支援機器利用効果の科学的根拠算出に関する研究

文献情報

文献番号
200500587A
報告書区分
総括
研究課題名
支援機器利用効果の科学的根拠算出に関する研究
課題番号
H17-障害-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中邑 賢龍(東京大学先端科学技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 坂井 聡(香川大学 教育学部)
  • 巖淵 守(広島大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 支援技術の開発や利用を促進するためには支援機器利用効果の量的な試算が必要である。障害福祉制度の見直しが図られるこの時期に,支援機器に関するエビデンスを収集できる体制を整えておく必要がある。そこで本研究は,支援機器利用の効果を評価する方法の検討を行なった。このことを通じてエビデンスに基づく支援機器利用・供給システムのあり方について提言する。
研究方法
 支援技術利用の効果を科学的に評価する手法に関する文献資料を国内外から広範に収集し,同時に,欧米の研究者へのインタビューを通して,支援技術関連評価尺度の収集を行なうと同時に,欧米でのエビデンス利用の実態を調査した。次に,当事者や専門家へのインタビュー・評価尺度適用を通じて支援機器利用に関する意見を収集した。
結果と考察
(1)福祉政策に依存したエビデンス利用
 北米では,保険による機器給付やサービスの妥当性にエビデンスが求められる可能性があるのに対し,スウェーデンのように支援技術は基本的人権を保障する道具でありその妥当性に関してのエビデンスを求めない国もある。イタリアではSCAIと呼ばれる経済的効果を算出する道具が開発・利用されており,英国でも経済的効果に関するエビデンスが示されている。
(2)多岐にわたる支援技術利用効果
 障害者への聞き取り及び評価尺度上では,ストレス低下,コミュニケーションの確保,友人の獲得など多くのプラス効果が示された一方,健康面で首や肩の痛み,視力低下,聴力低下といったマイナス面の影響をインタビューを受けた在宅障害者の82%が指摘している。障害受傷の時期や期間によっての影響は変動する結果も示され,既存の尺度で一過的に測定するエビデンスについては取り扱いを慎重に行なう必要性があることを示唆している。専門家への聞き取りでもプラス効果と同時に,機器利用に関連する介護の増加と言ったマイナス面も指摘された。
結論
 人的な支援に頼っている部分を支援機器に置き換えることで介護費用を削減できると考えられるが,経済原則だけで機器導入が決定されることは危険である。また当事者を支援する機器が2次障害を生む危険性について早急に対策を講じる必要がある。いずれにしても,支援機器利用のプラス面とマイナス面を多面的,かつ,科学的に示すことが重要である。このことが,福祉制度の中での支援技術利用のスタンスを明確すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-