がん医療経済と患者負担最小化に関する研究

文献情報

文献番号
200500477A
報告書区分
総括
研究課題名
がん医療経済と患者負担最小化に関する研究
課題番号
H16-3次がん-034
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
濃沼 信夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中憲一(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
  • 西澤 理(信州大学医学部)
  • 江口研二(東海大学医学部)
  • 岡本直幸(神奈川県立がんセンター)
  • 中山富雄(大阪府立成人病センター)
  • 下妻晃二郎(流通科学大学サービス産業学部)
  • 小澤敬也(自治医科大学)
  • 河島光彦(国立がんセンター東病院)
  • 廣中秀一(静岡県立静岡がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、医療財源の逼迫に伴う患者(窓口)負担の増加が顕著なものとなり、高額な抗がん剤や医療機器の登場、長い臨床経過などで、患者の経済的負担は大きな悩みとなりつつある。本研究は、がん医療に投じられる莫大な資源に見合う成果が得られているかを、医療経済学の立場から検証することにより、質、効率、安全に優れ、患者負担が最小化となるがん医療の実践に役立つ基礎的資料をうることを目的とする。
研究方法
全国の中核的ながん診療施設35病院を対象に、①外来を受診した15才以上のがん患者を対象にした調査、②陽子線治療、造血器腫瘍の治療、消化器がんに対する化学療法など、治療費が高額となるがん患者を対象にした調査、③がん診療に従事する医師を対象にした調査、を実施した。調査は質問紙による自計調査とし、説明して配布し郵送で回収した。調査は、倫理委員会の承認を得るとともに回答は匿名とし、連結不可能のデータ処理を行った。
結果と考察
がん患者に対する調査は4,174名(回収率52.1%)、陽子線治療、造血器腫瘍など、治療費が高額となるがん患者に対する調査は302名より回答をえた。また、がん臨床医を対象とする調査は691名(回収率32.5%)から回答をえた。直接費用(がん治療で患者が医療機関の窓口に支払った金額)の平均年額は、入院50.6万円、外来12.9万円、間接費用は、交通費6.1万円、健康食品・民間療法20.8万円、その他費用12.6万円、民間保険料25.5万円である。
直接費用と間接費用を単純に合計すると(すべての項目に該当する患者の場合)、128.5万円である。がん患者の半数が高額療養費の対象となり、患者の8割が民間保険に加入している。がんに対する分子標的治療薬には、薬価に収載されたものでも高額なものが登場し、陽子線治療のような新しい治療法は高額であり、医療費の支払いに貯蓄の取り崩しや民間保険の給付金をあてる患者が少なくない。
結論
がん罹患による仕事や経済面への影響は大きく、臨床現場でも制度上も、患者の経済的負担を軽減するための十分な配慮が必要と考えられる。また、陽子線治療を例外にして、経済的負担に関する説明(インフォームド・コンセント)は不十分な状況にあり、データベースの整備など、経済的負担に関する情報提供システムの構築が急務と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-27
更新日
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