若年者骨髄性造血器腫瘍を対象とした骨髄破壊的前処置と骨髄非破壊的前処置を用いた同種末梢血幹細胞移植の比較的検討(第Ⅲ相ランダム化盲検比較試験)

文献情報

文献番号
200500493A
報告書区分
総括
研究課題名
若年者骨髄性造血器腫瘍を対象とした骨髄破壊的前処置と骨髄非破壊的前処置を用いた同種末梢血幹細胞移植の比較的検討(第Ⅲ相ランダム化盲検比較試験)
課題番号
H16-がん臨床-019
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 修一(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液科)
研究分担者(所属機関)
  • 高上 洋一(国立がんセンター中央病院 薬物療法部)
  • 中尾 眞二(金沢大学大学院医学系研究科 がん医科学専攻機能再生学講座)
  • 原田 実根(九州大学大学院医学研究院 病態修復内科学)
  • 今村 雅寛(北海道大学大学院医学系研究科 血液内科学)
  • 山下 卓也(東京都立駒込病院 血液内科)
  • 澤田 賢一(秋田大学医学部 内科学講座)
  • 森下 剛久(愛知県厚生農業協同組合連合会 昭和病院 血液化学療法科)
  • 小川 啓恭(兵庫医科大学 内科学講座血液内科)
  • 原  雅道(愛媛県立中央病院 血液内科)
  • 河野 文夫(国立病院機構 熊本医療センター 臨床研究部)
  • 豊嶋 崇徳(国立大学法人 九州大学病院 遺伝子・細胞療法部)
  • 武元 良整(医療法人幸良会 シーピーシークリニック)
  • 吉村 邦彦(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 呼吸器センター内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
26,988,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、骨髄非破壊的前処置を用いた同種造血幹細胞移植(ミニ移植)が、骨髄破壊的移植法(フル移植)に代わって標準的同種移植療法となりうるか否かを検証することである。ミニ移植は主にフル移植が施行できない高齢者で発展してきたが、20歳から50歳までの両方の移植法が可能な世代で比較試験を行う。
研究方法
比較試験はミニ移植群で移植後早期の生存率が優れている点とその時期の治療関連毒性が少ない点に注目して、QOLで調整した生存期間(QOL-adjusted life year: QALY)を主要評価項目とした。2005年度は同種移植領域におけるQOLの評価方法を確立する臨床試験を行った。QOL評価は、フル移植10例、ミニ移植10例、計20例を目標症例数とした。評価方法は、FACT-BMT、SF-36、EQ-5D、Time trade-off法の4種類の異なったQOL評価法により多方面からの評価を行う。より客観性を高める目的にて、専門のインタビュアーが担当する。この臨床試験は都内4施設(東京大学・国立がんセンター中央病院・都立駒込病院・虎の門病院)で行う。
結果と考察
QALYを主要評価項目とするフル移植とミニ移植の臨床第3相比較検討を行うことを目的としているが、現段階では同種移植においてQOL評価法が確立していない。同種移植においては、移植前処置を受け、無菌室内で過ごす血球減少期、生着後の急性移植片宿主病(GVHD)発症期(移植後100日まで)、それ以降の慢性GVHD罹病期に大きく別れる。各々独特の化学療法とは異なる毒性があり、原疾患は無病であっても長期にわたりQOLが低下している症例も多数存在する。これらの時期のQOLの評価を行うことは移植療法の実質的な有効性を評価する上でも重要な試験である。ただし、虎の門病院において現在5例が登録されたが、2例が再発と移植片拒絶で死亡しており、実際上は評価できない状況となっており、今後症例数を増加するか、評価法を変更する必要がある。
結論
同種移植領域におけるQOL評価方法の確認を多施設で行った。 登録症例全例が目標の期間生存するわけではなく、評価法の変更が必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-05-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200500493B
報告書区分
総合
研究課題名
若年者骨髄性造血器腫瘍を対象とした骨髄破壊的前処置と骨髄非破壊的前処置を用いた同種末梢血幹細胞移植の比較的検討(第Ⅲ相ランダム化盲検比較試験)
課題番号
H16-がん臨床-019
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 修一(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液科)
研究分担者(所属機関)
  • 高上 洋一(国立がんセンター中央病院 薬物療法部)
  • 中尾 眞二(金沢大学大学院医学研究科 がん医科学専攻機能再生学講座)
  • 原田 実根(九州大学大学院医学系研究院 病態修復内科学)
  • 今村 雅寛(北海道大学大学院医学系研究科 血液内科学)
  • 山下 卓也(東京都駒込病院 血液内科)
  • 澤田 賢一(秋田大学医学部 内科学講座)
  • 森下 剛久(愛知県厚生農業協同組合連合会 昭和病院 血液化学療法科)
  • 小川 啓恭(兵庫医科大学 内科学講座血液内科)
  • 原  雅道(愛媛県立中央病院 血液内科)
  • 河野 文夫(国立病院機構 熊本医療センター 臨床研究部)
  • 豊嶋 崇徳(国立大学法人 九州大学病院 遺伝子・細胞療法部)
  • 武元 良整(医療法人幸良会 シーピーシークリニック)
  • 吉村 邦彦(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 呼吸器センター内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来型の同種移植は腫瘍細胞を絶滅させる目的にて、移植前に超大量の放射線や抗がん剤を投与するため(骨髄破壊的前処置、フル移植)、それに耐えうる臓器機能が維持された症例(通常55歳以下)だけがその対象であった。ミニ移植は、同種移植の高い非再発率は同種免疫反応による抗腫瘍効果が主体であるという考え方に基づいて、移植前治療は移植を成立させる目的だけの免疫抑制治療にとどめている(骨髄非破壊的前処置)。本研究の目的は、ミニ移植がフル移植に代わって標準的同種移植療法となりうるか否かを検証することである。ミニ移植は主にフル移植が施行できない症例で発展してきたが、20歳から50歳までの両方の移植法が可能な世代で比較試験を行う。
研究方法
ミニ移植の最大の特徴である移植後早期のQOLが維持される点に着目し、QOLで調整した生存期間(QOL-adjusted life year、QALY)を主要評価項目とする比較試験を行う。しかし同種移植領域における適切なQOL評価法がないため当研究班においてを移植前後の毒性から、移植後中後期のQOLに大きく寄与すると思われる移植片宿主病まで視野に入れたQOL評価法を確立する。同時にミニ移植のより安全で有効な移植前治療法を確立する目的にて、フル移植の標準的治療法であるBusulfan(BU)+ Cyclophosphamide(CY)からCYの毒性を回避するために、より安全に投与可能なFludarabine (Flu)に変更し、抗腫瘍効果の主体であるBUは減量しないFlu/BU16mg/kgによる臨床試験を開始する。
結果と考察
QOL評価研究は、既に研究計画書は完成し、平成17年度に国立がんセンター、東大病院、都立駒込病院、虎の門病院で本研究計画書を倫理委員会に提出した。倫理委員会を通過した虎の門病院において現在5例が登録されたが、2例が再発と移植片拒絶で死亡しており、実際上は評価できない状況となっており、今後症例数を増加するか、評価法を変更する必要がある。Flu/BUの前処置については。虎の門病院と国立がんセンター中央病院との2施設共同研究として、倫理委員会にて申請する段階である。
結論
同種造血幹細胞移植領域におけるQOL評価法を確立する臨床試験が進行し、若年者も含めた年齢層でのFlu/BU16mg/kgの臨床試験を開始する。

公開日・更新日

公開日
2006-05-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500493C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の目的は、ミニ移植がフル移植に代わって標準的同種移植療法となりうるか否かを検証することである。ミニ移植は主にフル移植が施行できない高齢者層で発展してきたが、本試験では20歳から50歳までの両方の移植法が可能な世代で比較試験を行う。primary endpointは対象症例のQOLで調整した生存期間とした。第一段階として、同種移植領域におけるQOL評価法を確立する。
臨床的観点からの成果
同種造血幹細胞移植は、移植前の抗がん剤や放射線が投与され、移植前後の汎血球減少が強く、クリーンルーム内で過ごす移植後早期と移植片宿主病やウイルス感染が問題となる移植後中後期に各々独特の合併症が見られる。QOLで調整した生存期間の比較は、造血器悪性腫瘍の治療法を選択する際に、QOLまで加味した生存期間を評価することはいわゆる合併症による不利益まで含めた評価となりうる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
白血病などの造血器悪性腫瘍の発症は50歳を超えると指数関数的に増加する。化学療法の成績も限界があり、特にこの年齢での長期生存率は極めて低い。ミニ移植では、移植前の抗がん剤の毒性は極めて低く、移植後の同種免疫反応で白血病の治癒を目指すもので、高齢者における生存率を大きく改善する可能性がある。
その他のインパクト
最近、臍帯血を用いたミニ移植が虎の門病院を中心に開発されている。高齢者におけるミニ移植はドナーも高齢となるために実際に施行可能な症例は限られていた。現在、臍帯血は成人でも90-95%の症例に同種移植医療を提供できる。これを組み合わせた臍帯血ミニ移植の確立はドナーや年齢の壁を越えて同種移植医療を可能とし、高齢者の血液治療を大きく変える可能性がある。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
118件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
59件
学会発表(国際学会等)
69件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-