重度精神障害者の治療及び治療効果等のモニタリングに関する研究

文献情報

文献番号
200500584A
報告書区分
総括
研究課題名
重度精神障害者の治療及び治療効果等のモニタリングに関する研究
課題番号
H16-障害-019
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 和男(国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 菊池 安希子(国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部 )
  • 平林 直次(国立精神・神経センター武蔵病院)
  • 樋口 輝彦(国立精神・神経センター武蔵病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の精神医療は、これまで、Evidence Based Medicine (EBM)を実践してきたとは言い難い状況にある。そこで、本研究では、重度の精神障害を有する者に対する治療を統一プロトコルないしアルゴリズムに準拠して実施することによって、その治療効果を科学的に評価していくことを目的とした。
研究方法
分担研究者(菊池安希子)は、重大な他害行為を行った重度精神障害者に対するEBMを検証するため、諸外国ではその成果が実証されている認知行動療法(CBT)を元に、他害行為防止治療プログラムの実施キットを作成し、対象患者への介入の試行を開始した。分担研究者(平林直次)は、CPA-J を用いて、指定入院医療機関で実施される医療の効果を評価するため、入院処遇となった症例群に対する対照群をこれまでの措置入院者から抽出し、その妥当性を検証した。分担研究者(樋口輝彦)は、強迫性障害(OCD)の症状改善度をOCDの会への参加の有無、暴露・反応妨害法の有無によって比較した。また、うつ病患者のコンプライアンスに関する尺度ADCQの日本語版の作成し、その信頼性・妥当性を検証するとともに、うつ病治療補助ツールが患者の認知や態度に及ぼす効果の検討を行った。
結果と考察
菊池班では、他害行為防止治療プログラムを試行した結果、対象者人数が少ないため事例検討レベルではあるが、集団療法形式のCBTpプログラムの実施が可能であるとの示唆が得られた。平林班では、症例群のモニタリング゙を継続し、隔離・拘束状況、薬物療法の種類・投与量、家族の有無、合併症の有無、入院期間などについて両群の比較を行う必要性が示唆された。樋口班では、OCDの会に参加した患者が全員、暴露・反応妨害法(ERP)をしており、会に参加することがERPの動機付けになったと推測された。また、ADCQ日本語版における一定の再テスト信頼性と内的信頼性が確認され、うつ病治療補助ツールによってうつ病患者のうつ病や抗うつ薬に関する態度や信念が肯定的に変化したことが示された。
結論
重度精神障害者の治療にはCBTに基づく治療プログラムが有効であることが示唆され、今後も治療プログラムの開発と有効性の検証が重要であると思われた。OCDの患者会やうつ病補助ツールといったサポート手段によって、治療に対する患者の積極性を高めることができることが明らかになった。患者の意向は治療方針の選択と関連しており、今後エビデンスに基づく医療を促進するためには、患者に対して十分な情報提供を行うことが有効な一手段となりうることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
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