成人T細胞性白血病(ATL)をモデルとしたウイルス感染関連がんに対する革新的治療法の開発(臨床研究実施チームの整備)

文献情報

文献番号
200501383A
報告書区分
総括
研究課題名
成人T細胞性白血病(ATL)をモデルとしたウイルス感染関連がんに対する革新的治療法の開発(臨床研究実施チームの整備)
課題番号
H16-チム(がん)-017
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 雅雄(京都大学ウイルス研究所感染免疫研究領域)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究【若手医師・協力者活用等に要する研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,878,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では難治性血液悪性腫瘍である成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia: ATL)に対して骨髄非破壊的移植療法(ミニ移植)の有効性を明らかにすると共にヒトT細胞白血病ウイルスI型(human T-cell leukemia virus type I: HTLV-I)の分子生物学的解析、ウイルスに対する宿主の免疫反応の解析を行うことによって移植療法有効性の分子基盤を解明し、この研究をウイルスによる悪性腫瘍に対する治療法開発のモデルとすることを目的とする。
研究方法
1)移植症例におけるHTLV-Iプロウイルスの解析:移植症例のtax遺伝子発現と移植成績の関連を明らかにすることによって移植療法有効性の基盤を解明するために5'LTRのメチル化を解析した。
2)移植症例のtax遺伝子配列:同種造血細胞移植後に完全寛解を維持している4症例においてパラフィン標本からDNAを回収しtax遺伝子配列を解析した。
結果と考察
HTLV-IプロウイルスにおけるDNAメチル化の解析では9例の移植症例において5'LTRのDNAメチル化をCOBRA法により解析したところ5例でメチル化を認めず4例で部分的なメチル化(35.1, 35.0,17.4, 16.4%)を確認した。我々の研究からATLでは約半数の症例でTaxの発現が認められないことが明らかとなっている。その機序として1)tax遺伝子の変異・欠失、2)5'LTRの高メチル化、3)5'LTRの欠失が存在する。5'LTRは高度にメチル化された時にtax遺伝子の転写が抑制されることが明らかになっており解析した移植症例ではtax遺伝子の配列も保たれ転写可能であることが示された。移植症例のパラフィン標本を用いた解析では2例でmissense mutationを検出したがnon-sense mutation, deletion等は認めなかった。これまでの解析結果より移植症例では全例、tax遺伝子配列が保たれており、また発現可能な構造であった。taxを発現できない構造のATLは予後不良であり、移植可能な状態になっていない可能性があり、今後の重要な検討課題である。
結論
移植症例のHTLV-Iプロウイルスの解析によりミニ移植有効性の免疫学的機序が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
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