子宮頸がんの予後向上を目指した集学的治療法における標準的化学療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200500490A
報告書区分
総括
研究課題名
子宮頸がんの予後向上を目指した集学的治療法における標準的化学療法の確立に関する研究
課題番号
H16-がん臨床-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
嘉村 敏治(久留米大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 笠松 高弘(国立がんセンター中央病院)
  • 喜多川 亮(久留米大学医学部)
  • 吉川 裕之(筑波大学臨床医学系)
  • 齋藤 俊章(国立病院機構九州がんセンター)
  • 佐治 文隆(国立病院機構呉医療センター)
  • 小西 郁生(信州大学医学部)
  • 岩坂 剛(佐賀大学医学部)
  • 波多江 正紀(鹿児島市立病院)
  • 櫻木 範明(北海道大学医学部)
  • 山本 嘉一郎(近畿大学医学部堺病院)
  • 杉山 徹(岩手医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
21,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
子宮頸がんの予後向上を図るためにこれまでの手術療法、放射線療法に加えて化学療法を導入することが試みられている。現在の世界の標準化学療法はcisplatinとpaclitaxelの2併用療法(TP療法)である。しかし、この薬剤による併用療法は副作用が強く、子宮頸がんでよくみられる腎機能が低下した症例に関しては十分な治療ができない。そこでcisplatinのかわりに副作用の少ないcalboplatinをpaclitaxelと併用したTJ療法を子宮頸がんに対する新たな化学療法として確立することを目的とした。
研究方法
再発子宮頸がんを対象としてTJ療法について第2相試験を分担研究者の施設を中心に行い、その結果が米国で標準治療となっているTP療法に匹敵する治療効果があると判断されたならば、この両者を正確に比較するために無作為化比較試験(臨床第3相試験)を行うこととした。副作用はcisplatinよりもcarboplatinの方が少ないことはこれまでの研究で明らかになっているので、この比較試験ではTP療法に対するTC療法の全生存期間における非劣性という仮説を証明することを目的としている。
結果と考察
第2相試験でTJ療法は過去に米国で報告されたTP療法と遜色のない抗腫瘍効果を示した。一方副作用は軽度であった。そこでTP療法をコントロール群、試験群としてTJ療法をおいて、primary endpointを全生存期間とし、それぞれに125例ずつ登録することにした無作為化比較試験の計画書(プロトコール)を完成させた。このプロトコールは国立がんセンターが中心となっている多施設共同研究グループ(JCOG)の運営委員会でその妥当性が承認された。そこで平成17年度末よりJCOG婦人科腫瘍グループの30施設において、それぞれの施設の倫理委員会で承認された施設から症例の登録を開始した。TJ療法は子宮頸がんの治療法として抗腫瘍効果、副作用の両面から有用であることが推察された。
結論
臨床第3相試験においてTJ療法の有用性が証明されれば、子宮頸がんの標準的化学療法として集学的治療に導入できる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200500490B
報告書区分
総合
研究課題名
子宮頸がんの予後向上を目指した集学的治療法における標準的化学療法の確立に関する研究
課題番号
H16-がん臨床-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
嘉村 敏治(久留米大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 笠松 高弘(国立がんセンター中央病院)
  • 喜多川 亮(久留米大学医学部)
  • 吉川 裕之(筑波大学臨床医学系)
  • 清水 敬生(癌研究会附属病院)
  • 梅澤 聡(癌研究会附属病院)
  • 葛谷 和夫(愛知県立がんセンター)
  • 齋藤 俊章(国立病院機構九州がんセンター)
  • 佐治 文隆(国立病院機構呉医療センター)
  • 小西 郁生(信州大学医学部)
  • 岩坂 剛(佐賀大学医学部)
  • 波多江 正紀(鹿児島市立病院)
  • 櫻木 範明(北海道大学医学部)
  • 山本 嘉一郎(近畿大学医学部堺病院)
  • 杉山 徹(岩手医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
子宮頸がんに対してはこれまで手術、放射線による集学的治療法が行われてきた。しかしながら最近20年間で生存率の改善は認められていない。そこで両者以外の治療法を取り入れた集学的治療法を開発する必要がある。現在その効果が期待されるものとして抗がん剤を用いた化学療法がある。現在米国ではいくつかの臨床第3相試験が行われており、その結果子宮頸がんに対する標準的な化学療法はpaclitaxelとcisplatinを組み合わせたTP療法となっている。しかしながらcisplatinは腎毒性や末梢神経障害などの副作用があり、輸液による尿量確保が必要で入院を必要とする。一方同じプラチナ製剤であるcarboplatinはそれらの副作用が軽度である。そこでcisplatinの代わりにcarboplatinをpaclitaxelと組み合わせたTJ療法がTP療法に代わって標準的化学療法になり得るかどうかを検討することを目的とした。
研究方法
再発子宮頸がんを対象としてTJ療法について臨床第2相試験を行い、その結果がTP療法に匹敵するものであれば、この両者に対して無作為化比較試験(臨床第3相試験)を行うこととした。副作用はcisplatinよりもcarboplatinの方が少ないことはこれまでの研究で明らかであるので、この比較試験ではTP療法に対するTC療法の全生存期間における非劣性という仮説を証明する。
結果と考察
臨床第2相試験には41例の再発子宮頸がんの症例を登録した。奏効率は59%、無増悪期間の中央値は4.9ヶ月、全生存期間の中央値が9.4ヶ月であり、この結果は米国で報告されたTP療法の結果とほぼ同等であった。そこでTP療法とTJ療法を比較する臨床第3相試験に進むこととした。primary endpoint は全生存期間とし、それぞれの群に125例づつの登録を目標として臨床試験計画書を完成させた。この計画書はJCOG運営委員会で承認され、平成17年3月よりJCOG婦人科腫瘍グループ30施設で登録を開始した。本研究によりTJ療法がTP療法と同等以上の抗腫瘍効果を示すならば、その副作用が軽いことにより、標準治療とすることができる。
結論
これまで手術療法と放射線療法が主体であった子宮頸がんの集学的治療に、新たにTJ療法を加えることが可能になると考えられ、予後向上につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500490C

成果

専門的・学術的観点からの成果
臨床第2相試験から無作為化比較試験である臨床第3相試験を行い、科学的に有効な化学療法を選択するプロトコールを完成させてJCOG婦人科腫瘍グループ30施設で実行している。
臨床的観点からの成果
従来から子宮頸がんに対して行われてきた手術療法、放射線療法に化学療法を加えた新たな集学的治療法の確立の可能性が高まった。
ガイドライン等の開発
現在、日本婦人科腫瘍学会では、卵巣がん、体がん、子宮頸がんの治療ガイドラインを作成中であり、それらは構造化抄録をつけて日本癌治療学会にも提出される予定である。本助成金による臨床第3相試験の結果が明らかになれば将来子宮頸がんガイドラインに取り入れられることになる。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
92件
その他論文(和文)
28件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
52件
学会発表(国際学会等)
22件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-