病院機能評価事業における方法論と情報の取り扱いに関する国際的動向の調査研究

文献情報

文献番号
199700053A
報告書区分
総括
研究課題名
病院機能評価事業における方法論と情報の取り扱いに関する国際的動向の調査研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
河北 博文(財団法人日本医療機能評価機構)
研究分担者(所属機関)
  • 大道久(日本大学医学部)
  • 橋本廸生(国際医療福祉大学医療福祉学部)
  • 中野夕香里(財団法人日本医療機能評価機構)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病院評価事業に関する国際的動向に関する調査を行い、体系的にまとめることを通じて、わが国の評価事業の位置づけを明確にするとともに、評価に関わる情報の取り扱いや評価結果の公表について、検討の方向を明らかにすることを目的とする。
研究方法
各国の病院評価事業の実態調査を行い、評価事業の枠組みや具体的手順、評価ツールおよび評価事業における評価者の組織的位置づけや資格、要請方法についてデータベース化する。これらの諸外国の評価活動との比較からわが国の評価事業の位置づけを明確にし、問題点の明確化と解決の方法について検討する。特に評価事業においては重要となる評価者の要件やトレーニング方法等について各国の活動と比較する。また、各国の評価事業における情報管理と公開のあり方を調査し、わが国の評価事業での情報の取り扱いについての方向性を検討する。
結果と考察
病院評価事業を行っている主な国および団体としては以下のようなものがあげられた。JCAHO(Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organizations:米国)、CHAP(Community Healthcare Accreditation Program:米国)、CCHA(Canadian Council on Hospital Accreditation:カナダ)、ACHS(Australian Council on Hospital Standards:オーストラリア)、KOFA(Kings Fund Organizational Audit:イギリス)、HAP(Hospital Accreditation Program:イギリス)、NZC(New Zealand Council on Health Care Standards:ニュージーランド)、COHSASA(The Council for Health Service Accreditation of Southern Africa:南アフリカ)、AHQ(The Association for Healthcare Quality:台湾)。国により評価団体の位置づけが異なり、国の機関である場合や民間団体である場合など様々である。米国のJCAHOは、学会及び医師会、病院団体が合同で組織した非営利機関であり、審査基準を設け、病院サーベイを行い、認定をしている。カナダのCCHAは成立は米国と同様であるが、JCAHOと異なり早くから政府により公的な活動と認識され、国で唯一の病院評価・認定団体となっている。JCAHOの認定は政府の医療保障制度であるメディケアの適用病院の認定として用いられている。オーストラリアのACHSは、一部の地域で米国のJCAHOの評価基準を用いて病院の評価を始めたのがきっかけとなり、全国で病院の評価・認定事業を行っている。イギリスでは、国内でいくつかの病院評価活動が行われており、KFOAではオーストラリアの基準を元に病院の評価を行い、改善活動の支援を行っているが、認定という形はとっていない。台湾やスペインでは、国による病院の評価活動がすすめられている。全体としては米国のモデルを参考としている場合が多く、これは、非営利の非政府組織により、ボランタリーに審査を希望する病院の評価を行う形式が基本である。一定水準以上であれば、認定を行う。評価は専門家の視点から行い、評価基準を設け、それへの適合度から判定する。
病院評価事業においては、評価者の資質が重要である。各国の病院評価事業では、評価調査者への教育を様々な方法で行っている。各国の評価調査者の養成とサーベイ派遣を、比較検討した。雇用形態についてみるとJCAHOでは常勤のサーベイヤーを擁しているが、カナダでは非常勤である。また、ACHSやKFOA、HAPではボランティアによるサーベイヤーがほとんどである。非常勤のサーベイヤーの場合には評価者の標準化という点では困難な面があるが、日頃医療現場で活動している人であり、現場の感覚を持ち、また他の病院の評価を行うことで、自分の病院の改善にも役立ていることができるという副次的な効果もある。日本医療機能評価機構(JCQHC: Japan Council for Quality Health Care)の評価では、非常勤のサーベイヤーが380名おり(1998年3月現在)、人数的には諸外国と比較しても最も多い。しかし、一般にはサーベイヤーの資質を確保するために、年間に最低数回のサーベイに参加することとされているが、日本の場合には現在のところ年間の平均参加回数が少なく、一度も参加していないサーベイヤーも存在する。サーベイヤーは医師、看護、管理の専門家による構成で、評価対象病院の規模やサービス内容によって人数が変化する。通常2~5名程度で評価を行う場合が多い。サーベイヤーの要件としては、それぞれの専門領域での管理経験を持つことが求められ、これ以外にJCAHOでは看護および事務管理者は修士以上の学歴、CCHAでは認定をされた病院の職員であることが求められる。サーベイヤーのトレーニングはどの国でも初任時に数日かけて行い、その後、継続研修を行うようになっている。初任時研修はJCAHOでは常勤職員となるため15日と長期間であるが、他の団体では2~4日で、JCQHCでは5日間である。サーベイヤーの質を維持するためには継続研修が必要であるが、JCQHCでは病院の評価活動を開始したばかりであり、継続研修は一部のサーベイヤーにしか行われていない。今後は継続研修が必要であろう。各国の病院評価事業における評価結果の情報公開のやり方は、基本的には認定状態
を示すのみである。評価結果の詳細を公表することはしない。これは、評価事業の顧客が病院であり、病院が費用負担しているという観点から、その報告は病院に帰属すると考えるためである。CCHAでは評価結果の公表は行っていない。しかし、社会的要請から、情報の開示をすすめる動きはある。JCAHOではHCFA(Health Care Financing Administration)や一般の市民からの要請があり、領域別の結果の概要を示すことを始めている。しかし、ここで問題になるのは、その結果を見る住民が評価の方法や結果の判断の仕方について十分に理解しているかである。病院評価活動に関しては、しばしばそれが医療の結果を保証するものと誤解されがちである。結果を一般住民に明らかにする姿勢を持つことにより、評価事業者が住民のために活動していることを示すことができ、医療提供者にも質改善のインセンティブを与えると考えられるが、同時に公表する結果の内容を吟味し、誤解を与えないような方法を用いることが必要となる。評価結果の信頼性については留意が必要で、JCAHOでもランダムに予告なしのチェックを行い、評価の信頼性を上げている。また、JCAHOでもCCHAでも、認定された病院が、その後、標準を満たしていない可能性が見いだされた場合には再評価を行っている。医療の質の確保や改善活動は評価時点のみでなく継続的な努力が必要であるため、このような方法は重要である。JCQHCの病院認定期間は5年であり、各国の評価事業の認定が通常3年であることを考慮すると長期間である。その間には医療環境も変化するため、質を維持するための各病院の活動を支援する方策を検討する必要があると考えられる。
結論
諸外国において病院の評価・認定活動が行われ、多くは非政府の非営利団体による評価が行われている。これらは評価基準を設け、評価者として医療の専門職にトレーニングを行い、複数の評価者が、審査を希望する病院を評価する形をとっている。我が国でも同様の形態で活動が行われているが、評価者の質を確保するための活動は今後さらに充実する必要があると思われる。評価結果は一般には認定状態しか公表されていないが、近年では社会の要請により評価結果の内容を公表する動きもある。しかしこの際には一般住民が理解できるような公表の内容・方法の検討が必要である。

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