新戦略に基づく抗がん剤の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500471A
報告書区分
総括
研究課題名
新戦略に基づく抗がん剤の開発に関する研究
課題番号
H16-3次がん-028
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
江角 浩安(国立がんセンター東病院臨床開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 国元 節子(微生物科学研究会沼津創薬医科学研究所)
  • 北 潔(東京大学大学院医学研究科国際保健学専攻)
  • 田中 雅嗣(東京都老人総合研究所)
  • 上野 隆(順天堂大学医学部)
  • 門田 守人(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 松村 保広(国立がんセンター研究所支所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
77,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、画期的がん治療法の開発を目指し、多くのがんで共通に見いだされる、がん組織の構造と機能の異常を明らかにし、これを標的とした治療薬を生み出そうとするものである。本研究は、がん組織の低酸素を中心とした、正常組織にはない特徴を標的とするものであり、特に低酸素下でのエネルギー産生機構に注目する研究である。がんに対する特異性のみならず、汎用性も期待される。
研究方法
がん細胞の、低酸素・低栄養に対する適応反応を利用した薬剤のスクリーニング系を作り新しい候補薬を探す。更にこの適応反応のメカニズムを明らかにするための遺伝子学的、生化学的解析を行う。また、がん組織の特徴である血管網の異常を利用したドラッグデリバリーシステムを用い、有効で副作用の少ない薬剤を開発し臨床導入を目指す。
結果と考察
キガマイシンは、膵臓がん細胞に対する栄養飢餓状態での選択的毒性を指標として発見された薬剤であるが、PI3キナーゼ阻害活性とともにv-ATPase阻害活性があった。このため、細胞内小器官のpH分布を著しく変化させ、ゲムシタビン、アドリアマイシンなどの細胞毒性を顕著に増強したが、マウスでの副作用は増強しなかった。哺乳類ミトコンドリアにおける嫌気的エネルギー代謝の実体を明確にした。がん細胞の特徴として、自食反応を芽生損に関わることを見いだした。がん組織の血管構造・機能の異常を利用したミセル型の薬剤を開発し、有効性の増強と副作用の軽減を確認した。
結論
がん組織の血流不足にがん細胞が適応する反応を標的にした薬剤のスクリーニングにより見出されたものには抗腫瘍性があること、その内のキガマイシンには従来の抗がん剤に対する強いがん特異的増感作用があることなどから、この癌治療戦略はがん特異性が高く有望であることがわかった。嫌気的エネルギー産生機構の解明に近づいた。腫瘍組織に特異的血管構築の異常を利用したDDSは有効であ利、臨床導入を開始した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
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