重症多形滲出性紅斑に対する眼科的治療法の確立

文献情報

文献番号
200500608A
報告書区分
総括
研究課題名
重症多形滲出性紅斑に対する眼科的治療法の確立
課題番号
H16-感覚器-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
木下 茂(京都府立医科大学視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 外園千恵(京都府立医科大学視覚機能再生外科学)
  • 橋本公二(愛媛大学医学部皮膚科)
  • 坪田一男(慶応義塾大学医学部眼科)
  • 大橋裕一(愛媛大学医学部眼科)
  • 小泉範子(同志社大学研究開発推進機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
26,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多形滲出性紅斑の重症型であるStevens-Johnson症候群(以下SJ症候群)による重篤な視力障害を克服することを目的として、培養粘膜上皮シート移植(培養角膜上皮シート移植・培養口腔粘膜上皮シート移植)という新規の眼科的治療法を確立する。
研究方法
SJ症候群多数例の眼所見を客観的に評価し、その病態と視力に影響する因子を解析した。本症候群の皮膚科診断と眼科診断の相同性、病期や部位による病態の違いについて検討した。分担研究の二施設へ培養角膜上皮シートを移送し、手術を実施する多施設研究を行った。培養上皮シートの安全性をより向上させるため、牛血清ではなく患者自己血清を用いた培養上皮シート作成を行い、その安全性と有効性を検討した。培養粘膜上皮シートの新しい細胞ソースの探索を行った。患者および健常ボランティアの末梢血より単球を分離し、自然免疫応答の異常の有無をGene Chipを用いて解析した。
結果と考察
角膜上皮幹細胞の疲弊・消失、眼瞼および角結膜の瘢痕性変化が眼合併症の特徴であり、角膜混濁、角膜血管侵入、結膜侵入が視力に強く影響することが明らかとなった。皮膚科および眼科所見を相互に検討し、SJ症候群の診断基準2005の副所見として「角膜上皮障害と偽膜形成のどちらかあるいは両方を伴う両眼性の非特異的結膜炎」を追加した。培養角膜上皮シートの移送に伴う不利益はなく、他施設においても良好な治療経過を得ることができた。患者自己血清を用いた培養上皮シートの組織所見は良好であり、術中術後経過に問題のないことが明らかとなった。ヒト正常結膜細胞の中に角膜上皮に分化しうる細胞が存在することを明らかとした。患者および健常ボランティアの末梢血の反応性の違いにより、SJ症候群患者に自然免疫応答の異常が存在することが推測された。
結論
眼合併症の解析結果より、急性期に角膜上皮幹細胞の消失を生じることが視力障害の最も大きな要因であることが判明した。眼合併症の発症を回避するため、発症初期より眼科医を含む医療チームが治療にあたることが望ましい。視力障害を生じた患者においては、これまで視機能の回復を得る有効な治療法がなかったが、本研究において開発した培養粘膜上皮移植は新しい治療法としてほぼ確立しつつある。培養上皮シートを作成する際の細胞ソースとして結膜組織が使用できる可能性がある。本症候群発症には何らかの自然免疫応答の異常が関与する可能性が高い。

公開日・更新日

公開日
2006-04-25
更新日
-