文献情報
文献番号
200500613A
報告書区分
総括
研究課題名
内耳有毛細胞の再生による難聴の治療
課題番号
H16-感覚器-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 壽一(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 中川 隆之(京都大学医学部附属病院)
- 藤野 清大(京都大学医学部附属病院)
- 喜多 知子(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究目的は、臨床応用可能な内耳有毛細胞再生のための技術開発を行い、感音難聴を中心とした内耳障害に対する全く新しい治療方法を提供することにある。本研究では、有毛細胞再生の手段として、薬物によるノッチ情報伝達系の制御を用い、支持細胞から有毛細胞への再生を誘導し、聴力を獲得することを目的とした。
研究方法
蝸牛感覚上皮の器官培養系を用い、セクレターゼ阻害薬による有毛細胞新生誘導の至適条件決定に関する解析を組織学的、分子生物学的に施行した。また、器官培養系での有毛細胞機能評価の方法として、有毛細胞感覚毛の物理的刺激に対する応答をカルシウムイメージングで評価することを試みた。また、セクレターゼ阻害薬の標的分子であるHes1の内耳における発現について、Hes1発現に伴いGFP蛍光を発する遺伝子改変マウスを用いて、成熟した内耳での発現を解析した。一方、モルモットを実験動物とし、薬物の投与経路による有毛細胞新生効果の違いを検討した。
結果と考察
蝸牛感覚上皮の器官培養系の解析から、セクレターゼ阻害薬による有毛細胞新生誘導が濃度依存性に誘導され、誘導に必要な作用時間が明らかとなった。また、加齢により誘導効果が影響されることが判明した。これらの結果は、in vivoでの効率的な有毛細胞新生誘導に応用できる知見といえる。また、感覚毛の刺激方法を工夫することにより、器官培養系での有毛細胞機能のカルシウムイメージングでの評価が可能であることが分かった。また、遺伝子改変マウスの解析から、成熟した内耳でのHes1発現パターンが明らかとなった。この結果は、セクレターゼ阻害薬による内耳再生誘導の標的となる細胞の局在を明確にし、今後のin vitro、in vivoでの研究展開に反映することができる。薬物投与経路については、蝸牛への直接投与が最も有効であることが判明し、今後の機能再生をめざしたin vivo実験への応用が期待できる。
結論
器官培養系を用いた検討から、セクレターゼ阻害薬投与による支持細胞から有毛細胞への分化転換のメカニズムが明らかとなり、分化誘導の実現に必要な条件が明らかとなった。また、in vivo実験から、セクレターゼ阻害薬の投与方法などの条件が明確となり、標的とする細胞の内耳での局在が明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2006-04-11
更新日
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