網膜血管新生抑制機構の解明とその応用

文献情報

文献番号
200500610A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜血管新生抑制機構の解明とその応用
課題番号
H16-感覚器-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
細谷 健一(国立大学法人富山大学薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 登美 斉俊(国立大学法人富山大学薬学部)
  • 立川 正憲(国立大学法人富山大学薬学部)
  • 笹岡 利安(国立大学法人富山大学薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
15,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病網膜症は、2大中途失明原因のひとつであり、高齢化社会を迎える日本において、失明への予防法と新たな治療薬開発が望まれている。糖尿病網膜症における血管新生は、網膜血管の周囲にあるペリサイトの脱落から始まっており、網膜ペリサイトから分泌される因子が網膜血管内皮細胞の増殖を制御していると仮説を立てた。我々が樹立した網膜血管内皮細胞株(TR-iBRB)と網膜ペリサイト株(TR-rPCT)の共培養解析の結果、TR-rPCT細胞培養濃縮液をTR-iBRB細胞に添加すると増殖が著しく抑制されることを見いだした。そこで本研究では、網膜ペリサイトから分泌される網膜血管内皮細胞増殖抑制因子を同定し、網膜血管新生抑制機構を解明することを目的とした。
研究方法
TR-rPCT細胞培養濃縮液(rPCT-CM)をゲルろ過法によって分画し、TR-iBRB細胞の増殖抑制活性を示す画分を二次元電気泳動法で分離した。さらに、MALDI-TOFMS/peptide mass fingerprinting法を用いて、タンパク質の同定を行った。同定されたタンパク質をコードする遺伝子をTR-rPCT細胞から単離後、大腸菌BL21に導入してリコンビナントタンパク質を作製し、TR-iBRB細胞増殖抑制活性の解析を行った。
結果と考察
TR-iBRB細胞の増殖抑制活性を有するTR-rPCT細胞の培養濃縮液のフラクションから、シンタキシン2Dを同定した。ラットシンタキシン2Dを特異的に認識するプライマーを用いたRTPCR解析から、ラット網膜およびTR-rPCT細胞にシンタキシン2DをコードするmRNAが発現していることが示された。さらに、シンタキシン2D はTR-rPCT細胞に発現し、培養液中にも存在していることが示唆された。シンタキシン2Dは濃度依存的にTR-iBRB細胞の増殖を抑制し、50%阻害濃度は5.95 microMであった。さらに、シンタキシン2DはTR-iBRB細胞にアポトーシスを誘導することが示唆された。
結論
本研究によって、網膜ペリサイトから分泌される網膜血管内皮細胞増殖抑制因子の1つとしてシンタキシン2Dの関与を明らかにした。物質の同定のみならず、リコンビナントタンパク質の作製にも成功した。今後は、薬理効果を証明する予定である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-