義足構造強度試験機の開発に関する研究

文献情報

文献番号
199700046A
報告書区分
総括
研究課題名
義足構造強度試験機の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
相川 孝訓(国立身体障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生省の「補装具の種目、受託報酬の額等に関する基準」に掲げられている義足の強度、耐久性、安全性等の性能評価は、切断者が義足を安全に使用するための大切な用件である。今回ISOにおいて、義足の構造強度試験に関する国際規格が、ISO10328-1~ISO10328-8の8分冊の形で1996年に制定され、義足の構造強度に関する全世界的な基準が決定された。国内でもこの規格を翻訳して翌年の1997年にJIS T0111が制定された。これらの規格において義足を一体構造として実施する構造強度試験が規定されているが、このための試験機は国内外で徐々に開発され、試験も行われて来ている。しかしながら、同一の規格内で規定されているその他の構造強度試験については試験機の開発や試験の実施がまだあまり行われていない。本研究では、このその他の構造強度試験方法で規定されている足部・足継手部の試験、ねじり試験、膝最大屈曲止めの試験等について、試験実施可能な試験用冶具を開発し、義足の各種試験について十分な試験評価の実施を可能にしようとするものである。
研究方法
義足の試験評価のためのJIS規格であるJIS T0111は「義肢-義足の構造強度試験」という題名で、第1部から第8部までの8部で構成される。この第5部の副題が「その他の構造強度試験方法」、第6部が「その他の構造強度試験方法の試験負荷パラメータ」になり、各種試験方法が規定されている。しかしながら、実際の試験機に関する規定はほとんどなく、これらの試験が実施可能な試験機は、1つ1つの試験毎に研究開発の必要がある。専用の試験機を開発することは多大な費用と長期間を要するため、今回の開発の方法としては、万能材料試験機や油圧サーボ汎用試験システムに取り付けられる専用冶具を開発することにより、試験機を効率的に開発することにした。具体的には以下のようになる。1.足部・足継手部の試験について開発された試験用冶具について機能を確認し、改良を実施する。2.義足のねじり試験用冶具、試験機を開発する。3. 義足膝部の膝最大屈曲止めの試験用冶具、試験機を開発する。4. 予備試験を実施する。試験結果を検討して、冶具、試験機の改良、開発を行う。
結果と考察
義足の足部・足継手部の試験用冶具はMTS製多チャンネル油圧サーボ試験システムに取り付ける冶具を以前に開発したが、予備試験の結果いくつかの問題点が見つかった。足部及び踵部の負荷の作用部位がずれているのと、無負荷のときに加振機の拘束が無い点が問題になった。そこで、負荷の作用位置は足板の取り付け位置を変更することにより修正し、拘束はばね機構を追加する改良を行った。この改良の結果、所定の機能が実現できるようになった。
義足のねじり試験は、義足のねじり強度の確認とすべりに対する固定状態の安全性を確認するために実施する試験である。対象とする部品は組み立てられた義足の全部品であり、試験内容としては静的許容試験のみになる。最大ねじりモーメントは35Nmで、実際の負荷作用の手順は規定されている。この試験の実現のために、2種類の試験機用の冶具を開発した。1つは万能材料試験機インストロン1125型用の冶具で、もうひとつはMTS社製多チャンネル油圧サーボ試験システム用の冶具である。それぞれの試験機への取り付けの部分が異なっているだけで、基本的な構造は同一である。試験サンプルは両端をパイプとしてこの部分を治具で固定するものとして冶具を設計した。ただ、固定部でパイプの中心と回転中心が必ずしも一致するとは限らないため、ユニバーサルジョイントを組み込んで、中心のずれがあっても余計な負荷が加わらない構造にした。この結果、通常の試験サンプルは問題なく固定することが可能になった。
義足膝部の膝最大屈曲止め試験は、切断者が膝立ちをしたり、膝を深く曲げる姿勢をして義足の膝を最大屈曲位にすると、義足には高い負荷がかかるため、通常の使用条件下での安全性を確認するための構造強度試験である。試験内容としては静的試験になり、仮想レバーアームが400?、静的許容試験荷重が1750Nと規定されている。この試験の実現のために、テンシロン万能材料試験機に取り付け可能な冶具を開発した。この冶具においても、試験サンプルの取り付け部位はパイプになり、パイプを固定できるように構成した。また、アライメントの多様性による取り付け位置の変化に対応するために、屈曲部分にボールジョイントを組み込んである。膝を屈曲させて試験するので治具の部分、即ち股関節、足関節に相当する部分で屈曲が可能な構造にする必要があり、この部分は基本的に一軸の構造であるが、多少の逃げが可能な構造になっている。実際に取り付けて負荷しても無理な荷重は加わらないようになっていることが確認できた。
結論
義足の足部・足継手部の試験用冶具の改良、義足のねじり試験用冶具の開発、義足膝部の膝最大屈曲止めの試験用冶具の開発を行った。これらの冶具は対応した試験機に取り付けることにより所定の試験の実施が可能で十分な機能があることが確認された。しかしながら、予備試験はまだ十分ではなく、今後、さらに試験を実施してその結果により改良を進めていきたい。

公開日・更新日

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更新日
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