地域がん登録の法的倫理的環境整備に関する研究

文献情報

文献番号
200500480A
報告書区分
総括
研究課題名
地域がん登録の法的倫理的環境整備に関する研究
課題番号
H16-3次がん-038
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
丸山 英二(神戸大学大学院法学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 甲斐 克則(早稲田大学大学院法務研究科)
  • 寺沢 知子(摂南大学法学部)
  • 山下 登(神戸学院大学法学部)
  • 田中 英夫(大阪府立成人病センター調査部調査課)
  • 掛江 直子(国立成育医療センター研究所成育政策科学研究部成育保健政策科学研究室)
  • 松田 智大(国立保健医療科学院疫学部)
  • 増成 直美(財団法人放射線影響研究所)
  • 旗手 俊彦(札幌医科大学医学部医学科)
  • 佐藤 雄一郎(横浜市立大学医学部医学科)
  • 小笹 晃太郎(京都府立医科大学大学院・地域保健医療疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は,地域がん登録について,精度向上の観点と,個人情報保護やインフォームド・コンセントの理念などの法的倫理的観点から,そのあり方を指針のかたちで提示することによって,国民の理解と信頼のもとで実施されるがん登録事業を推進することである。その目的のために,わが国のがん登録の実情とそれを取り巻く法制度を調査するとともに,海外の主要国のがん登録事業および国際がん登録協議会の実態・活動を把握し,法律,生命倫理の観点からの検討を加える。
研究方法
 研究は,研究者各自の文献やデータベースによる調査,地域がん登録全国協議会総会への参加,がん登録実務者との意見交換会,公開報告会,諸外国のがん登録実務者とのやりとり,海外の現地調査などにより得られた情報をとりまとめ,6回にわたり開催した研究班会議における議論を踏まえて集約を行った。
結果と考察
 主要諸国の地域がん登録法制の調査の結果,情報の届出・採録に患者の同意を必要とするところは少ないが,フランス,ドイツ,イギリスなどで,患者に登録の拒否権が認められており,その前提として,がん登録に関して患者に説明することが義務づけられていること,本人からの開示請求に応じているところがヨーロッパではほとんどで,米加豪でも,かなりの州で開示請求が可能になっていること,などが判明した。
 わが国の地域がん登録のあり方に関しては,登録に対する拒否権・登録情報の削除請求権の保障,自分のがん罹患情報の開示請求に対する対応,患者の予後情報の協力医療機関への提供,の各問題について検討した。現在の制度を前提として考えるとき,登録拒否権に関しては法令条例上想定されておらず,登録情報の開示請求や予後情報提供に関しては条例が適用され,そこでは,個人情報保護審議会の判断が重要であることが把握できた。開示請求に対する対応に関しては,医師・医療機関の関与を求める意見があった。
結論
 登録拒否権・削除請求権,自分の情報の開示請求,協力医療機関に対する予後情報提供,の各問題に適用されるのは主に道府県市の個人情報保護条例であった。このことは,統一的な制度構築の点で問題があり,また,個人情報保護法とそれに先行する個人情報保護条例とでは内容にかなりの相違がある。したがって,将来的には,法律に基づいて全国的に展開されるがん登録事業に移行することが望ましい。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
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