文献情報
文献番号
200500612A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性サイトメガロウイルス感染症による聴覚障害の実態調査並びに発症予防を目指した基礎的研究
課題番号
H16-感覚器-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
大森 孝一(福島県立医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 藤枝 憲二(旭川医科大学小児科学講座)
- 錫谷 達夫(福島県立医科大学微生物学講座)
- 筒井 祥博(浜松医科大学病理学講座)
- 竹腰 正隆(東海大学医学部基礎医学系)
- 井上 直樹(国立感染症研究所ウイルス1部)
- 片野 晴隆(国立感染症研究所感染病理部)
- 小川 洋(福島県立医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座)
- 馬場 陽子(福島県立医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
23,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
胎児期のサイトメガロウイルス感染症(先天性CMV感染症)は全出生児の約300人に1人に起こる頻度の高い感染症で、約4000人に1人は生後も持続するウイルス増殖により幼児期に聴覚障害を発症することが欧米の研究でわかってきたが、わが国における実態は不明である。本研究の目的は、先天性CMV感染による聴覚障害の実態調査を行うとともに、発症病理の解析、発症予防につながる治療法やマス・スクリーニング法の開発などを総合的に研究し、本疾患による聴覚障害の予防対策に寄与することにある。
研究方法
臨床研究:(1) 聴覚障害児について、我々が開発した保存乾燥臍帯を用いた先天性CMV感染の後方視的な診断を行う。新生児について、自動ABR検査で聴覚スクリーニングを行う。 (2)新生児の尿を特殊濾紙に吸収し、CMVのDNAを検出する迅速な検査法を開発する。
基礎研究:(1) CMV感染小動物モデルを作製し、内耳の病理組織学的評価を行う。 (2) 抗体療法実現のために、ヒト型抗CMVモノクローナル抗体の開発を行う。
(倫理面への配慮)各施設の倫理委員会の承認のもと、ヘルシンキ宣言に則り人権擁護上の配慮を行い、同意の上で実施する。遺伝子組換え生物等の拡散防止措置及び動物実験ガイドラインを遵守する。
基礎研究:(1) CMV感染小動物モデルを作製し、内耳の病理組織学的評価を行う。 (2) 抗体療法実現のために、ヒト型抗CMVモノクローナル抗体の開発を行う。
(倫理面への配慮)各施設の倫理委員会の承認のもと、ヘルシンキ宣言に則り人権擁護上の配慮を行い、同意の上で実施する。遺伝子組換え生物等の拡散防止措置及び動物実験ガイドラインを遵守する。
結果と考察
臨床研究:(1)保存乾燥臍帯を用いた検査を聴覚障害児65名に行い、先天性CMV感染が10名(15%)にみられ、特に、2才までの難聴発症の2割となることが見出された。本調査からわが国でも先天性CMV感染が聴力障害の重要な原因であることが判明した。今回の新生児聴覚スクリーニングで同定された障害児にはCMV感染は認められなかった。 (2)特殊濾紙法は高感度にCMV感染を診断でき、マス・スクリーニングに活用できる。
基礎研究:(1)抗ヒトCMV中和ヒト抗体を、植物を用いて安価大量に生産するために必要な材料と遺伝子工学技術を確立した。 (2)マウスCMVの髄行性、血行性感染モデル、及びモルモットCMVの経胎盤感染モデルを作製した。いずれも内耳ラセン神経節、鼓室階、前庭階にCMV感染を証明し、聴覚障害の発症機序の解明に寄与するものと考えられた。
基礎研究:(1)抗ヒトCMV中和ヒト抗体を、植物を用いて安価大量に生産するために必要な材料と遺伝子工学技術を確立した。 (2)マウスCMVの髄行性、血行性感染モデル、及びモルモットCMVの経胎盤感染モデルを作製した。いずれも内耳ラセン神経節、鼓室階、前庭階にCMV感染を証明し、聴覚障害の発症機序の解明に寄与するものと考えられた。
結論
先天性CMV感染症がわが国でも聴力障害の重要な原因であり、障害予防対策の必要性が示された。発症機序の解明、発症予防につながる治療法やマス・スクリーニング法の開発と実用化により、本疾患による新生児・幼児の聴覚障害を防止することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2006-05-17
更新日
-