知的障害児・者の機能退行の要因分析と予防体系開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500582A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害児・者の機能退行の要因分析と予防体系開発に関する研究
課題番号
H16-障害-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
加我 牧子(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 敏明(保健医療・福祉施設あしかがの森)
  • 稲垣真澄(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 杉江秀夫(浜松市発達医療総合センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,410,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 知的障害児・者の二次的な機能退行は原疾患、身体疾患、合併症、心理社会的要因、加齢等により生じ、社会参加を妨げる要因となる。従って機能退行の現状を明らかにし、退行の阻止、抑制または発症を遅らせるための予防法を開発することを目的とする。
研究方法
(1)発達障害児・者医療に専門的に従事している医師114名に知的障害者の機能退行の経験の有無を調査した。(2)知的障害者更正施設の通所者48名に国際生活機能分類(ICF)の項目リストを用い「現在の活動」と「機能障害」を昨年度の結果と比較し、悪化や改善例の要因と状況を調査した。(3)ICF-Childrenの日本語訳を行い、ダウン症候群小児に適応し評価を行った。
結果と考察
(1)41名(36.0%)の医師が退行を経験し,平均4.2名の診療を担当していた。症状は「動作緩慢」が最も多く、歩行不安定、体重増減,持久力低下など「身体的な活動制限と機能退行」が目立った。この他、精神症状が指摘され50歳以降のみならず20、30歳代の若年成人層にもみられることが多かった。多くの医師が運動機能退行と内科疾患に注意が必要と考えていた。ICFには動作緩慢の項目はなく,ICFのみで機能退行の評価はできなかった。なお知的障害単独では30歳,自閉症合併例では20歳以降、機能退行の発症に注意すべきと思われた。
(2)1年間で学習と知識の応用に制限のある人が増えたが、一般的課題と要求、運動・移動やセルフケア、対人関係、社会生活に100%の障害を示す例の割合は減少した。
評価点の悪化・改善要因は家庭環境の変化、福祉サービスの利用があげられた。また施設内の対応の工夫で精神的安定と意欲向上が得られICF評価点の改善につながった。なお「意欲の向上」により処遇上の困難が増した例もあった。ICF評価点を用いた継時的評価は退行の有無、要因分析や対応の良否の客観的指標となりうる。施設・家庭を含む包括的な援助が必要である。
(3) ICF-Childrenを用いると発達を加味した詳細な評価が可能であった。今後日本語訳の紹介などが待たれる。
結論
(1)発達障害医療の専門家の間で機能退行は稀ならず経験され、動作緩慢になるとの指摘が多くICFのみでは評価しきれなかった。
(2)1年間にICF評価点の悪化がみられた症例は環境変化、特に保護者の健康問題が影響していた。施設と家庭を含めた包括的援助が重要である。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
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