけるステロイドホルモン+マニトールの治療効果を検討した。
結果と考察
1)Wolfram症候群モデル動物では糖尿病と軽度難聴が発症した。2)ゲルマニウム投与マウスでは高度難聴が生じ、聴覚関連、エネルギー代謝などの遺伝子群の発現低下、アポトーシス関連の遺伝子群の発現亢進が見られた。3)POLGマウスではアポトーシスの亢進により早期に難聴が出現した。4)エブセレンはTTSを抑制した。5)PTD-FNKは投与3時間後をピークに蝸牛内に発現し、アミノ配糖体による有毛細胞死を著明に抑制した。6)老人性難聴モデルマウスでは聴覚関連、神経伝達、エネルギー代謝などの遺伝子群が共通して発現低下し、アポトーシスや炎症関連遺伝子群が亢進した。カロリー制限はC57BL/6マウスの老人性難聴を予防し、上記遺伝子変化も抑制した。7)p27siRNAを投与により、蝸牛支持細胞の分裂を亢進できた。有毛細胞障害後に投与したところ、支持細胞が増殖して有毛細胞様細胞が出現(再生)することが確認できた。
結論
遺伝子工学的および分子生物学的手法により、種々の遺伝性難聴の病態が解析できた、今後遺伝子治療の研究開発が期待できる。急性感音難聴では蛋白治療という新しい治療法の有用性を示すことができ、創薬に有用な情報が得られた。老人性難聴の発症機序について分子レベルで初めて明らかにし、予防法についても新しい治療戦略を提唱することができた。蝸牛有毛細胞の再生について、少なくとも実験レベルでは可能であることを証明した。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200500619B
報告書区分
総合
研究課題名
分子生物学的知識に基づいた感音難聴の新しい治療法の確立
課題番号
H15-感覚器-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
山岨 達也(東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 雄一(国立精神・神経センター・微細形態学)
  • 岡 芳知(東北大学医学部内分泌代謝内科)
  • 石本 晋一(社会保険中央病院耳鼻咽喉科)
  • 淺野 知一郎(東京大学医学部分子細胞生物学)
  • 鈴木 光也(東京警察病院耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
音響外傷などの急性感音難聴、老人性難聴など慢性感音難聴の治療・予防法の開発

研究方法
1)遺伝性難聴モデルを作成し病態を解析した。2)音響外傷に対して種々の薬剤の治療効果を検討した。3)アポトーシスを予防する蛋白の蝸牛への応用を検討した。4)老人性難聴モデル動物の蝸牛において発現の変動する遺伝子を解析した。5)カロリー制限の老人性難聴予防効果も検討した。6)内耳への遺伝子導入の方法について検討した。7)Atoh1またはp27siRNA組み込みベクター投与により蝸牛有毛細胞が再生できるか検討した。8)突発性難聴におけるステロイドホルモン+マニトールの治療効果を検討した。
結果と考察
1)WFS欠損マウスで糖尿病、後天性難聴が生じた。2)Glut5欠損マウスを作成した。3)ゲルマニウム過剰投与マウスでミトコンドリア障害から高度難聴が生じた。4)POLGマウスを作成し、早期に老化症状を示すこと、後天性難聴が早期出現することを観察した。5)MIDASの発現はragged-red fiberにおいて上昇した。6)老人性難聴モデルマウスの蝸牛で増加/減少する遺伝子を同定した。C57BLマウスではカロリー制限が老人性難聴発症を抑制した。7)音響外傷に対してebselenなどの治療効果を確認した。8)FNK-PTDがモルモット蝸牛に取り込まれ、エタクリン酸・カナマイシンによる難聴を予防することを観察した。9)モルモットの蝸牛有毛細胞障害後ダイテルス細胞に増殖能があることを見出した。10)アデノウイルスベクター投与による内耳障害がステロイドにより予防できた。蝸牛窓に鼓膜麻酔液を置いてからベクターを投与する遺伝子導入法を開発した。11)モルモット蝸牛にAtoh1組み込みベクターを投与し、支持細胞を有毛細胞に形態変化させた。p27siRNA組み込みベクター投与により、支持細胞が増殖し有毛細胞様の細胞に再生した。12)突発性難聴でマニトールとステロイドホルモンの併用療法の治療効果を認めた。
結論
分子生物学的手法により種々の遺伝性難聴の病態が解析できた、今後遺伝子治療の研究開発が期待できる。急性感音難聴では蛋白治療という新しい治療法の有用性を示すことができ、創薬に有用な情報が得られた。老人性難聴の発症機序について分子レベルで初めて明らかにし、予防法についても新しい治療戦略を提唱することができた。蝸牛有毛細胞の再生について実験レベルでは可能であることを証明した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500619C