新しい検診モデルの構築と検診能率の向上に関する研究

文献情報

文献番号
200500463A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい検診モデルの構築と検診能率の向上に関する研究
課題番号
H16-3次がん-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
土屋 了介(国立がんセンター中央病院副院長)
研究分担者(所属機関)
  • 江口 研二(東海大学医学部)
  • 児玉 哲郎(栃木県立がんセンター)
  • 池田 徳彦(国際医療福祉大学附属三田病院)
  • 遠藤 登喜子(国立病院機構名古屋医療センター)
  • 柿沼 龍太郎(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)
  • 金子 昌弘(国立がんセンター中央病院)
  • 村松 幸男(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)
  • 光冨 徹哉(愛知県がんセンター)
  • 濱島 ちさと(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
81,870,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 肺がん、乳がんについて新たな検診モデルを構築し検診能率の向上を図ることを目的とする。
研究方法
 診療放射線技師が検診CT画像の一次読影を担当する胸部CTスクリーナー関して全国アンケート調査を実施した。肺がんCT検診でretrospectiveに同一集団の繰り返しによる効果を解析し、肺がんの発見率の推移やstage shiftの有無を検討した。デジタルマンモグラフィのモニタの表示機能をファントムの画像と臨床画像を用いて検討した。乳がん検診におけるPET検査の有用性をマンモグラフィと超音波で発見された乳がんをgold standardとして検討した。
結果と考察
 アンケートの結果では、医師および診療放射線技師とも90%以上が、今後胸部CTスクリーナーが必要になると返答した。望まれる業務内容は存在診断,病変部の追加撮影,精度管理であり、講習会テキスト原案を作成した。
 胸部CTスクリーナー制度のエビデンスを確立するために肺がんCT検診の画像を読影している医師と読影トレーニングを経た診療放射線技師の検診CT画像上での肺結節の存在診断能を比較するための読影実験を実施した。同一集団のデータを用いて肺がん高危険群における繰り返しCT検診の有用性を検討した。平均3.5年の繰り返し検診において、浸潤性腺がんのみにstage shift 効果と発見率の減少を有意に認めた。末梢型の肺腺がんは世界的に増加しており、CT検診が検診対象や間隔を適切に選択することにより、効率のよい検診となりうることが示唆された。デジタルマンモグラフィのモニタ診断にあたり、表示解像度が5万画素数以下の液晶モニタによるファントム画像はハードコピーに及ばない項目が多く、臨床画像の主観的評価はハードコピーには及ばない結果であった。PET検査の乳がんの感度は43%であり、 PETは腫瘤を有する浸潤性乳がんの診断に有用であったが、石灰化を有する非浸潤性乳がんの診断に有用でないことが明らかとなった。
結論
 新しい検診モデルとしての胸部CTスクリーナー制度の原案を検討した。本制度のエビデンスを確立するための読影実験を実施中である。肺がん高危険群の同一集団に対する繰り返しCT検診では浸潤性肺腺がんのstage shift 効果があることが判明した。乳がん検診においては、デジタルマンモグラフィの液晶モニタによる画像診断には機器の品質管理と読影診断法について指針作成が必要であること、PET検査に関しては現時点では付加的な検診方法であることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200500463B
報告書区分
総合
研究課題名
新しい検診モデルの構築と検診能率の向上に関する研究
課題番号
H16-3次がん-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
土屋 了介(国立がんセンター中央病院副院長)
研究分担者(所属機関)
  • 土屋 了介(国立がんセンター中央病院)
  • 江口 研二(東海大学医学部)
  • 児玉 哲郎(栃木県立がんセンター)
  • 池田 徳彦(国際医療福祉大学附属三田病院)
  • 遠藤 登喜子(国立病院機構名古屋医療センター)
  • 柿沼 龍太郎(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)
  • 金子 昌弘(国立がんセンター中央病院)
  • 村松 幸男(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)
  • 光冨 徹哉(愛知県がんセンター)
  • 濱島 ちさと(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)
  • 林 同文(東京大学大学院医学系研究科)
  • 岡山 明(国立循環器病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 肺がん、乳がんについて新たな検診モデルを構築し検診能率の向上を図ることを目的とする。
研究方法
 診療放射線技師が検診CT画像の一次読影を担当する胸部CTスクリーナー関して検討した。肺がんCT検診でretrospectiveに同一集団の繰り返しによる効果を解析し、肺がんの発見率の推移やstage shiftの有無を検討した。検診の効率化のためコンピュータ診断支援システム(CAD)の開発に取り組んだ。喀痰、口腔粘膜中の細胞のサイトメトリー解析にて肺がん患者と正常人を鑑別できるか検討した。マンモグラフィ普及に伴い後向き診断が可能である画像診断の特徴が惹起する訴訟問題への対応を検討した。
結果と考察
 新しい検診モデルとして診療放射線技師が肺がんCT検診の一次読影を担当する胸部CTスクリーナー制度を検討した。模擬講習会を想定して講習会テキスト原案を作成した。胸部CTスクリーナー制度は、検診能率の向上に寄与することが期待される。同一集団のデータを用いて肺がん高危険群における繰り返しCT検診の有用性を検討した。平均3.5年の繰り返し検診において、浸潤性腺がんのみにstage shift 効果と発見率の減少を有意に認めた。末梢型の肺腺がんは世界的に増加しており、CT検診が検診対象や間隔を適切に選択することにより、効率のよい検診となりうることが示唆された。喀痰、口腔粘膜中の細胞のサイトメトリー解析では、肺癌のリスクを示すスコアを表示するテストセットプログラムを作成した。このプログラムによれば口腔粘膜の正常細胞の解析情報のみで肺癌症例を75%の感度で抽出でき、検診の効率化に有用であることが示唆された。CAD開発のためのCT画像保存および匿名化システムを構築した。マンモグラフィ普及に伴い後向き診断が可能である画像診断の特徴が惹起する訴訟問題への対応として「review system」を検討した。検診マンモグラムの読影資格を有する医師にアンケートを発送し回収者の94%が本システムの設立を希望し、77%が参加に同意した。
結論
 新しい検診モデルとしての胸部CTスクリーナー制度を提案した。肺がん高危険群の同一集団に対する繰り返しCT検診では浸潤性肺腺がんのstage shift 効果があることが判明した。喀痰、口腔粘膜中の細胞のサイトメトリー解析が肺がん検診の対象者の選別に応用できる可能性を示した。CADを開発中である。マンモグラフィ普及に伴い後向き診断が可能である画像診断の特徴が惹起する訴訟問題対応する「review system」を検討した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500463C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 肺がん高危険群における繰り返し低線量CT検診の有用性を検討した結果、平均3.5年の繰り返し検診において、発見肺がんの中で、浸潤性腺がんのみにstage shift 効果を有意に認めたが、その他の組織型では明らかなstage shift効果を認めなかった。すなわち同一集団の繰り返し検診では、浸潤性肺腺がん減少効果を期待しうることが示唆された。
喀痰、口腔粘膜中の細胞のサイトメトリー解析が肺がん検診の対象者の選別に応用できる可能性を示した。
臨床的観点からの成果
 乳がん検診においてデジタルマンモグラフィのモニタ診断は一定の表示条件のもとではハードコピーによる診断より診断能が低下する危険性があり、導入にあたっては操作法・読影法を確立し教育することが必要である。若年者の乳がん検診を視野に入れた検診体制を構築するにはマンモグラフィと超音波の併用が不可欠であること、またPET検査に関しては現時点では付加的な検診方法であることを明らかにした。
ガイドライン等の開発
 肺癌学会集団検診委員会、胸部CT検診研究会などの合同委員会で作成した「低線量による肺癌検診に関する合同印会見解2003」について、検診現場向けに内容を充実させて「低線量CTによる肺癌検診の手引き」を作成した。本手引きは、日本肺癌学会、日本医学放射線学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器外科学会、日本呼吸器内視鏡学会、日本放射線技術学会、日本胸部CT検診研究会の承認を受け、検診関係諸学会の理事会および人間ドック、総合検診などの検診関連諸学会などに配布した。
その他行政的観点からの成果
 新しい検診モデルとして診療放射線技師が肺がんCT検診の一次読影を担当する胸部CTスクリーナー制度を検討した。アンケートを実施し、医師側がCTスクリーナーに望む業務内容を明らかにした。それに対応する内容の講習会テキスト(案)を作成した。乳がん検診では、マンモグラフィ普及に伴い後向き診断が可能である画像診断の特徴が惹起する訴訟問題への対応として「review system」を検討した。検診マンモグラムの読影資格を有する医師にアンケートを発送し回収者の94%が本システムの設立を希望した。
その他のインパクト
 低線量CTによる肺癌検診の異常影局在診断を支援するCAD(Computer-aided diagnosis) ソフトの迅速な臨床導入を目指し、検診および自動診断関連の厚労省研究班4班の合同小班会議をおこない、肺癌検診支援目的のCADシステムのあり方を検討した。国内CAD研究グループを集めて討議し、企業向けに読影医の要望する仕様規格案を公開し企業の開発促進を図った。

発表件数

原著論文(和文)
63件
原著論文(英文等)
44件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
49件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shibata T., Tsuchiya R., et al.
Genetic classification of lung adenocarcinoma based on array-based comparative genomic hybridization analysis:its assocoation with clinicopathologic features.
Clin Cancer Res , 11 (17) , 6177-6185  (2005)
原著論文2
五味志穂、柿沼龍太郎、土屋了介、他
診療放射線技師による肺がんCT検診の一次読影(動画を用いた読影法の検討)
胸部CT検診 , 12 (3) , 302-306  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-