超急性期脳梗塞治療法の確立に関する多施設共同ランダム化比較試験

文献情報

文献番号
200500561A
報告書区分
総括
研究課題名
超急性期脳梗塞治療法の確立に関する多施設共同ランダム化比較試験
課題番号
H16-チム(心筋)-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小川 彰(岩手医科大学 脳神経外科学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等総合研究 【心筋梗塞・脳卒中臨床研究】若手医師・協力者活用に要する研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,288,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳梗塞は、高齢者のQOLを低下させる疾患として極めて重要である。局所血栓溶解線溶療法は脳梗塞の完成を阻止する治療として注目されている。本研究では本治療法の効果を科学的に証明することを目的とした。
研究方法
各研究チームは、適宜相互に連絡は取り合うが、バイアスの介入をノ力提言させるために、「計画・評価」a組、「管理」b組、「実施」c組に分けて研究を行った。
a組は研究全体の総括を行いつつ、患者の評価も行った。実際の診療治療はc組が行い、データ管理はb組が行った。全国54施設を選定し多施設共同ランダム化比較試験を組織した。対象は発症6時間以内の中大脳動脈閉塞症例とした。ランダム化にはインターネットを用いた。線溶療法はウロキナーゼの動注療法を施行し、対照群は線溶療法以外のあらゆる治療を行った。3ヶ月後の予後をmodified Rankin scaleで評価した。
結果と考察
本研究において脳梗塞診断法、ランダム化システムの標準化を確立できた。平成17年経静脈的線溶療法が薬事承認されたことを受け、一端症例登録を中断し、解析を行った。その結果、死亡率に有意差を認めなかった。家庭内自立率は対照群で38.6%、療法群で49.1%であり、療法群に多い傾向を示した。社会復帰率に関しては,対照群で22.8%、療法群で42.1%と、療法群において統計学的に転帰が良好であることが証明された (p=0.045)。
適応における問題に関して、本研究で収集されたデータの層別解析により、新たな局所線溶療法ガイドライン策定の基準が構築された。本邦において速やかにt-PAによる研究を開始できる体制を整えた意義は大きい。初期虚血評価の重要性の立証は、診断能に優れていると評価されているDWI-MRIの昨今の機器普及率の上昇、参加各施設での救急体制の整備を促し、新しい診断基盤の確立に寄与した。
計画評価、管理、実施に分けて研究を行ったため、バイアスが低減されまた、患者個人情報脳流出の可能性も最低限に抑えられた。
結論
本研究において脳梗塞診断の標準化、急性期ランダム化システム、CT画像の標準化を確立できた。局所線溶療法の有用性に関して新規性のある研究が推進された。また、脳塞栓症超急性期にウロキナーゼ動注療法が、患者の社会復帰率を改善させうることが科学的に証明された。要介護症例の減少、国民医療費の減少に寄与しうると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
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