がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究

文献情報

文献番号
200500461A
報告書区分
総括
研究課題名
がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究
課題番号
H16-3次がん-013
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
若林 敬二(国立がんセンター研究所がん予防基礎研究プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 奥坂 拓志(国立がんセンター中央病院第一領域外来部胆・膵臓科)
  • 石川 秀樹(健康保険連合大阪中央病院内科・消化器科)
  • 徳留 信寛(名古屋市立大学大学院医学研究科健康増進・予防医学分)
  • 白井 智之(名古屋市立大学大学院医学研究科実験病態病理学)
  • 田中 卓二(金沢医科大学第一病理学教室)
  • 高山 哲治(札幌医科大学医学部内科学第4講座)
  • 塚本 徹哉(愛知県がんセンター研究所腫瘍病理学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
110,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がんハイリスクグループにおける発がん要因の把握と、食品素材、医薬品を対象としたがん予防剤の開発、がん予防方法の確立を行い、臨床応用を目的とする。
研究方法
ウーロン茶葉由来新規フラボノイドChafurosideのAOM誘発ラット大腸aberrant crypt foci(ACF)形成及びMinマウス腸ポリープ生成に対する影響を検討した。家族性大腸腺腫症患者(FAP) 患者における脂質代謝に関する予備調査を行った。ウルソデオキシコール酸(UDCA)とサラゾスルファピリジン(SASP)の発がん抑制効果をAOM/DSS誘発炎症関連マウス大腸発がんモデル系にて検討した。H. pylori感染スナネズミに食品中の酸化ラジカルスカベンジャーを投与し、胃の炎症に対する影響を検討した。C型慢性肝炎患者に対するラクトフェリン(LF)の効果をランダム化二重マスク化プラセボコントロ-ル試験にて解析した。FAP患者を対象とし、緑茶抽出物及び少量アスピリンを用いる二重盲検法による無作為割付試験を実施中である。
結果と考察
Chafurosideは、Minマウスの腸管ポリープ生成及びAOM誘発ラット大腸ACF形成を抑制することがわかった。FAP 患者における高脂血症の割合は健常人に比べ多いことが示唆された。炎症関連マウスにおいてはSASPよりもUDCAに強い大腸発がん抑制作用が認められた。食品中の酸化ラジカルスカベンジャーによって、H. pylori感染による胃の炎症の有意な改善が見られた。LF(1.8g/日、12週間経口投与)による、C型慢性肝炎患者199例におけるHCV RNA量及びGPT値の有意な減少は認められなかった。FAP患者に対する緑茶抽出物と少量アスピリンを用いた大腸ポリープ予防介入試験の評価が各々、2006年、2009年末に確定する。また、大腸がん化学予防のための低用量アスピリン腸溶錠の効果を評価する臨床試験実施の準備が整った。
結論
Chafurosideががん予防剤として利用できる可能性が示唆された。UDCAは炎症関連マウス大腸発がんを抑制した。食品中の抗酸化物質によるDNAの酸化障害の改善、炎症所見の軽減が、胃発がん予防の一助となると考えられた。これら基礎資料をもとに行われている緑茶抽出物、少量アスピリンを用いた介入研究において得られる成果は、今後のがん予防研究にとって有意義なデータとなる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
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