障害者本人支援の在り方と地域生活支援システムに関する研究

文献情報

文献番号
200500580A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者本人支援の在り方と地域生活支援システムに関する研究
課題番号
H15-障害-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
河東田 博(立教大学コミュニティ福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 新保(杉田) 穏子(立教女学院短期大学幼児教育科)
  • 孫 良(神戸学院大学総合リハビリテーション学部)
  • 遠藤 美貴(立教大学地域移行研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,275,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)地域移行に対する現場職員の意識を明らかにすること。
(2) 入所施設の構造上の問題点、および、入所施設からグループホーム等の地域の住まいに移行した後に、本人が地域に定着し地域住民として生活をしていくために必要な支援システムをどのように構築していったらよいのかを明らかにすること。
(3) 入所者が施設から地域へ移行する際に、障害者本人が混乱をきたさないようにするための移行方法、支援の在り方、支援者研修の在り方を明らかにすること。
研究方法
2003年12月?2004年3月に、地域移行先進知的障害3施設で、意識調査を行った。2003年7月?2004年2月に上記3施設で、2004年8月?11月に身体障害者療護施設を出て自立生活を始めた人たちに対して東京と兵庫で面接調査を実施した。また、2004年10月?2005年3月に、A県B市にある身体障害者療護施設Cで面接調査を実施した。
結果と考察
職員の意識と地域生活支援業務の経験、雇用形態、勤務年数との間に関係があることがわかった。利用者の入所施設から地域の住まいへの移行については、積極的に促進していこうという意識が見られるものの、移行の過程や移行後の生活において利用者の主体性を尊重し促進していくための職員の意識に課題が見られていた。また、施設には施設特有の構造的問題が存在しており、地域移行を妨げる要因の一つともなっていた。さらに、施設により地域生活支援への取り組みの量と質は大きく異なっていた。なお、個別地域移行支援プログラムの作成・実施と支援者教育も急ぎ必要とされていた。
結論
 地域移行に対する施設職員の意識と地域生活支援業務の経験、雇用形態、勤務年数との間に関係があり、地域移行を積極的に促進していこうという意識が見られるものの、利用者の主体性の尊重には課題が見られていた。また、施設により地域生活支援への取り組みが異なっており、今後地域で暮らす人たちが手厚いサービスを安心して長期間に渡って受けられるように、地域生活が本人たちにとってどれほど重要なことであるかを認識し、個別地域移行支援プログラムの作成や本人支援の在り方を具体的に検討し、支援者の教育も行っていく必要があると思われた。さらに、政治、経済、法律の仕組みを入所施設から地域生活重視を基盤としたものに変え、生活、就労、余暇、経済、対人関係などを包み込む地域生活支援システムを構築していく必要があると思われた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200500580B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者本人支援の在り方と地域生活支援システムに関する研究
課題番号
H15-障害-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
河東田 博(立教大学コミュニティ福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 新保 穏子(立教女学院短期大学幼児教育科)
  • 孫 良(神戸学院大学総合リハビリテーション学部)
  • 遠藤 美貴(立教大学地域移行研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国内外の入所施設における地域移行の実態を把握し、地域移行に対する現場職員の意識、地域移行後の地域生活支援システム、障害者本人支援の在り方、支援者研修の在り方等を明らかにするために行われた。
研究方法
目的にそって各分担研究者の下で研究チームを発足させ、2003年10月から2006年1月にかけ、海外での調査も含め、次のような各種調査を行った。入所施設における地域移行と本人支援、地域生活支援の実態の把握(アンケート調査による全国調査)、地域移行に対する現場職員の意識調査(アンケート調査、於地域移行先進3施設)結果の分析を行った。また、障害者本人(地域移行先進3施設および身体障害者療護施設退所自立生活者等)、親族、職員等に面接調査を行い、地域移行プロセスにおける障害者本人支援の在り方と地域移行後必要な地域生活支援システム構築の検討を行った。さらに、上記結果を基に、施設職員のための地域移行支援マニュアル作成等の検討と支援者教育の在り方の検討を行った。
結果と考察
福祉先進国では入所施設がなくなり、地域生活支援のハード面が充実しているのに対して、ソフト面では多くの課題が残っていることがわかった。また、エスコートサービス、コンタクトパーソンといったソフト面のサービスや職員の果たす役割がとても大きいことがわかった。つまり、地域生活支援に従事する職員と障害者本人との関わり合いが本人の自己決定や地域生活の豊かさを左右しており、職員の人間観や価値観、職員の障害者本人への関わり(接し方)がとても重要であることを指し示していた。一方、わが国では、地域生活支援策が不十分なために地域移行はまだ十分に行われておらず、職員には地域移行を積極的に促進していこうという意識が見られるものの、利用者の主体性の尊重には課題が見られていた。さらに、施設により地域生活支援への取り組みが異なっており、生活、就労、余暇、経済、対人関係などに関する総合的な地域生活支援システム策が求められていた。
結論
わが国においても地域移行に対する関心が高まってきており、試行錯誤しながら地域移行に取り組む施設が増えてきている。しかし、地域移行に対する懸念や不安はまだ高く、それを実現する方法も模索中である。今後地域で暮らす人たちが手厚いサービスを安心して長期間に渡って受けられるようにするためには、地域生活が本人たちにとってどれほど重要なことであるかを認識し、地域移行が実現できるような環境整備(地域生活支援システムの構築)が急務であると思われる。また、個別地域移行支援プログラムの作成や本人支援の在り方を具体的に検討し、支援者の教育も行っていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500580C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地域移行先進3施設等の実態調査を基に、5件の原著論文を作成。2件は日本社会福祉学会誌『社会福祉学』に採用・掲載されるなど、専門的・学術的観点から高く評価された。
臨床的観点からの成果
調査対象となった施設で実態調査を行うにあたり、生活体験を行った。生活体験を基に記した報告書は対象施設に大きな影響を与え、中には改善に着手する施設も出てきた。また、研究報告書を作成するにあたり、対象施設との意見交換を行い、研究結果の対象施設への還元を図った。
ガイドライン等の開発
最終年度総括研究報告書に「個別地域移行支援プログラム:支援者のためのマニュアル」を提示、総合研究報告書には「個別地域移行支援プログラム:本人のためのマニュアル」を提示した。まだ試案の段階だが、今後検証を積み重ね、「地域移行個別支援ガイドライン」を開発していくことが必要である。
その他行政的観点からの成果
2003年8月26日「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」に招かれ、本研究に関わる海外調査国スウェーデンの障害者本人支援の在り方や地域生活支援システムの現状について報告をした。
その他のインパクト
全国の施設関係者に呼びかけ、日本福祉文化学会仙台セミナー(2004年6月26日)、2004年度厚生労働科学研究・障害保健福祉総合研究成果発表会(大阪、2004年12月5日)、2005年度厚生労働科学研究・障害保健福祉総合研究成果発表会(東京、2005年11月3日)を開催した。大勢の関係者が来場し、活発な意見交換がなされた。また、施設長会議(2004年6月10日)等多くの場に講師として招かれ、研究成果について報告をした。

発表件数

原著論文(和文)
5件
障害者団体機関誌に掲載1件、学会誌に投稿・採用2件、大学紀要に掲載2件。
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
第52回日本社会福祉学会での発表2件、第53回日本社会福祉学会での発表2件。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
日本福祉文化学会現場セミナーの開催1件、厚生労働科学研究・障害保健福祉総合研究成果発表会の開催2件。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
杉田穏子
入所施設からの地域移行と地域生活の現状と課題
さぽーと , 51 (8) , 50-55  (2004)
原著論文2
杉田穏子
知的障害をもつ人の施設から地域への移行の実態と課題-国内主要3施設の実態調査をもとに
立教女学院短期大学紀要 , 36 , 25-40  (2005)
原著論文3
鈴木良
施設Aにおける知的障害者の地域移行後の自己決定支援について
社会福祉学 , 45 (3) , 43-52  (2005)
原著論文4
鈴木良
知的障害者入所施設Bの地域移行プロセスにおける自己決定に影響を与える環境要因についての一考察
社会福祉学 , 46 (2) , 65-77  (2005)
原著論文5
杉田穏子
入所施設の意義についての一考察-入所施設から移行してグループホームで生活する本人と在宅から移行してグループホームで生活する本人へのインタビュー調査結果を比較して
立教女学院短期大学紀要 , 37 , 137-147  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-