糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する研究(JDC Study)

文献情報

文献番号
200500551A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する研究(JDC Study)
課題番号
H16-循環器(生習)-018
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
山田 信博(筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科)
研究分担者(所属機関)
  • 森 保道(虎ノ門病院内分泌代謝科)
  • 山﨑 義光(大阪大学大学院医学研究科)
  • 沖田 考平(大阪大学大学院医学研究科)
  • 清野 弘明(太田西ノ内病院)
  • 横手 幸太郎(千葉大学医学部付属病院)
  • 佐藤 麻子(東京女子医科大学糖尿病センター)
  • 曽根 博仁(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科食環境科学)
  • 渥美 義仁(東京都済生会中央病院内科)
  • 井藤 英喜(多摩北部医療センター)
  • 豊永 哲至(熊本大学医学薬学研究部)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学研究科)
  • 山下 英俊(山形大学医学部視覚病態学)
  • 石橋 俊(自治医科大学医学部)
  • 及川 眞一(日本医科大学内科学第三)
  • 片山 茂裕(埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等総合研究【脳卒中・生活習慣病臨床研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
62,075,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
欧米ではUKPDSやDCCTなど糖尿病患者を対象にした大規模臨床研究が行われ、
多くの重要なエビデンスを生み出したが、日本人を含むアジア人糖尿病患者のデータはま
だ十分とは言えない。JDCSは、わが国の2型糖尿病患者の病態的特徴や専門施設の診療状
況・治療効果を検討することにより、糖尿病およびその血管合併症を抑制するためのエビ
デンスを確立し、日本人を含む東アジア人糖尿病患者の生命予後とQOLの改善に貢献する
ことを目的としている。
研究方法
本研究では、約2000人という多数の日本人2型糖尿病患者を対象に、患者指導
を主な介入手段として介入群の生活習慣や治療の改善を図り、それによるコントロール指
標の改善や合併症の抑制が可能かどうかを解析している。同時にコホート全体を前向きに
観察して、日本の糖尿病患者や糖尿病診療の特徴を把握している。
結果と考察
平成8年4月から全国59施設の2205症例に介入を開始し、現在開始後9年が経
過した。これまでの中間報告の中で、欧米人患者とは異なる日本人糖尿病患者の特徴が数
多く見つかり、欧米の国際誌において発表され内外の注目を集めている。たとえば肥満度
や、合併症のリスクファクター、メタボリックシンドロームの臨床的インパクト、アルコ
ール摂取の影響や薬物の感受性などに関する違いなどが挙げられる。また欧米人患者対象
の研究とは異なり、長期的な平均肥満度や血糖コントロールの増悪は、本研究の日本人糖
尿病患者においては認められていない。一方、日本人患者における合併症の発症率やリス
クファクターなど、本研究において初めて明らかにされたものも多い。糖尿病網膜症の発
症については心血管リスクファクターとの関連が、糖尿病腎症の発症に関しても血圧の重
要性が、それぞれ明らかにされている。糖尿病網膜症については、開始時HbA1C 9%以上の
患者では、7%未満の患者と比較して発症リスクは5.4倍となった。糖尿病腎症については
、収縮期血圧が140 mmHg以上の患者で130 mmHg未満の患者と比較して、発症リスクは2.3
倍に上昇していた。大血管合併症については虚血性心疾患発症率が脳血
Q発症率を超えており、非介入群と比較して、介入群における脳血管障害発症率が有
意に少ないことも判明した。
結論
本研究の今後の進展により、将来のわが国の糖尿病治療・対策に役立つさらに多く
の貴重なエビデンスが得られるはずである。

公開日・更新日

公開日
2006-04-21
更新日
-