糖尿病性腎症の寛解を目指したチーム医療による集約的治療

文献情報

文献番号
200500548A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病性腎症の寛解を目指したチーム医療による集約的治療
課題番号
H16-循環器(生習)-014
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
槇野 博史(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 羽田勝計(旭川医科大学)
  • 古家大祐(金沢医科大学)
  • 富野康日己(順天堂大学医学部)
  • 鈴木芳樹(新潟大学保健管理センター)
  • 山田研一(ちば生活習慣病クリニック)
  • 川上憲人(岡山大学大学院歯薬学部総合研究科衛生学)
  • 前田士郎(理化学研究所遺伝子多型研究センター)
  • 四方賢一(岡山大学医学部歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等総合研究【脳卒中・生活習慣病臨床研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
33,125,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)「糖尿病性腎症の寛解を目指したチーム医療による集約的治療」:糖尿病性腎症患者を対象に、医師と糖尿病療養指導士が参加するチーム医療により強力で厳格な治療介入(集約的治療)を行うことにより、腎症の進行を阻止し、さらに寛解させる治療法の確立を目指す。
2)「糖尿病性腎症に対する蛋白制限食の効果」:糖尿病性腎症に対する蛋白制限食の効果を明らかにする。
研究方法
1)全国の多施設において、顕性腎症例600名を対象として、血清クレチニン値正常群(プロトコールA)と血清クレアチニン高値群(プロトコールB)の2群に分け、それぞれ集約的治療群と従来療法群に無作為に割り付ける。プロトコールAでは、主要評価項目を尿中蛋白排泄量とし、網膜症・神経障害の進行を副次評価項目とする。プロトコールBでは、血清クレアチニン値の2倍化、透析療法への導入(腎死)および死亡を1次エンドポイント、心血管イベントの発生、網膜症・神経障害の進行を2次エンドポイントとする。両プロトコールともに、前向き臨床試験で、総観察期間は5年間を予定している。
2)全国37施設において、顕性腎症例を対象として、蛋白制限食(0.8 g/kg/日)の効果を、通常蛋白食(1.2 g/kg/日)群と比較検討する。平成10年度から登録を開始し、1) Ccrの低下速度および1/Crの傾き、2) 血清Crが前値の倍になる症例の頻度を主要解析項目として、蛋白制限食群58名と通常蛋白食群58名のランダム化比較試験を継続している。
結果と考察
1)2005年7月15日、国際研究交流会館(東京都中央区築地)において発足説明会(Kick off meeting)を開催した。日本腎臓学会、日本糖尿病学会と糖尿病性腎症合同委員会を通して、研究協力施設の公募を行い、現在までに128施設の参加を得た。各施設における倫理委員会の承認を受け、2006年4月現在で118症例が観察期間に入っている。
2)観察期間が1年以上の症例に関する中間解析を行い、蛋白制限食群と通常蛋白食群間に尿中UNから算出および食事調査からの蛋白摂取量に有意差が認められたが、CCrの傾き、1/Crの傾き、血清Cr倍化までの日数、尿アルブミン量、尿蛋白量に差は認められなかった。
結論
1)本研究により、腎症の進展を防止し、さらに寛解させるための集約的治療法が確立されれば、糖尿病患者の予後の改善と医療費削減に大きな効果が期待できる。
2)糖尿病性腎症に対する蛋白質制限の有効性については、現在まで十分なエビデンスが得られていない。蛋白制限食の有効性が確認されれば、糖尿病性腎症の食事療法の確立に向けて大きな成果となる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-28
更新日
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