脊髄損傷後の身体機能低下を抑止する立位トレーニング方法の開発

文献情報

文献番号
200500590A
報告書区分
総括
研究課題名
脊髄損傷後の身体機能低下を抑止する立位トレーニング方法の開発
課題番号
H16-障害-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中澤 公孝(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 赤居 正美(国立身体障害者リハビリテーションセンター病院)
  • 樋口 幸治(国立身体障害者リハビリテーションセンター病院)
  • 水越 美奈((財)日本盲導犬協会神奈川訓練センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,973,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は立位歩行運動のリハビリテーション効果を最大限に得ることを主眼として、麻痺領域を含む立位姿勢保持下での脚交互運動によって、麻痺領域の運動・神経機能を賦活する機序を解明し、さらに中長期的な立位トレーニングの実施による麻痺領域の機能変化を定量的に把握することを目的とした。
研究方法
全期間を通しての目標は、①立位姿勢下での下肢交互運動によって麻痺領域に筋活動を誘発する神経機序を解明すること、②反射性筋活動が組織の酸素動態を変調しえるのか否かを明らかにすること、③中長期的な立位運動が脊髄損傷後の身体機能の適応的変化を促すのか否か明らかにすること、④日常的に立位・歩行トレーニングを行うための補助犬の利用可能性を明らかにすることである
 本研究では前期に上記目標①、②に関する実験を行い、既知の立位歩行訓練の効果に新たな知見を加えるための基礎的資料を得ることを目指す。後期には下図に示す立位歩行様運動による3ヶ月のトレーニングを脊髄損傷者を対象として実施し、前期に検討された下肢麻痺筋活動、酸素動態の変化を中心に、トレーニング経過に伴う身体機能の変化について運動・神経生理学的観点から多面的かつ定量的に検討することとした。本年度は、上記①の目標に接近するために、上肢運動の影響について詳細に調べた。
結果と考察
上肢と下肢の運動ニューロン間の結合が一部残存すると考えられる頸髄不全損傷者では上肢運動印加によって歩行様筋活動が影響を受けた。一方胸髄完全損傷者では、上肢運動の有無に依らず下肢の歩行様筋活動は同一であった。胸髄完全損傷者では上肢と下肢間の神経結合が完全に遮断されていることを考え合わせると、頸髄不全損傷者では上肢運動に伴う求心性神経情報が、下肢の歩行様筋活動に何らかの作用を及ぼしたと考えられる。
結論
本年度の研究結果から、人間の上肢と下肢の運動ニューロン間に神経結合が存在し、それらが残存する頸髄不全損傷者では、受動的立位姿勢下での上肢運動と下肢運動には相互作用があることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
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