ウイルスを標的とする発がん予防の研究

文献情報

文献番号
200500462A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルスを標的とする発がん予防の研究
課題番号
H16-3次がん-014
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
神田 忠仁(国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 下遠野 邦忠(京都大学ウイルス研究所)
  • 宮村 達男(国立感染症研究所ウイルス二部)
  • 林 紀夫(大阪大学大学院消化器内科学)
  • 松浦 善治(大阪大学微生物病研究所)
  • 井廻 道夫(昭和大学医学部)
  • 加藤 宣之(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 内田 茂治(東京都西赤十字血液センター技術部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
76,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HPVは生殖器の粘膜基底細胞に、HCVは肝細胞に感染し、長期の持続感染を経て子宮頸がんと肝臓がんを発症させる。そこで、1)発がん性HPV群の感染防御免疫を誘導するワクチンの開発と、持続感染しているHPVを排除する方法を探る。2)HCVは肝細胞で増殖・再感染を繰り返すので、肝細胞への吸着・侵入からゲノムの複製、粒子の形成に至るすべての素過程を調べ、介入する方法を探る。IFNとリバビリンの併用療法の効果をあげる方法や新たな免疫治療方法を開発する。3)輸血により伝播するHBV、HCV、ヒトリンパ球向性ウイルスの感染動向を探る。
研究方法
HPVL2蛋白質のキャプシド表面に出ている領域に結合する抗体の中和能を調べた。HPV後期プロモーターの転写活性の調節に関わるシス因子を探した。HCVのエンベロープ蛋白質を被るシュードタイプウイルスを用いて、HCVの感染受容体分子を探した。HCVのコア蛋白質に結合する細胞蛋白質を探した。HCVゲノムが複製する細胞系を作り、複製阻害剤を探索した。HCV慢性肝炎患者の樹状細胞(DC)の機能、HCV特異的CTLエピトープを調べた。日赤での初回献血者の抗体を調査した。
結果と考察
HPVL2蛋白質のキャプシド表面領域のアミノ酸配列は発がん性HPV群によく保存されているので、この領域の中和エピトープ群は型共通ワクチン抗原に応用できる。ヒト繊維芽細胞成長因子受容体5はHCVの受容体候補分子である。HCVコア蛋白質はE6APによってユビキチン化される。サイクロスポリンAは細胞のシクロフィリンBを抑制することによりHCV複製を抑制する。また、その誘導体であるNIM811は免疫抑制作用を持たないが強くHCV複製を抑制する。ミゾリビン等のスタチン剤がHCVゲノム複製を抑制する。C型慢性肝炎患者DCではTLR2経路が選択的に障害されている可能性がある。これまでに同定した7種のCTLエピトープの最小有効エピトープを明らかにした。HBV、HCV抗体陽性者は減少傾向にある。
結論
HPVのL2蛋白質の交差性中和エピトープ群はワクチン抗原への応用が期待される。HCV受容体候補分子、HCVコア蛋白質の分解経路がわかった。シクロスポリンA及びミゾリビン等のスタチン剤に抗HCV作用があり、臨床応用が期待される。C型慢性肝炎患者ではTLR3経路を介したDC機能の活性化が治療に有効である可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
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