再生医療による脊髄の歩行パターン発生能力と脊髄損傷者の歩行再獲得可能性に関する研究

文献情報

文献番号
200500589A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療による脊髄の歩行パターン発生能力と脊髄損傷者の歩行再獲得可能性に関する研究
課題番号
H16-障害-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
赤居 正美(国立身体障害者リハビリテーションセンター病院・研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中澤 公孝(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
  • 山本 真一(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
12,635,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は脊髄損傷者の歩行再獲得を最終目的としているが、その実現に向け、ヒト脊髄に基本的な歩行パターンを生み出す機能および学習能力がどの程度あるかを探求し、再生医学による脊髄の軸索延長と組み合わせて、脊髄損傷患者のための新たなリハビリテーション手法を開発することを目標としている。
近年の再生医学の進歩は、損傷後の脊髄に従来考えられていた以上の回復能力・可塑性があることを示している。不全損傷患者での臨床経験からは、歩行様トレーニングによる繰り返し刺激入力が残存する脊髄歩行中枢の再構成に結びつく可能性を示しているので、ごくわずかであっても中枢からの情報伝達を再建出来れば、言い換えると完全損傷を一部でも不全損傷に変える事が出来れば、臨床への発展性はあると考える。
研究方法
平成17年度は以下の研究を計画した。
・立位歩行トレーニングの経時変化の追跡を行う。トレッドミル上での歩行トレーニング中及び安静時に経頭蓋磁気刺激を行い、それに対する下肢麻痺領域の応答を評価する。さらに下肢麻痺領域の脊髄反射を誘発し、これらがトレーニングによりどう変化するかを縦断的に調べる。
・齧歯類胎児中枢神経から得た髄鞘形成オリゴデンドロサイト前駆細胞(再生軸索周囲の環境の最適化)の初代培養系を確立する。遺伝子導入を行うことで表現形を変化させ、増殖に対する影響を評価する。 
・ラット胎児から得た脊髄運動ニューロン(神経細胞の再生力の賦活化)の初代培養系を確立、また損傷脊髄の組織学的検討のため、ラット脊髄圧挫モデルを作成する。
結果と考察
平成17年度成果として
・10月にロボット型歩行トレーニング機が導入され、同機を用いたトレーニング実験の実験系を整備した。受動歩行中の筋電図の記録と経頭蓋磁気刺激を行う環境を整え、健常者での実験を開始した。
・脊髄損傷患者を対象としたトレーニングのための倫理審査を終えた。ロボット型歩行トレーニング機の運用規定も制定し、8週間にわたる訓練を順次開始した。
・オリゴデンドロサイト・脊髄運動ニューロンの初代培養系を確立した。またラット脊損モデルを確立し、in vivoでの前駆細胞の挙動を解析した。
結論
再生医療の知見は細胞ないし動物実験のレベルであり、最終目標の「脊髄損傷者の歩行再獲得」について直ぐの実現は難しいが、一部の不全損傷者への立位歩行トレーニングはある程度の臨床的改善が期待され、治療効果の検証が可能になろう。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
-