内耳エネルギー不全の病態解析に基づいた突発性難聴の新規治療法開発

文献情報

文献番号
200500611A
報告書区分
総括
研究課題名
内耳エネルギー不全の病態解析に基づいた突発性難聴の新規治療法開発
課題番号
H16-感覚器-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松永 達雄(国立病院機構東京医療センター臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 正人(国立病院機構東京医療センター臨床研究センター)
  • 小川 郁(慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
26,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
突発性難聴は発症頻度が比較的高く、50-60歳台をピークとして老人から小児まで発症する内耳性難聴であり、高度の平衡障害を合併する頻度も高い。病態は不明であるが循環障害の関与が推測されており、高度の難聴が徐々に回復する場合もあるが、発症後1ヶ月を過ぎて回復しない場合には永続性となり、有効な治療法がない。我々はラットで急性内耳エネルギー不全による突発性難聴モデル動物の作成に成功した。本研究では、このモデルを用いて突発性難聴の病態を解明し、その結果に基づいた治療法を開発することである。
研究方法
1)急性内耳エネルギー不全モデル動物において、a)小胞体ストレス関連分子、シャペロン分子、炎症系細胞マーカーとサイトカイン、活性化型カスパーゼの経時的な発現、局在の解析、b)カスパーゼ阻害薬の全身投与による治療効果の解析、c)骨髄間葉系幹細胞移植後の移植細胞の遊走、分化、増殖能および周波数別治療効果の解析、d)前庭有毛細胞の障害の半定量的解析、2) 内耳局所での小胞体ストレス誘導による聴覚および組織への影響の解析、3)蝸牛線維細胞および骨髄間葉系幹細胞の培養系における分化誘導因子同定のための細胞生物学的解析。
結果と考察
17年度の研究結果を以下に列挙する。1)急性内耳エネルギー不全における小胞体ストレス関連分子、シャペロン分子、炎症系細胞、サイトカイン、カスパーゼの発現、局在と活性化の動態、カスパーゼ阻害薬全身投与による治療効果、内耳に移植された骨髄間葉系幹細胞の組織内での動態、前庭有毛細胞の傷害機構。2)内耳局所での小胞体ストレス誘導による難聴と組織障害の特徴。3)蝸牛線維細胞の分化誘導因子の同定。今後は以上の成果を基に、さらに詳細な病態解明と効果的な治療法の開発を進める。
結論
これまで技術的問題から分子レベルの研究に適したラット、マウスの突発性難聴モデルがなく、その分子病態は未知であったが、今回の急性内耳エネルギー不全動物モデルを用いた研究により細胞・分子レベルの病態解明が劇的に進んだ。さらに16年度に報告したカスパーゼ阻害薬投与および骨髄間葉系幹細胞移植による難聴回復のメカニズムの解明が進んだ。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-