国立病院等総合情報ネットワークシステム(HOSPnet)を利用した健康危機管理モニタリング等の機構に関する研究

文献情報

文献番号
199700057A
報告書区分
総括
研究課題名
国立病院等総合情報ネットワークシステム(HOSPnet)を利用した健康危機管理モニタリング等の機構に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
開原 成允(国立大蔵病院院長)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生省では、平成9年1月9日、厚生省内の関係部局における健康危機管理に関する取組についての情報交換を行うとともに、迅速かつ適切な健康危機管理を行うための円滑な調整を確保するため、「健康危機管理調整会議」を設置したところである。その関係部局の1つとして国立病院部があるが、これは47都道府県に合計237施設、99,062病床(全国の病床数の約6%)を有する診療ネットワークである。そして、診療を支援する観点から全施設を専用回線で結ぶ国立病院等総合情報ネットワークシステム(HOSPnet) が平成9年3月より構築されている。
このネットワークシステムを利用した健康危機管理モニタリンク゛システム等を構築することにより、迅速かつ適切な健康危機管理を行うために必要な情報収集・提供が可能となることから、国民の生命、健康の安全を脅かす事態に対して行われる、健康被害の発生予防、拡大防止、治療等に寄与することが期待される。
研究方法
国立病院で情報処理に造詣の深い次の人々の協力を求めてその討議によってシステムの設計を行った。 井上 通敏(国立大阪病院院長)、寺本 成美(国立長崎中央病院院長)、水島 洋(国立がんセンター室長)、花井 荘太郎(国立循環器センター室長)、阿南 誠 (国立九州中央病院統計病歴係長)。設計に基づいてシステムを国立大蔵病院のHOSP`net サブセンター上に構築し、試験的運用を行って、システムの機能を評価した。
結果と考察
開発されたシステムの概要は次のようなものであった。
システムの基本機能は次の三つの機能である。
1) 各国立病院・療養所(以下「病院」とよぶ。)が健康危機に関する情報を入手した時に、これを地方医務局へ送る。(但し、高度医療専門機関は直接厚生省へ送る。)
2) 地方医務局は、入手した情報を吟味して、その中で、報告する価値あると判断した情報を厚生省に送る。
3) 厚生省は、この中の情報や、または独自に入手した健康危機管理情報を各病院の危機管理担当者あてに送る。
これを具体化するためのシステムとしては、次のようになっている。
A 各病院からの入力
1) 病院からの報告は、webの画面への入力によって行う。これに標題をつける。
2) 各病院から入力されたデータは、各病院が属する地方医務局別の7つのデータベース(第一群のDB)に蓄積される。
3) また、入力された時に電子メールが、それぞれの地方医務局のアドレスあてに発信される。内容は、「標題の情報が入力された」という文面とする。
4) 自分の管内のデータベースに入力された情報の標題は、各地方医務局からは(特定のパスワードをもった人からは)、webの画面上で一覧表の形で見ることができ、その標題をクリックすることにより、更にその内容を見ることができる。
B 各地方医務局の操作
1) 各地方医務局は、入力されたデータの中で厚生省に報告すべきものを選別して、その標題に一定の操作を加える。(例えば、発信というボタンを作っておいてそれをクリックする)
2) その情報は、第二のデータベース蓄積される。
3) また、入力された時に電子メールが、厚生省のアドレスあてに発信される。内容は、「標題の情報が入力された」という文面とする。
4) 入力されたデータベースの標題は、厚生省からは(特定のパスワードをもった人からは)、webの画面上で一覧表の形で見ることができ、その標題をクリックすることにより、更にその内容を見ることができる。
C 厚生省の操作
1) 厚生省は、健康危機管理上通知が必要な情報を通報された情報の中から選定して通知用の入力画面に入力する。また、厚生省が独自に入手した情報で通知が必要なものについても同様に入力する。
2) 入力された情報は、第三のデータベースに蓄積される。
3) また、入力された時に電子メールが、各病院の危機管理者(約200人)あてのアドレスあてに発信される。内容は、「標題の情報が入力された」という文面とする。
4) 入力されたデータベースの標題は、各病院のすべてのHOSPNET端末からwebの画面上で一覧表の形で見ることができ、その標題をクリックすることにより、更にその内容を見ることができる。
5) このシステムは、大蔵病院のサブセンターに塔載され、その機能を確認された。
今後これを実際に運用するにあたっては、各危機管理者がこのシステムに習熟することが必要であるが、平成10年3月現在では、まだその段階に達していない。
D. 考察
本研究によってシステムは開発され、その機能は確認されたが、これを実際に運用するにあたっては、まだ多くの運営上の問題を残している。最大の問題は、まだ危機管理情報に携わる人々の一部が情報システムの操作に必ずしも習熟していない点である。
特にこのシステムは、電子メールによる連絡が重要な方法となっているが、毎日電子メールを見る習慣のない人々にとっては、送った連絡が放置される可能性がある。全国に散在する危機管理者の中で電子メールを読む習慣のある人は半分にも満たないと思われる。この問題の解決は、最初の運用時に、木目細かく利用者の質問に答えたり、電子メールを読むことを促したりする人の存在である。また、利用が十分行われるようになるまでには時間がかかる。
システムは、開発することはやさしいがそれが有効に利用されるようになるまでの方がはるかに困難で、本研究においては、その点はまだ解決されていない。
結論
1) HOSPnet を用いることにより健康危機管理情報を国立病院から効率よく収集することができることが示された。
2) このシステムの実際の運用には、このシステムの関係者が情報システムの利用に習熟すると共に、運営の中心となる強力な事務局機能が必要であり、この点は今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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