QOLの向上をめざしたがん治療法の開発研究

文献情報

文献番号
200500474A
報告書区分
総括
研究課題名
QOLの向上をめざしたがん治療法の開発研究
課題番号
H16-3次がん-031
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 茂昭(国立がんセンター東病院)
研究分担者(所属機関)
  • 林  隆一(国立がんセンター東病院)
  • 井本  滋(国立がんセンター東病院)
  • 名川 弘一(東京大学大学院医学系研究科)
  • 齋藤 典男(国立がんセンター東病院)
  • 松岡 直樹(国立がんセンター中央病院)
  • 内田 淳正(三重大学医学部)
  • 中塚 貴志(埼玉医科大学)
  • 佐々木 寛(東京慈恵会医科大学)
  • 山岸 久一(京都府立医科大学)
  • 荒井 保明(国立がんセンター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
77,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 多くのがん治療においては有害事象を避けられない。このため、がん患者は常にQOLを犠牲にしながら根治を得ていると言える。また、不幸にして非根治となった場合は、がんの病勢進行に伴う様々な身体症状の出現が、がん患者のQOLを著しく障害し、精神的な苦痛を一層助長する結果を招来する。本研究はこの様ながん患者の身体機能の低下に由来するQOLの障害を最小限にとどめるための様々な治療法を開発することによって、がん患者の社会的復帰、あるいは日常生活の質の向上に寄与することを目的としている。
研究方法
 研究の方向性は以下の二点に大別される。一つは、切除可能例に対して根治性を犠牲にせずに機能温存や臓器温存を可能とする治療法の開発であり、他の一つは、がんの治療あるいは病勢進行に伴って損なわれる患者のQOLの障害を最小化するための各種治療法の開発である。これらは、いずれも日常診療の中での問題意識や創意工夫を基盤として発想されるいわゆる臨床研究の範疇であり、基本的には薬剤開発に準拠して、前臨床試験、第Ⅰ相試験(feasibility試験)から、第Ⅱ相試験に相当する有効性と安全性の検証試験、更に必要な場合は第Ⅲ相試験に相当する無作為化比較試験へと相別に評価を行う。但し、第Ⅲ相の部分については、当班のみでは人的資源も限られることから、他の研究グループとの共同研究とする。
結果と考察
 今年度は前年度に得られた研究成果の一層の進展が図られ、多くの新たな知見が示されたが、中でも、①下咽頭がんの部分切除による喉頭機能温存手術の標準化、②進行下部直腸癌(前立腺浸潤例)に対する膀胱温存手術のfeasibility評価、③食道がんに対する根治的放射線化学療法後の再発例あるいは治療不十分例に対する内視鏡的治療(PDT)の評価、④再建プレートを用いた二次的下顎再建術の安定化、⑤消化管粘膜の再生技術の開発などに新たな展開が得られた。また、今年度から新たに⑥N0乳癌に対するラジオ波を用いた局所治療のfesibility試験が開始となり、⑦集学的患肢温存手術(光線力学療法+放射線療法)については高度先進医療を申請した。また、⑧術後のリンパ浮腫を予防する婦人科悪性腫瘍手術法および症状緩和としてのIVR技術の開発については第Ⅱ相試験が進行中である。
結論
 現在取り組んでいる研究課題の進捗状況は順調であり、特段の問題点は指摘されない。また、開発的な治療技術については手技の安定化(標準化)と再現性の評価が課題となるが、臨床試験の方法論に準拠することで充分対応可能である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-